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58.サイレンスアローの真の狙い

 日本ダービー。またの名を東京優駿。

 全てのウマの運命を決めると言ってもいい、決して負けられない一戦で……サイレンスアローが選んだのは大逃げだった。


 サイレンスアローは最初の1000メートルを通過。

 タイムは……57.9秒。競馬アナウンサーさえも驚くような超ハイペースで、先頭をひとり駆けていく。


 残りは1400メートルだが、アローの残り体力を見ると……すでに7割を下回っている。途中で息入れをして体力を温存するのだろうが、傍から見ていると何だか不安になってくる。


 サイレンスアローは向こう正面を抜けて、第3コーナーへと入った。

 2番手のウマとの距離は27メートルほどに広がっている。かなりのハイペース展開だが、サイレンスアローの体力は4割ほどまで下がっている。

 ここで息入れしたとしても……涼花の五穀豊穣を使ったとしても、こんなに消耗してしまったら最後までもつのか!?


 俺はその時、ハッとしながら何かを思い浮かべていた。

 これって……細部は違うけど、サイレンスという馬名を持つ、あのウマの状況と……とても似通っている。これ、サイレンスアローの脚が……折れるんじゃないか!?


 アローの名が喉まで出かかったとき、サイレンスアローの角が紫色に光り輝いた。

「…………!?」


 競馬アナウンサーは解説を止め、観客席は静まり返り、競馬ファンの多くが固唾を飲んだ状態でサイレンスアローを眺めていた。

 しかし……あれ、サイレンスアローのペースは鈍らない。多少はゆったりとした足運びはしているが、その目はしっかりとゴールの方角を映していた。


 それだけでなく……アローの角は55センチメートルから、70センチメートルへと伸びていく。

 これは、もしかして……!!


【サイレンスアローのレアリティ S+ → L】


 まさかこのタイミングで、サイレンスアローのレアリティが、レジェンドクラスへと昇格するなんてな。ゲームよろしく体力を完全回復なんて都合の良い展開はなかったが、体力や霊力の上限が大きく上がっている。


 ん……待てよ。

 俺は今までのサイレンスアローの発言や、わざわざグレードワン皐月賞のレースを避けた理由を思い返していた。しきりに経験値経験値と言っていたが……こいつ、まさか!

「お前まさか……クラスチェンジが、このタイミングで起こるように……調整を!?」


 サイレンスアローは微笑を浮かべると、涼花に言った。

『いつものやつ……頼むよ!』

「うん! 五穀豊穣!!」


 第3コーナーの中腹で、サイレンスアローは五穀豊穣の能力発動と、息入れを同時に行っていた。すると、普段よりも回復量が多い。

「これ……もしかして、体力とかの全体量が多くなったから、回復量も増えたのか……?」


 サイレンスアローは何も答えなかったが、字幕には【思った通りだったようだ】というメッセージを返してきた。彼は走っているにも関わらず、まるで止まって休んでいるかのように体力を回復させていく。


 その様子を眺めていたシリウスランナーは歯を食いしばると、追い込みウマにも関わらず前へと突き進んできた。騎乗していた渡辺騎手は驚いていたが、すぐに何かを察したように表情を戻し、肩に鞭を入れながら彼を激励していた。



 サイレンスアローは、体力を6割5分ほどまで回復させた状態で、最後の直線へと入った。

 残り500メートルの地点で、涼花の体力と霊力は大きく下がっており、アビリティ効果もかなり限定的なモノになっている。

 アローを追って2番手まで上がってきたのは、シリウスランナーだ。3番手がエレオノールペルル。アローの次の有力馬であるギャロップジミーは、ペースを変えることなく6番手にいる。


 最後尾のウマも最後の直線に入った。

 先頭をひた走るサイレンスアローと、2番手のシリウスランナーの距離は18メートル。後はまばらな距離を空けながら有力馬たちが追ってきており、サイレンスアローから最後尾までは40メートルほどある。


 多くの駿馬たちが、ゴールを目指してペースを上げはじめると、ギャロップジミーもまた鋭くゴールを……そして、サイレンスアローを睨んだ!

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