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10.ゴブリンパラディンの提案

 俺たちは樹海の奥を睨みながら立っていると、ウマに跨ったゴブリンの親玉たちが姿を見せた。

 十字盾を持つ鬼の大将と2人の騎士ゴブリンは、怪訝な顔をしながらこちらに向かってきたが、サイレンスアローの姿を見ると、その表情を一変させた。


「な、なんと……美しい一角獣だ……!」

 ゴブリンパラディンが言うと、他のゴブリンの騎士たちも頷いた。


 予想外の反応に困った俺は、隣にいる涼花に視線を向けていた。涼花もまた俺やサイレンスアローに視線を向け、どう受け答えすればいいのかわからないと言いたそうにしている。

 サイレンスアローまで黙っていたが、鬼の大将は微笑を浮かべながら言った。

「貴様たち、殺すには惜しい……余の家来にならんか?」


 元はゴブリンとは言え、大将にまで出世した奴となると、その雰囲気は王のようになるものだと感じるが、サイレンスアローは答えた。

『正気かい……? 小生たちは、ゴブリンの部族を1つ滅ぼしている。200以上も同胞を撃退しているんだよ?』


 その言葉を聞いたゴブリンパラディンは不敵に笑った。

「我らは、あの巣穴の連中とは無関係だ。むしろ人間の里を襲って刺激するバカどもを倒してくれたこと……礼を言うぞ!」


 サイレンスアローは少し黙った。

 コイツは俺のアビリティアシスタントなので、すぐに拒否という答えを出していることは口に出されなくても理解できる。ただ、相手はゴブリンとはいえ王だ。即答してしまっては角が立つと思ったのだろう。


『小生もまたウマの王にして森の王。この背に乗せられるのは、客人か家中で最も強い者だけと決めている』

 巧い切り返しだと思った。

 自分自身が王と言われれば、ゴブリンの王もそうか……としか言いようがない。しかも、実力行使に及んだとしても、200以上も部下を倒した相手となれば手加減はできないことくらいは俺でもわかる。


 つまりサイレンスアローが欲しいと思えば思うほど手に入らないという、ゴブリンの王にとっては、なかなか難しい判断を迫られることとなったわけだ。


 ゴブリンパラディンは、少し考えてから答えた。

「なるほど……では、レースにて決着をつけるというのはどうだろう?」

 その言葉を聞いてサイレンスアローは耳をピクリと動かした。

『ステークス決着か……なるほど。お互いに賞金を懸け合えばいいのかい?』

「いいや。賞金は余が用意する。余に勝てたらプラチナ貨70枚を差し上げよう。ただし……」


 サイレンスアローは目を細めた。

『小生たちが負ければ家来になるか……じゃあ、小生からも提案させてもらいたい』

「なにかな?」

『プラチナよりも金貨の方が都合がいいんだ。何枚用意できる?』


 なるほど。と俺は感心した。

 確か今の日本の相場価格は、プラチナは1グラム5000円前後だが、金貨は1グラムで9500円ほどだったと思う。これなら金貨の方が都合がいい。

 ※2023年4月後半の値段を参照しています。


 ゴブリンパラディンは少し考えてから答えた。

「金貨なら……180枚が限度だな。他にも100グラムのゴールドバーが5つほどだったか」

『では、賞金はそちらに変えてもらいたい』

「あいわかった」

『それから1対1じゃ盛り上がらない。鬼族側は最低でも王以外に3人3頭のライバルを用意してほしい。小生は1着以外は敗者という扱いでいい』


 その言葉を聞いたゴブリンナイトたちは目を丸々と見開いた。まさかサイレンスアローが自分から難しさをつり上げるとは思わなかったようだ。

 そして、そんな提案をされた王は、豪快な笑い声を響かせた。

「面白い奴だ! いいだろう……ついでにプラチナ貨70枚も賞金として追加してやる。明日の日の出と共に使者をそちらに向かわせるゆえ、万全を期して待っていろ!」


『このサイレンスアロー……確かに承ったよ』

 両雄は挑戦的な笑みを浮かべたまま見つめ合うと、そのまま立ち去っていった。


「な、なあ……サイレンスアロー……どうして自分から難しさをつり上げるようなことを?」

 そう質問すると、サイレンスアローはスマートフォンへと目を向けた。

『ミッション達成のためだよ。君のアビリティでレースと認めてもらうには、最低でも5頭立てのレースをしなければならない』


 確認してみると、レースという項目の達成条件に、確かにそういうルールが記されている。

 コイツは、俺が唖然としている間に、ここまで駆け引きをしていたのか……さすがはアビリティアシスタントだと思う。


「な、何だか……凄いことになってきましたね!」

 涼花が言うと俺も頷いた。

 果たして、サイレンスアローの脚はどれくらい速いのだろう。それだけでなく、一体どんな戦い方をするのだろう……?

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