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2.戦闘回避のための機転

 現れた栗色一角獣は、肩までの高さだけでも145センチメートルほどある。

 その目線は俺を見下ろすほど大きく、更に角まで光らせて襲ってくるのだからたまらない。どうみてもゲームオーバーだと直感したとき、スマートフォンが光を放った。


 コイツは確か、電話料金を滞納しているから、通話や通信ができないはずなんだが……振動しながら俺に使うように訴えてきた。


 反射的につかむと、突っ込んできている一角獣の動きは止まり、更に風で揺れていた木々や、舞い上げられた木の葉も固まるように静止している。

「一体、何が起こっているんだ……?」


 そう呟きながらスマートフォンを操作してみると、画面にはスマートフォン向けのゲーム画面のようなアイコンが並んでいた。


 そして、俺をまるでデフォルメ化したようなキャラクターが解説を行っている。

特殊能力アビリティ:ガチャ&ミッションに覚醒……おめでとうございます】


 まだよくはわからないが、俺はもしかしたら能力というモノに目覚めたのかもしれない。

 画面を見ていると、俺のようなキャラクターは次のセリフを口にした。

【まず、能力者としての職業を決めてください】


 そのセリフをタップして先に進むと、様々な職業がリングコマンド形式に並んでいた。

 冒険者。地方領主。魔導士。行商人。職人。牧場主。旅芸人。なんだか……どれもこれもファンタジックな職業ばかりだ。



 普通なら冒険者とか地方領主を選ぶところなんだろうけど、俺はいま……一角獣に襲われかけているんだ。そう考えると、この状況を打開できる職業を選ぶべきだろう。


 冒険者を選んで武力行使だろうか。いや、腰をおかしくしている俺じゃあ、チート能力を貰っても扱いきれないだろうし、多分だけどレベルは1だ。


 地方領主は……俺が女だったら意味アリだった。童貞の俺がお姫様や令嬢なら一角獣も気を許したかもしれない。


 魔導士を選んで特殊な魔法を……いや、レベルは1だろうな。冒険者に比べればマシ……くらいか。


 行商人。相手が人間なら取引を持ち掛けることもできるだろうけど、ユニコーンが相手じゃ何を欲しがるのかわからないよな。だいたい商品を仕入れてないし。


 職人じゃあ、角を奪うやつとみられて余計に攻撃されるかも。


 残るは牧場主か旅芸人……この状況を乗り切るなら二者択一だろうな。何か芸を見せて落ち着いてもらうか、或いは……

「…………」

「…………」


 俺はスマートフォンの画面をタップすると、俺みたいなキャラクターは人形のような一角獣に変わった。

【職業が決まりましたね。では……ブリーダーとしての最初の仕事です】


 人形一角獣のセリフが消えると、スマートフォンのカメラ機能がオンになった。

【目の前にいる一角獣を撮影してみよう】


 そんなことをして何になるんだろうと思いながらも、俺はカメラを向けて目の前の一角獣を撮影した。

 すると、人形のような一角獣がセリフを言った。

【撮影完了です。名前はサイレンスアローでよろしいですか?】


 イエスと答えると、その一角獣のグレードやステータス……更には特殊能力も記載されていた。

 テキストを見るかぎり強い。とても強いと思える能力をしている。


【この一角獣を仲間に誘いますか?】

 再びイエスと答えると、目の前で固まっていた一角獣サイレンスアローは動き出したが、驚いた様子で止まると、周囲を見渡していた。

『…………』

『…………』


 時間が止まっているのだから、驚くのも当然だろう。

『な、なにこれ……? なんで周りが止まっているの!?』


「アビリティとかいう能力を使ったんだよ」

 サイレンスアローは『アビリティ』と呟きながら、空中で飛んだまま静止してる鳥を眺めていた。

『君を攻撃するのは止めておくよ……このまま時が止まった世界に取り残されたら大変だ』


 そう答えると、サイレンスアローは俺の持っているスマホに興味を示した。

『その黒い鏡から霊力を感じる。それを媒体に発動しているみたいだけど……本体はあくまで君だね』


 そ、そうなのかな……と思いながら返事を保留していると、サイレンスアローは言った。

『ん……? その鏡に映っている動物、なにか喋ってるよ?』


 画面に視線を戻すと、デフォルメ一角獣は次のセリフを言った。

【アビリティアシスタントとサイレンスアローをリンクさせることができますが、この機能を使いますか?】


 サイレンスアローに視線を戻すと、コイツは不思議そうな顔をしていた。

『小生とリンク……? おもしろそうだね。ちょっとやってみてよ』

「本当にいいのか? 君の人格が変わっちまうかもしれないぞ?」

 そう聞き返すと、サイレンスアローは笑った。

