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18.反聖騎士派のクーデター

 牧場の温泉から出たとき、一角獣グランパレードが駆け寄ってきた。

『大変だよ兄ちゃん!』

「どうした?」

『コブリンナイト兄ちゃんが来たんだけど、パラディンのダンナ……家来に反乱を起こされたみたいなんだ!』

「息子さんは、今どこに?」

『アローのところだよ!』


 俺はすぐに着替えると、放牧エリアへと向かった。

 そこには、彼だけでなく、涼花やチャイロジャイロや、グランパレードの母馬もおり、一番入り口の辺りにゴブリンナイトの青年がいた。


「久しぶりだな」

 そう声をかけると、ゴブリンナイトの青年は、余裕のない様子で俺を見た。

「単刀直入にいう。すぐにここから避難してくれ」


 単刀直入すぎるな……と思いながら、俺は答えた。

「それはあくまで最終手段だ。反乱はどの程度の規模だ?」

「おおよそ1000……」


 コブリンナイトが答えると、サイレンスアローもテレパシーを伝えてきた。

【レンが来るまでに詳しい話を聞いていたんだけど、どうやらパラディンの他種族との融和政策は、一般ゴブリンにとってウケが悪かったみたい】


 その表情に、困惑の色が混じった。

【ここからは小生の想像たけど、支持率が低かった時に、レースで小生たちに負けたことで、実力もないリーダーだと部下たちから思われてしまったように感じる……】


 サイレンスアローは、パラディンの顔を立てる意味でも、アタマ差でギリギリ勝利をしたのだろうが、反乱勢にとっては、負けは負け……ということか。


 俺はすぐに、サイレンスアローにテレパシーを送った。

【このまま牧場で戦うのと……牧場を放棄して逃げるの、どっちが被害が少ない?】

【圧倒的に逃げる方だね。ただ、それはゴブリンたちも想定している作戦なんじゃないかな?】


 それはそうだと思いながら頷いた。

 恐らく、クーデターを起こしている新しいリーダーは、前のリーダーであるゴブリンパラディンを倒すだけでは強いリーダーと見なされないだろう。


 そうなると、一角獣を倒すなり捕えるなりして、前のリーダーでは成し得なかったことをしなければ、リーダーシップを発揮できない。


「なるほど、つまり……クーデター派にも、それなりの覚悟というモノがあるという訳だな」

『どうする?』

 そう聞かれた俺は、ゴブリンたちが暴れ回っている場所を指差した。

「なら、俺たちもその覚悟とやらに応えるだけだ!」


 俺の指先を見た、グランパレードは恐々とした表情で笑った。

『そ、それってもしかして……』

「このまま全員で、敵陣に攻めかかる!」


 そう言いながら、俺はマジックライフルを構えると、チャイロジャイロはがく然とした様子で叫んだ。

『しょっ……正気!? 相手……1000人近くいるって言ってたじゃん!』


「敵はクーデターという手段で、こっちにまさかと思わせた。その上を行きたいなら……そんな敵がまさかと思うような行動を取る必要がある」

 表情が崩れたままのチャイロジャイロとは対照的に、サイレンスアローは満足そうに笑っていた。

『その通りだね。更に、レンたちの世界の歴史を利用させてもらおうかな』


 サイレンスアローは、その視線を丘に向けた。

【某時刻 某所……】

 白毛の一角獣の前に、鹿毛色の牝一角獣が歩いてきた。

『予定通り、ゴブリンたちが反乱を起こしました』

『馬鹿とハサミは使いよう……だな』


 そう吐き捨てるように言うと、白毛の一角獣はいびつに口元を歪めながら笑った。

『さて、奴がどう動くのか見物だ』

『恐れながら……まっとうな神経の持ち主なら逃げるでしょう』

『まあ、そうだろうなぁ……定石過ぎてつまらん手だが、王道には王道の良さがある』

『しかしわかりませんね。なぜ貴方様は……そこまでアキヌフォートの仔にこだわるのでしょう?』


 白い一角獣は、後ろ暗い笑みを浮かべた。

『なに、じきにわかるさ……』

 間もなく、そのよどんだ瞳は、サイレンスアローの姿を映した。

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