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4.鈴音のヒロイン

 小屋で一角獣サイレンスアローを枕代わりにして寝ていたが、アローは身体の向きを変えて起き上がった。

「ん、どうしたんだよ?」

『……これは、錫杖の音?』


 まだボーっとした状態の俺の頭にも、確かに特徴的な音が聞こえてきた。

 お坊さんとかが、輪のたくさんついた杖を打ち鳴らすときの音だ。確かにサイレンスアローの言う通りなんだけど、どうしてこんな音がするんだろう?


 サイレンスアローと顔を見合わせると、そっとドアを開いて表へと出た。

 それほど危険な感じはしなかったし、何かあっても一角獣が側にいれば何とかなるし、判断に困ることがあってもスマートフォンの例の時間を制止させる機能を使えばいい。



 錫杖の音の発生源は、真夜中の湖の側だった。

 サイレンスアローは少し驚いた様子で俺を見てくる。

『……ケモミミ少女と思いきや神仏の愛娘じゃないか……なるほど。獣に襲われないように、こうやって魔除けの結界を張っているのか』

「…………」


 俺の受けた衝撃は、サイレンスアローの比ではなかった。

 月並みな言い方の中に、雷に打たれるような衝撃。という言葉があるけれど、それを実際に体験するとこんな感じになるのかと、ひとつ賢くなったかのような体験をしている。


 そしてそう思っているのは俺だけでなく、今まで錫杖を打ち鳴らしていたキツネ耳の巫女も、こちらを眺めたまま驚きどまっていた。

 彼女はキツネ耳やヒゲをピンと立て、切れ長い瞳をぱっちりと開け、俺を凝視している。


「レンくん!?」

「涼花!?」

 お互い同時に相手の名前を呼び合ったため、サイレンスアローはとても驚いた様子でこちらを見てきた。

『知り合い!?』

「ああ、幼馴染だ……少しおかしな別れ方をしたからな」

 そう言うと、涼花は申し訳なさそうに俯きながら頷いた。



 彼女は三矢本涼花という。

 俺とは4歳ごろに出逢い、8歳……小学3年生の初夏ごろまで一緒に遊んでいた。


 当時の俺は、今以上に人見知りをする子供だった。クラス内でも登下校中も常に1人で行動しているから、クラスメイトからはボッチ君と呼ばれていたほどだ。


 涼花はそんな俺と遊んでくれる数少ない子供の1人だった。

 近所の神社に行くと彼女は独りで遊んでいることが多く、俺もボッチだったからボッチ同士で、気が付いたときには友達になっていた。


 2人は神社に限らず、近くの森を散策したり、小川の近くに行ったりと、田舎町をたっぷりと堪能する生活を送っていた。



 そこまでサイレンスアローに説明すると、アローは頷いた。

『で、どうして2人は別れることになったの? 親御さんの都合というヤツかい?』

「いいや……」

 俺はサイレンスアローを見ると、肝心な話をすることにした。



 ある日……俺は奇妙な体験をすることになった。

 その日も神社に遊びに行くと、彼女は……人間離れした姿になって立っていたんだ。

 まだ子供の頃だったから、その時の姿ははっきりしない。だけど……狐のような耳と尻尾を生やしながら、彼女は俺にこう言ったんだ。


――ごめんなさい。きょうでもう……あえなくなる


 当時の俺は、どうしてだと問いただした。すると……彼女は南の方角の森を指し示してから、姿を泡のように消したんだ。

 その指し示した場所は東京方面だった。


 俺はこのことを両親や友人、更に学校の先生にも必死で訴えた。だけど、誰もが首をひねって決まってこう言ったんだ。


――三矢本涼花ちゃんって……誰だい?


 同じ学校の生徒だと思っていたはずなのに、誰しもが彼女のことを知らなかったんだ。

 そして、俺は同時に肝心なことを思い出したんだ。そういえば俺……彼女の自宅に一度として遊びに行ったことがない。最も涼花と親しいと思っていたが……俺自身が涼花のことを何も知らなかった。



 そこまでサイレンスアローに説明すると、コイツは目を細めて微笑を浮かべた。

『なるほど……話だけ聞くと奇妙な物語だけど、単純なナゾナゾだね』

「どういうことだ?」


 質問を返すとサイレンスアローは角を光らせた。

『まず、彼女は幽霊の類ではない。次にダンジョンゲートを行き来できる。3番目にキツネ耳と尻尾……つまり亜人間の特徴を持っている』

 そこまで話を聞いていた涼花は、じっとこちらを見た。

 涼花はどんな答えを言われても受け止める……そんな覚悟をした目をしている。


 俺もまた、アローの言葉を縫い合わせてみると、答えがおのずとわかった。

「つまり、親御さんのどちらかがダンジョンゲートの向こう側の人間。つまり……異世界人とのハーフということか?」


 三矢本涼花はしっかりと頷いた。

「そうだよ。私のお父さんはある神社の神官。お母さんは異世界の人」

 彼女の指先を見ると震えていた。この様子だと、異世界人だということがバレて酷い目に遭ったことがあるのかもしれない。


 だけど、俺はそんなことはまったく気にしない。いや、むしろ……おもしろい奴だとさえ思える。

「もし居場所がないのなら来いよ。まあ、スケベが1人と1頭もいるから苦労するかもしれないけどな」


 そう冗談を言うと、涼花は嬉しそうに笑った。

「そういえば、小さい頃もレン君は、私のスカートを捲ったり、後ろから目隠ししてきたりもしたね」

 思わぬ反撃を受けた俺は表情を変えていた。

「そ、そんなことしたの!? 何歳の頃?」

「わかんないよ。しょっちゅうだったから~」


 その話を聞いていたサイレンスアローは真顔で言った。

『レンに、スケベ種馬バカ検定3級の資格を与える!』


 そんな資格要りません!

三矢本みやもと涼花すずか

固有特殊能力ユニークアビリティ

五穀豊穣      AA ★★★★★★★★★


 その場にいるだけで、作物だけでなく家畜の育成を助ける力を持つ。

 また、この能力は人も効果の対象となっており、例えば怜なら貰えるガチャコインの数が増える。



近距離戦      C  ★★★★

魔法戦       B  ★★★★★

飛び道具戦     B  ★★★★★★

マジックシールド  B  ★★★★★★

防御力       C  ★★★ 

作戦・技量     B  ★★★★★

索敵能力      B  ★★★★★

行動速度      C  ★★★★

勝利への執念    B  ★★★★★★

経験        B  ★★★★★

主人公との友好度  A  ★★★★★★★



好きなモノ:朝比奈怜、シャワー&温泉、植物、生き物、サイレンスアローに乗ること

嫌いなモノ:孤独、三日坊主になりやすい自分自身



一言:

 怜の幼馴染にして、初恋の人。

 普通は特殊能力の発言は15歳にトリガーするものだが、彼女の場合は9歳の夏に起こっていた。その理由は恐らくだが、母親が異世界の住人だったからだろう。


 アビリティトリガーの際に、キツネ耳と尻尾が現れてしまったため日本側を歩けなくなった。当時はまだ人外差別が強く、差別禁止法案もなかったからである。

 ちなみに、異世界で暮らしていたこともあり、向こうとこちらでは時間の流れが違うため、涼花の年齢はまだ18歳前後のようだ。

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