5.33連ガチャ
翌日、俺は起き上がると、隣には三矢本涼花が寝ていた。
コイツは昨日の夜に仲間になった幼馴染だが、俺とは大きく違うところがある。それはキツネのような尻尾と耳があることだ。
今も無防備な姿でスヤスヤと寝息を立てているので、あることについて知りたくなった。
それはズバリ、ケモミミ少女の人間時代の耳元はどうなっているか問題である。
生まれながらの、ケモミミだった少女ならツルリン……ということもあり得るだろうが、コイツは元々は俺と同じだった。つまり、人間時代の耳が残っているのか、人の耳がキツネ耳に進化したのかが気になってしまう。
そこは触れてはいけない問題だと思う方もいるだろう。俺もその件は重々承知している。しかし、あいにくながら俺はスケベキャラだ。種馬なんちゃら検定も貰っている。
だからこそ……調べないというのはあり得ない。その点は重々ご承知いただきたいと思う。
ふさふさな涼花のもみあげをそっといじってみると、俺は「なるほど……」と呟いていた。
どうやら涼花の場合は、人間時代の耳もそのまま残っているようだ。こうしてみると何だかコスプレ少女みたいだと思っていたら、彼女はキツネ耳の方を動かしてから目を開けた。
「うーん……やっぱり、そこを気にすると思ったよ」
「お前の耳ってどうなってるんだ?」
そう質問すると、彼女は自分の耳を指さした。
「なんて言えばいいのかな。この2つの耳は聞き取れる音が違うの。人間の耳は人との会話とかが専門で、こっちのキツネ耳は主に動物たちの言葉を聞き分けるのに使ってるよ」
コスプレなんて表現してしまったけれど、合わせて4つも耳を持っているなんて、考えてもみればかなり便利なことだ。
「ふあ~あ……とにかく、今日もデイリーミッションというのをクリアして、ガチャを回すんでしょう?」
「ああ、もちろんだ!」
とにかく、ダンジョン生活2日目になったわけだし、今日もガチャを回すために頑張るとしよう。
俺はすぐにスマートフォンの画面を見てみると、新たに日替わりミッションが出ている。
「全ミッションを達成するとガチャコインが5枚手に入るからな……昨日の分も生かして、今日もガチャを回したいな」
『うん。とにかくガチャを回して牧場の設備を整えないとね』
彼はそう言いながらミッションを眺めていると、すぐ涼花に視線を向けた。
『ところでさ……涼花?』
「なあに?」
『実は馬に乗れたりする?』
そう質問を受けた涼花は「うん、乗れるよ」と言いながら頷いた。
どうしてそのことがわかったのか、彼女はとても不思議そうにしていたが、スマートフォンに涼花は騎手のカテゴリーキャラとして登録されている。
表に出ると、サイレンスアローは後ろ脚を下げてお座りのようなポーズを取った。
『じゃあ涼花……乗ってみて』
「うん!」
サイレンスアローがゆっくりと立ち上がると、スマホの画面にはミッション達成と出ていた。
ミッション 女性・少女キャラクターを仲間に加えよう 達成!
ミッション 騎手キャラクターを仲間に加えよう 達成!
ミッション 女性騎手を仲間に加えよう 達成!
ミッション 騎手を騎乗させてみよう 達成!
ミッション 騎手をユニコーンに騎乗させてみよう 達成!
【女性・少女キャラクターを仲間に加えよう】と【騎手をユニコーンに騎乗させてみよう】が3枚ずつの報酬、【女性騎手を仲間に加えよう】が2枚。他は1枚の報酬だった。
昨日のデイリーミッション全クリアで5枚。11連ガチャを回そうで10枚のミッション達成報酬もあったので、合わせて25枚のガチャコインを引いてみると……
涼花のスキル【五穀豊穣】がトリガーし、25枚から30枚に受け取り分が増幅された。
「す、凄い特殊能力だな……」
『20パーセントも増幅できるなんて……驚いたな』
しかも新たなミッションが達成となっている。
ミッション 支援系アビリティを行使してみよう 達成!
まあこれは、次回に引くと言うことで……とにかくガチャるぞ!
