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~夏季休暇イベント開始~

~夏季休暇イベント開始~


 夜会は盛況に終わった。特に最後の締めのカレーにはまったものが多かった。あのピリっとしたからさは癖になる。


 個人的には米が欲しいのだが、無いものは仕方が無い。今回はパスタで提供したが、ナンもどきもで食べるのも一つだ。ただ、手で食べると言う行為は貴族の中では受け入れるのがやはり難しかった。だからナンカレーは市井でゆっくり流行していったのだが、それはまた別の話しだ。もちろん、その流行の先端にいるのはアイルだ。


 閑話休題。お仕事しなきゃです。


「それで、ロードスタ家の人たちの監視はどうなっていますか?」


 私はスティーブ、ダリア、ユーフィリアが集まっている朝食の場で質問した。


「行先の希望は温泉街だそうです。それからその先にある山岳地帯を探索したいとのこと」


 やはり『再現』をするために『現地確認』をするのだと思った。乱数管理は自分の行動パターンを制御することで、相手の行動を強制的に決めるバグ技だ。


 そして、その乱数制御ができて初めてイベントの『再現』が出来る。これはイベントフラグが立っていなくても強制的にイベントを起こさせることができるのだ。


 たとえ、そのイベントの主要人物が王都にいたとしても、イベントの『再現』で瞬間移動するのだ。


 ただし、この『再現』にも一定のルールがある。それはイベントが発生るする場所で仕掛けをする必要がある。そして、その仕掛けが出来るのは当たり前だが主人公だけだ。私は主人公でないからイベントの『再現』もできなければその仕掛けをすることも壊すこともできない。というか、もともとよく仕組みがわからないのだ。


 けれど、相手が行おうとしている『再現』の中身はわかっている。一番ロンベルト王国の被害が大きいと言われるドカーケ領への大軍の進行だろう。


 だが、大軍が現れる場所がわかっていれば対処も簡単なのだが、いかんせん場所が特定できないんだよね。


 だって、ゲームだとそこまでの詳細の記載がないのだが、実際は広い山岳地域のどこかに現れるのだ。だからこそ、アンネの行動を監視し、その後にその場所を中心に対応すればいいのだ。


 例えば『再現』で出現した大軍の場所に巨大な落とし穴を作るとかが対応の一つだろう。この話しをスティーブたちに伝えたがどこまで信じてもらえたのかわからない。


 ハッサムは「落とし穴を作ればいいんですね」と何も疑わずにそう言ってきてくれた。純粋な子は本当にうれしい。マナナンガルは「落とし穴だけだとよじ登ってくるだろう。落ちた場所に擬似ダンジョンを作っておいてやろう」と言われた。


 擬似ダンジョンとはダンジョンコアはないけれど、魔物が住みつきやすい洞窟などの事だ。


「安心せい。召喚魔法でバジリスクをそこに置いておいてやろう。石化睨みにどれだけ耐えられるか知らぬがな」


 なんて物騒なことを言っていた。


「ふむ。全てが落とし穴に落ちるわけではありませんよね。だから、この場所に砦の建設を予定されているのですか。だが、この地を守護する兵はどこから持ってくるのですか?」


 スティーブにそう言われた。


「北の要所から持ってきます。あそこは秋の懸念事項をクリアできれば少し削減しても問題ないと思っています。まあ、ロイとルースに何名か連れて戻ってきてもらおうと思っているわ」


 まあ、あの北の要所にいるのは私から見ると空を翔けたり、ビーム出したりと人外が多いので何人かだけでも砦は守護できると思っている。


「まあ、今の人数が異常ですが、キールお嬢様はそれでも対処ができない何かが起きると考えられているのですよね」


「ええ、そうよ。ただ何が起こるのかまでわからないけれど、何もしなければおじいちゃんが戦死してしまうの」


 悩んだ末私はそういう未来が見えると話したのだ。信じてもらえないと思っていたが、意外とすんなり受け入れてくれた。まあ、未来ではなくゲームのシナリオを知っているだけなんですけれどね。


「にわかには信じられませんが、その回避のために戦えるものを集め、その兵士たちを養える食糧、資金を集め、さらに見たことのない武器を導入されている。この戦いに勝ち、その後は独立をするという事でよろしいですか?」


 ちょっと待って。なんで独立?スティーブ落ち着こうか。


「スティーブ。納税の期限はまだ2年以上もある。それまで準備した方がいいでしょう。2年もあれば更なる発展が見込めます。それに多くの貴族に恩を売っています。同調するものも出て来るでしょう」


 ダリア何言っているの?2年経っても私は独立しませんからね。


「ただ、ドカーケはユーラシア王国、ベルフェール帝国に北の蛮族と戦力を分ける必要があります。この秋で北の蛮族との決着をつける。そういう事ですよね?」


 ユーフィリアが私を真剣な目で見てくる。それはあながち間違っていない。


「北の蛮族についてもう少し情報が欲しいです。おじいちゃんがどうして戦死するのかは私にはわかりません。それほど脅威なのですか?」


 私がそう言うとスティーブが資料を持ってきてくれた。


「まず、北の蛮族どもはモンスターを使役していますが、メインはローメシア獣王国という存在があります。このローメシア獣王国と同盟を結んでいるのがベルフェール帝国です。モンスターを使役するスキルはローメシア獣王国からベルフェール帝国に流れています」