『時を止めるほどの力が手に入るかもしれないのなら……そのくらいのリスクなんてないのと同じだよ!』


 そこまで言うのなら構わないか。と思いながら俺は【はい】を選択した。

『……!!?』


 スマートフォンが白く光ると同時に、サイレンスアローの角も眩いばかりの水色の光を放ち、両者はリンクするように光の色が合致した。

 画面を見てみると、マスコット一角獣の色が栗色になりサイレンスアローと表示されている。目の前のサイレンスアローも目を細めていた。


『君の名前はレンというんだね。おおよその事情は呑み込んだよ。君の能力は、ガチャを回す機能のほかに、ミッションを達成すると【限定ガチャ券】や【ガチャコイン】、アイテムを貰う力もある』


 すらすらと解説を始めたので、本当に人格が変わったんだな……と思いながら頷いた。前のサイレンスアローは消えてしまったのだろうかと心配になる。

「君は……本当にサイレンスアローだよな?」


 そう質問すると、サイレンスアローは笑った。

『当然だよ。前の小生に日本の文明知識を追加した感じさ。ほら……角も長くなっているでしょう?』


 本当だ。さっきまでは角も25センチくらいの長さしかなかったが、40センチくらいまで長くなっているし、太さもよりしっかりしている。


 彼は楽し気に言った。

『じゃあ、さっそくガチャを回してみようか。プレゼントボックスの中にいくつか達成したミッションがあるから、それで回すことができるよ』


 スマホ画面のミッション欄を見てみると、確かにプレゼントボックスアイコンに数字が書かれており、中を開いてみると、いくつかミッション達成と書かれている。


 だけど、先ほどと同じように、ガチャから出てきたキャラクターに襲われる危険性もある。本当にこの特殊能力を使っても大丈夫だろうか。

一角獣サイレンスアロー


固有特殊能力ユニークアビリティ

アビリティアシスタント AA  ★★★★★★★★★


 怜のアビリティとリンクすることにより、世界の理の外にいるキャラクターとなる。

 つまり、剣と魔法の世界の住人と、現代人の能力を良いところ取りした人物となれるのである。欠点はアビリティの持ち主である怜が死んでしまった場合に、サイレンスアローがどうなるかはわからないということだろう。


 もし怜が死んでしまった場合、サイレンスアローは以下の3つのケースを想定している。

 予想1。サイレンスアローがアビリティアシスタントの能力を失い、以前の状態に戻る。

 予想2。サイレンスアローの意識が怜に乗っ取られる。

 予想3。サイレンスアローが精神崩壊する。



近距離戦      A  ★★★★★★★

魔法戦       B  ★★★★★★

飛び道具戦     E  

マジックシールド  B  ★★★★★★

防御力       C  ★★★★ 

作戦・技量     A  ★★★★★★★

索敵能力      A  ★★★★★★★

行動速度      B  ★★★★★

勝利への執念    B  ★★★★★★

経験        C  ★★★★

主人公との友好度  C  ★★★★



人間換算で12歳。牡/男

体重:325キログラム 肩までの高さ:145センチメートル

身体の特徴:脚は4本とも膝から下が真っ白な毛でおおわれており、タテガミはクリーム色で尾花栗毛と呼ばれる珍しい栗毛馬のようだ。あとは目立たないが、角のある額の辺りにも白斑があり、これは大星と呼ばれている。


使用可能スキル:意識共有化、ヒーリング、キュアコンディション、350度監視、嗅覚1000倍、ナイトビジョン


好きなモノ:牝馬、左回りのレース、自在脚質で走る

嫌いなモノ:ニンジン、泥はね、自分よりも男前の牡馬



一言:

 父馬は伝説の一角獣アキヌフォート。母親も名牝のフォレストドリーム。

 他にも姉と弟が1頭ずつおり、父と母は共に同じ。 

 

 どうやら、サイレンスアローの一族は、ゾンビウィルスや魔族と戦いながら、安寧の郷を探す流浪の一角獣のようだ。

 姉は牝馬として父や母に同行しているが、牡であるサイレンスアローは、新天地を求めて単身で旅をすることを選んでいる。



S=★10個以上 生物の限界を超えた能力。

A=★7~9個  その分野でのスペシャリスト。素養を持つ者が昼夜を惜しまず努力してなれる

B=★5~6個  冒険者の中で及第点と言える数値。一般人でこの数値があれば天才肌の持ち主

C=★2~4個  新人冒険者や学生なら武器といえる数値。弱い敵ならこれでも十分

D=★1個    素人レベル。他に十分な強みがあれば弱点を補うことも可能

E=★0     明らかな弱点。その分野で勝負されると敗北は必至

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