~夜会前の打ち合わせ~
~夜会前の打ち合わせ~
「キールお嬢様。ウルグ商会のセアドが来られました」
ユーフィリアにそう言われて、もうそんな時間なのかと思った。フィーバルからユーラシア王国の内情の報告書はもらっている。
ユーラシア王国の中が一枚岩でないということは聞いていたが、3つの派閥に別れていた。
穏健派というか、現状維持推進派。開戦派。そして、一番多かったのが暗躍派だ。
暗躍派は開戦する条件があれば開戦するが、交渉でうまく行かない場合は現状維持を目指すという一見何をしたいのかがわからないことをしているのだ。
バランスを見ながら時に開戦派の意見を抑えたり、現状維持派が手にしている利権を守ったりしている。一番現実的なのがこの暗躍派なのだ。
そして、今回ロンベルト王国に来ている学生たちもこの暗躍派なのだ。ちなみに、名称は私が勝手につけた。実際に最有力の家の名前が付けられていたのだが、家名で言われてもまったくしっくりこないのだ勝手に命名させてもらったのだ。
「ユーフィリア。通していいわよ」
セアドとは週1回情報交換をしている。そう、ユーラシア王国の開戦派の思惑にドカーケが巻き込まれるを避けるためだ。
青い髪をし、大きな目と含み笑いをしている青年、セアドがそこにいた。
「キールお嬢様。ご報告があります。かねてよりご指摘いただいていたロッテンマイヤ派の動きですが落ち着いてきています。どうやらロッテンマイヤ家の二女であるシーフヤがドカーケに仕えるということが理由のようです」
ロッテンマイヤ派は暗躍派の事だ。武の令嬢であるシーフヤ・ロッド・ロッテンマイヤの実家だ。シーフヤ自身は二女だが、ユーラシア王国に戻り婚約者であるフィリップと共に要職に就く予定であった。
けれど、二人ともナッカの騎士になると言い出したので早馬でロッテンマイヤ家に手紙を届けたのだが、私よりも先にシーフヤがロッテンマイヤ本家にそのことを伝え。
お祭り騒ぎになっていたようだ。英雄の元に人を送り込むことが宿願だったらしい。というか、どうすれば英雄のように強くなれるのかの情報が欲しいみたいだ。
多分、ユーフィリアかスウに鍛えられたら限界まで鍛えられますわよ。仲間になりたいのなら歓迎しますわよ。
「そうね、それは想定外だったけれど、良い方向に進んだみたいでよかった。では、こちらからどんぐり粉のレシピを提供するようにしてください。といっても、初期版で改良版は出さなくてよいです」
ユーラシア王国は山岳地帯だ。鉱山の有無の違いはあるが結構ドカーケと似た環境なのだ。開拓していない所にはモンスターがいるため手が付けられていない。平地が少ないた小麦の生産がおいついていない。ならばどんぐり粉からパンが作れるようになったら、食糧問題はある程度解消できるはずだ。
「よろしいのですか?それと情報料はどれくらいにしますか?」
セアドがこういう風に言ってくるのは珍しい。そんなにどんぐり粉のレシピって問題なのかな?
「金額は任せるわ。ただ、どんぐり粉の提供のかわりに取り付けてほしい交渉があるの。『ポリシティ商会』のライバルの商会である『ラスティア商会』の悪事を集めておいてほしいの」
おそらくアンネが取ってくる方法は予想ができる。レアアイテムを使ったごり押し作戦だ。開戦派がどうして動きが悪いかと言うと資金がないからだ。
そして、開戦派が抱えている商会が『ラスティア商会』だ。この『ラスティア商会』を通じて開戦派に資金提供をする。これがレアアイテムを使ったごり押し作戦だ。
ゲームではどこの商会を使ったとかの情報はない。だが、暗躍派のポリシティ商会はすでに付き合いがあるし、ドカーケ領に対して攻め込むような事はしてこないだろう。
それだけの戦力も城壁も設備も嫌と言うくらいポリシティ商会には見せているからだ。示威行為って意味があるんだなってことを初めてしった。
「それは構いませんが、『ラスティア商会』は最近金回りもいいみたいですね。どうもロンベルト王国の王都にある末端の商会から色んなものが流れているみたいです。なんでもなかなか手に入らないアイテムが一部そこから手に入るらしいので」
「それは、要注意人物であるアンネが確実に売りさばいているわね。『ラスティア商会』をもし潰したらどれだけの影響がでるのかも調べておいて」
おそらく阻止するにはそれくらいのことはしないといけない。だが、証拠も必要になる。そうでないとロンベルト王国が動いてくれない。
「そこまで気にしている相手ならいっそ今すぐなんとかしてしまえばいいじゃないか。事故に見せかけるなんて簡単だろうに」
セアドがそう言って来た。ユーフィリアがものすごい笑顔だ。そう言えば、うちのメイドと執事って暗殺術みんな持っていたな。
「やらないわよ。それにやるとしてもそれは最終手段。それに、するならちゃんと裁きを受けた上がいいわ。秘密裏に闇に葬り去るというのは違うと思うの」
そう、私はまだわかっていなかったのだ。この選択が連れてくる『リアル』がどういうことかということを。
「わかりました。それに今回きちんとした対応をすることで『ドカーケに敵対する事がどういうことなのか』をきっちり教えてあげましょう」
いや、ユーフィリアさん。その邪悪な笑顔なんですか?