 昔おじいちゃんが撃退したというモンスター軍団の事だよね。


「ただ、ベルフェール帝国は低レベルのモンスター、ゴブリンやオークなどを使役して物量で攻め入ってきましたが、ローメシア獣王国は高レベルのモンスターを大量に使役します。そして、その使役には女王と呼ばれる存在がいます。この女王を倒せれば我々の勝利なのですが、女王を捕まえることがいつもできずにいる」


 なんだかどこかで聞いたことがある話しだ。そうだ。スピンオフ作品で戦術系ゲームがあるのだが、そこの舞台がローメシア獣王国だったはずだ。猫耳の女の子が確か女王なんだよね。


 結構かわいいのだ。そして、この娘の能力自体はかなり低く弱いのだ。そして、この娘を守り切りながら相手を倒さないといけないのだ。


 ただ、この娘に近づけば近づくほど召喚するモンスターは強くなる。ひょっとしたらおじいちゃんはこの娘を倒そうとして、失敗したのではないだろうか?


「その女王の近くに行くとかなり強敵の伏兵がいるはずだから、遠くからの攻撃で倒すのがいいわ。絶対におじいちゃんに特攻をさせないように言っておいて。戦うなら開発した『火薬』を使った遠距離攻撃にしましょう」


 私がそう言うとスティーブがびっくりした表情になった。


「今まで謎であったローメシア獣王国の軍団の謎が・・・。次の対戦でランベル様は特攻を計画していました。伝えておきます」


 よかった。これで最悪は回避できる。でも、どうしてローメシア獣王国はロンベルト王国に攻め入っているんだろう?


 あのゲームだとベルフェール帝国と戦っていたはずだ。何かキッカケがあったはずだけれど、やっていたゲームじゃないから覚えていない。ゲームが違うから時間軸が違うのかもしれない。


「秋には私たちも北の要所に行くからね。皆で勝ちましょう!」


 まだ私は知らない。これから起きる激動を。




「アイルを見ませんでしたか?」


 ハッサムがそう声を掛けてきた。


「アイルなら夏祭り実行委員会の委員長だからフードコートにいるはずよ。何かあったの?」


 夏祭りに出す夜店の話しをしたらアイルが本気になったのだ。おかげで、ベビーカステラが再現された。


 ただ、たい焼きは餡子がないため、カスタードになった。というか、カスタードが再現できたことで次に夜店では定番ではないけれど、色んなスイーツが出されることになった。


 アンにも協力してもらった。菓子パン文化が根付いてきた。クリームパンとメロンパンが人気だ。ミニメロンパンが夜店で出る予定だ。ハッサムが教えてくれた。


「あの、アンネ・ロードスタが、火竜を倒したようです。おかげであの一体の気候が変わりつつあります。アイルは火竜イベントを行いたがっていたのでその報告と思い来ました」


 火竜イベントはシーズン3のイベントだ。確かに今のアンネのステータスなら倒せるだろう。でも、どうして火竜を倒したのだろう?しかも早い段階で。何か私は見落としているのかもしれない。


 火竜イベントは本来火竜が居るべきでない場所に火竜がいるため、死の大地と呼ばれる岩肌と砂漠のみで草木が育たない平地が出来たのだ。


 火竜の影響を受けない地下では作物は育つが、地上は生物が生活することができないくらい劣悪な環境なのだ。


 火竜がどうしてその場所にいるのか。それは子どもが怪我をして回復するのを待っているからだ。だから、火竜イベントは火竜を倒すのではなく、子どもの怪我を治すと『火竜の加護』が得られるのだ。


 そして、治療後その子竜は仲間となるのだ。アイルは竜に乗りたいため、この火竜イベントを行いたいと言っていたのだ。


 ちなみに、子竜を治療せずに無理に火竜が居る場所を通ろうとすると戦いになる。勝利しても『火竜の加護』はてにはいる。そして、竜燐、竜の牙、竜の角、竜の心臓というレアアイテムが手に入る。そして、ドラゴンスレイヤーという称号が手に入る。


 死の大地の先にベルフェール帝国があり、このレアアイテムがあると交渉はスムーズに進むが、火竜を倒した結果のデメリットもある。火竜を崇めている半人族が一気に押し寄せてくるのだ。主人公はその責任から学園を追放されるというバッドエンドになるのだ。


 倒したっていいことはない。どうしてバッドエンドになるようなことをしたのだろう?


 だが、アンネがベルフェール帝国と勝手に交渉をするというのだろうか?


「それで、アンネの足取りはどこに向かっているの?」

「そのままドカーケに戻ってきているようです」


 ひょっとしたら火竜殺しを私たちに押し付けようとしているのか?


「アンネが持っている可能性があるレアアイテムについては取扱注意です。注意をしてください」


 だが、アンネはその後おとなしかった。そして、何も起きなかったのだ。私はアンネの行動の理由がわからなかった。


 今、出来ることをしようと決めた。そう、今は夏を楽しもう。そして夏祭りがやってきた。


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