「じゃあ……まとめて引くか」
11連ガチャを引いてみると……先日と同じような演出が起こった。
そして出てきたのは……
アンコモン 500円玉100枚
アンコモン 1反分のサツマイモ畑チケット
コモン カブトムシの成虫10匹
コモン 発酵した肥やし
コモン 家畜用のエサ
コモン 2人用のベッド
アンコモン テントウムシ10キログラム
レア サラブレッド用の乗馬セット
コモン 農作業用のフォーク
コモン エッチな本
さて、最後の1つは……
レアの表示が現れたと思いきや、カードの周りにヒビが走っていき、弾けると中からAという評価のカードが出てきた。
上級レア 飼い葉調合マニュアル
星が7つ付いているから、このアイテムは相当貴重なモノなんだろうな。ちなみにコモンは星1。アンコモンは星2~4。レアが星5~6といった感じだ。
早速調べてみると、どうやらアビリティを覚える系のアイテムは俺にしか使えないシロモノらしい。
すぐに使ってみると……自分の行動力を引き換えに、家畜やペットの飼い葉を作り出す特殊能力を手に入れた。どうやら、無から有を作り出す力なので星7つの評価だったようだ。
いい能力だ……と思いながら周囲に関心を向けてみると、サイレンスアローと涼花がキラキラした目をしながら俺のスマホ画面をのぞき込んでいた。
サイレンスアローは、美味しい飼い葉が食えることを喜んでいるんだろう。涼花は、そういえばコイツ……昔からガチャとかカプセルトイの類が好きだったな。
さて、続いて2度目のガチャガチャタイムだ。
再び11連ガチャを回すと、今度はこんなアイテムたちが出てきた。
アンコモン 農場・牧場の柵チケット
コモン 食器セット
アンコモン 5反分、農作物収穫チケット
コモン エッチな本
コモン エッチな本
コモン エッチな本
アンコモン 乳牛
アンコモン テントウムシ10キログラム
コモン 家畜用のエサ
コモン 村人の服
なんで貴重なガチャコインから、エッチな本が3冊も出てくるんだよぉ……
確かに俺はスケベだって認めるけどさあ。乳牛とか、作物の苗付きの畑とか、もっと出すべきものがたくさんあるだろう!
さて、残る最後の1枚は……
レア 重箱付き蜜蜂コロニー
わお、これは甘党のサイレンスアロー君が、とても喜びそうなアイテムではありませんか。
さて、ちらっと視線を向けてみると、サイレンスアローは満面の笑みを浮かべながらヨダレをすすっている。ウマは甘党が多いと聞くが、コイツも例外ではないらしい。
次に涼花も涼花で、ウキウキの様子で画面を食い入るように眺めていた。どうやらガチャを回す瞬間がおもしろくて仕方ない様子だ。というか……密着してきてるから耳や体の一部が当たってるんだが……
最後にお楽しみの3度目のガチャだ。
再び、11連ガチャを回すと、同じように演出が行われアイテム群が出てきた。
アンコモン 猟犬
コモン カット済みの薪
コモン 500ミリミネラルウォーター24本
アンコモン リアカー1台
コモン 野ウサギ
コモン 鉄製の鍋
コモン スズメ
アンコモン ログハウス風の小屋チケット
アンコモン 農場・牧場用の柵チケット
コモン 発酵した肥やし
ところどころに当たりアイテムが混じってるな。後でサイレンスアローたちと使い方でも相談するとして……さて、最後の1枚は?
上級レア 低反動マジックハンターライフル
その銃を見た瞬間に、俺はガッツポーズをとっていた。これはどう見ても当たりアイテムだ。
「すごい……ライフルって銃のことだよね!」
涼花もまた興奮した様子で画面を指さすと、サイレンスアローも目をぱっちりと開けたまま頷いた。
『うん、しかもこれ……弾の種類によってはヒグマとかを倒せる奴だよ!』
「す、すごおおおおい!」
説明を読んでみると、このライフルは使用者が俺に限定されており、行動力を弾丸に変換して撃ち出すことができるようだ。
低反動と書いてあるから、腰が悪くなった俺でも使えそうだし、牧場の中に射撃場を作って練習するのがベターかもしれない。
そんなことを考えていたら、涼花は言った。
「レン君の能力……おもしろすぎ! 早く次のコインを集めてガチャろうよ!」
『ああ、ミッションをクリアしてまたやろう! 小生ももっといろいろなオモシロアイテムが見たい!』
なんか俺以上に、この2人のテンションが爆上がりしているが、まあ、俺もそれには賛成だよ。うん。
朝比奈怜
固有特殊能力:
ガチャ&ミッション AA ★★★★★★★★★★
条件を達成することによって、ガチャコインや特殊ガチャチケットを入手し、様々なアイテムを召喚する能力。難しい条件を達成するほど、より強いアイテムやチケットを出現させることができる。
近距離戦 C ★★
魔法戦 D ★
飛び道具戦 B ★★★★★
マジックシールド C ★★★
防御力 C ★★
作戦・技量 C ★★★★
索敵能力 C ★★★
行動速度 B ★★★★★
勝利への執念 C ★★
経験 D ★
主人公との友好度 ≪測定不能≫
好きなモノ:エッチな本や画像の鑑賞、高カロリーな食品、自分だけの時間、スマホゲーム、昼寝
嫌いなモノ:働くこと、学校に行くこと、努力、我慢、ぎっくり腰の痛み、コツコツ貯金すること、予防注射
入手資格:スケベ種馬バカ検定3級
一言:
マジックハンターライフルを得たため、飛び道具の戦闘能力が飛躍的に上昇している。
まだ射撃技術や、特殊弾頭を使うことこそできないが、マジックハンターライフルは、一般人の精神力でも高い殺傷力を持つ強力な武器である。
訓練や実戦を重ねることによって、より強い能力になるだろう。