20.戦後処理とミッション達成通知
戦いが終わると、俺たちはゴブリンパラディンと対面した。
彼は、肩に矢を受けたり返り血を浴びたりと、凄い格好をしていたが、まだまだ元気そうな顔をしている。
「加勢、感謝する!」
「大変なことにまきこまれましたね。ケガもしていますが大丈夫ですか?」
そう質問をすると、彼は笑いながら答えた。
「なに、この程度、かすり傷のようなものさ!」
その言葉を聞いた一角獣サイレンスアローは、少し厳しい顔をした。
『傷口から病原菌が入ることも多いから、きちんと治療を受けた方がいいよ』
「そ、そうか……ならば頼もう」
サイレンスアローは、俺たちを案内してくれたゴブリンナイトに、助手を頼みながら治療をはじめた。
『やっぱり。矢先に汚物を塗って感染症を引き起こそうとしているね……強めにユニコーンライトをかけるよ』
「あ、ああ……」
サイレンスアローは、角をとても強く光らせながら、傷口の消毒をはじめた。
すると、少しずつ傷口が塞がっていき……ん、んん??
「ち、父上……!?」
慌てる家来たちを尻目に、ゴブリンパラディンは満足そうに笑っていた。
「すっかり、傷の痛みもひきました。これもユニコーン様の……」
そう言いながら、ゴブリンパラディンは自分の腕を見ると、人間の腕になっていることに気が付いたようだ。
しかも、近くにいたゴブリンパラディンの部下たちも、全員が人間になっている。
「お、お前……人間になってるぞ!」
「そういうお前だって……!」
「ユニコーン様、なんで俺たち……格上げされてるんですか!?」
俺もどうしてだろうと思いながらサイレンスアローを見ると、コイツは苦笑しながら答えた。
『よく考えてみれば、ユニコーンライトって魔物を浄化する力もあったんだった……』
そこまで話を聞いた涼花は、納得した仕草をしてから言った。
「つまり、彼らはゴブリンには勿体ないくらいの徳を積んでいる人たちだったから、浄化されずに昇格したという訳だね!」
『そうなるね』
絶対にわざとやっただろ、と思いながら俺はサイレンスアローを眺めていた。スマートフォンには様々なミッション達成通知が届いているが……
ミッション 400メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション 500メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション 750メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション 1000メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション 1500メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション 2000メートル離れた位置にいる敵を倒そう 達成!
ミッション ゴブリンナイトをヒューマンナイトに昇格させよう 達成!
ミッション ゴブリンパラディンをヒューマンパラディンに昇格させよう 達成!
ミッション 合計で1000体以上の敵を倒そう 達成!
そこまで見ていると、ゴブリンパラディンは言った。
「これほどのことができるとは……」
感心しているのは、彼だけではないようだ。
初老の騎士も、炎の一角獣グランパレードや、地の一角獣チャイロジャイロ、更にサイレンスアローも眺めてから質問してきた。
「若馬とはいえ、一角獣を3頭も従えていらっしゃるとは……レン殿が日本人という噂は本当なのですね?」
そう聞かれた俺は、すぐに頷いた。
「特殊能力だけで、俺自身には大した力はないんですけどね」
「御冗談を……貴方さまの戦いぶりを拝見しましたが、あの……神の矢とも言うべき狙撃技、あれほど恐ろしい攻撃はありませぬ!」
初老の騎士が言うと、女性騎士や俺を案内してくれた年若い騎士も頷いた。
「全くです。我々が負け戦を拾えたのは……あの攻撃があったからです!」
「さすがは異世界の勇者さまです。このマティソン……感激いたしました」
その話を聞いていた元ゴブリンのパラディンは、深々とお辞儀をして俺を見た。
「勇者様。我々を是非……家来に加えてください!」
勇者と呼ばれるのは、なんか違う気がするが……牧場スタッフが増えるのなら俺としても大歓迎だ。
「わかった。俺はレン。朝比奈怜と言うからレンと呼んでくれ……君たちのことは何と呼べばいい?」
そう質問したら、パラディンは畏まった様子で答えた。
「我の名はマティスと申します」
彼は次に、俺を案内してくれた年若い騎士を見た。
「そして、こちらが我が愚息のマティソン」
「よろしくお願いします」
なるほど。マティスの息子だからマティソンか。彼にはレースの時からいろいろとお世話になっているな。
3番目に、聖騎士マティスは初老の騎士を見た。
「この歴戦の騎士はセバスチャン」
「ははっ!」
最後に、聖騎士マティスは女性騎士を見た。
「そして、我が部下で紅一点の騎士……クロエです」
「お初にお目にかかります……レンさま!」
俺は頷くと、すぐに答えた。
「わかった。君たちをうちの牧場スタッフとして迎え入れよう!」
そう伝えると、聖騎士一行は「ははっ!」と言いながら、深々と頭を下げてくれた。
すると、更にミッション達成の通知が来た。
ミッション 騎士を仲間に入れよう 達成!
ミッション 聖騎士を仲間に入れよう 達成!
ミッション ゴブリンを仲間にしよう 達成!
ミッション 10人以上と仲間になろう 達成!
ミッション 50人以上と仲間になろう 達成!
ミッション 100人以上と仲間になろう 達成!
ミッション 200人以上と仲間になろう 達成!
その通知を見ていたサイレンスアローはニッと笑うと言った。
『せっかくだし、家来のゴブリンたちもみんな人間化しておこうかな。その方がお互いにとって都合がよさそうだ』
やがて1時間が経過すると、更にミッション達成の通知が来た。
ミッション 魔族10体以上を浄化しよう 達成!
ミッション 魔族50体以上を浄化しよう 達成!
ミッション 魔族100体以上を浄化しよう 達成!
ミッション 魔族200体以上を浄化しよう 達成!
俺はそのメッセージを見て唖然としていた。
どうやら、サイレンスアローの奴は……ゴブリンを人間に戻すつもりで消し去ってしまったらしい。これは……アイツも凹んで……
ん……?
目の前に羽の生えた小さな人間たちが、ひらひらと飛んできたぞ!?
「おい、このピクシーとフェアリーはなんだ?」
そう質問すると、サイレンスアローのテレパシーが聞こえてきた。
【よく考えてみたら、ゴブリンって元は妖精だから……浄化したらフェアリーやピクシーに戻るんだよね。今さら気づいたよ】
とりあえず、食糧問題なんかは大丈夫そうだが、もしもの時に備えて、畑チケットの類は出し惜しみしない方がよさそうだ。
【作者より】
フェアリーやピクシーと書きましたが、小さい個体は人差し指くらい、大きな個体は30センチ前後あります。
強さは、大きさにほぼ比例しているので、ある意味でゴブリン時代よりも厄介かも……
【☆☆☆☆☆】への評価や【ブックマーク】、いいね等を頂き、ととても励みになります。
次回はいよいよガチャを回します。
続きが気になる……と思われたら是非、ご協力をお願いします!