夜会。
今回は学園から来た皆さんを歓迎するということにプラスして色々な人をお招きしてみました。
シーズン2のメインの攻略対象だけじゃなく、カチュアにも来てもらった。というか、なぜか視察としてターメリックが長期滞在しているからカチュアにも来てもらったのだ。
「まあ、ちょうどこの場にメディス家の長女もいるから効率的だし。まあ、私の愚弟もいるのは気が重いが」
カチュアはオレンジのドレスに身を包みそう話してくれた。まだ、会場に私は出ていない。私が出る時は挨拶をする時だ。ある程度の人が会場に来たのを確認してからだ。
アンネとドーソン・ロードスタ、その婚約者のメイサも会場に着いたのを確認している。まあ、この会場に本来居るはずがない人も出席すると連絡が入り困っている。
「カチュア。でも、本当によかったの?まだ、商談は終わってないんでしょう?」
「キール。ここで商談ではできない情報が知れる可能性がある。だからでしょ。こんな場を作ってくれたのは」
この夜会にはすべての攻略者がいる。カチュアのためにちょっと別室に呼んだのは速の令嬢であるジャネット・ロー・メディスだ。メディス家はユーラシア王国内でも大きくて力強い馬を育てる。そして、カチュアはこの交渉で難航しているのだ。
実際にゲーム内でも馬が購入できなくなるというイベントがあり、その解決にジャネットの力を借りるというものがある。これはジャネットの婚約者であり、速の攻略対象であるヴァイス・ユニ・クルルと仲良くなって発生するイベントだ。
この速の攻略対象であるヴァイスはカチュアの弟だ。カチュアと同じ青い髪をした男性だが、商人というよりも何かにいつも反抗している困った男性だ。
ヴァイスはクルル家の長男であるが、商才がないと言われ、蔑まれ、周囲を妬んでいるので性格がちょっと曲がっているのだ。
攻略する方法はヴァイスにも商才があることを証明することだ。つまり、カチュアが苦戦している商談をヴァイスがまとめるのだ。
その一番大きな商談はカチュアが今担当してうまく行っていない馬の購入なのだ。ただ、ジャネットはかなり変わった女性だ。まあ、一言でいうと不思議ちゃんだ。カチュアとは相性が悪いと思うが大丈夫だろうか。
「隣の部屋にジャネットを呼んでいるから話ししてきてね」
「ありがとう。キールはついてきてくれないのね」
ついて行った方がいいのはわかる。だが、面倒な人がこの夜会にくると言い出したのだ。
「もう少ししたらカグーイ王妃が来られるの。領主としてそちらが優先なのよ」
このドカーケの温泉やサウナ、エステを気に入ってくれたおかげで結構な頻度でドカーケに来られるのだ。
といっても、転移魔法が使えるガラが連れて来るので移動にかかる時間はゼロだ。直接この領主館に来られるらしい。
というか、すでにこの領主館に何度もカグーイ王妃は来られている。城みたいなこの領主館を見て王城も改築したいと言い出したのだ。流石に職人は出せないのでクルル商会経由でお願いしてくださいとだけ伝えた。もちろんカチュアにも事前相談済みだ。
「そ、そう。それは仕方がないわね。でも、落ち着いたらこっちにも顔を出してちょうだい」
「ええ、もちろん」
だって、カチュアとジャネットは相性最悪だからだ。本当ならばカチュアの弟のヴァイスが仲立ちすればいいのだろうけれど、この姉弟は色んなことがあって素直になれないでいるのだ。
カチュアを見送ると背後に気配を感じた。
「ふむ。少し早かったか。場所はどこだ」
黄色の髪に青い瞳した男性が立っていた。ガラ・リース・グルニクルだ。横にはほぼ同じ顔をしたガラの妹のサラ・リーン・グルニクルもいる。
「この先の応接室よ。でも、どうして馬車じゃなく転移魔法なのかしら」
「それはサプライズをしたいからに決まっているじゃない。キールちゃん」
後ろを見るとそこにカグーイ王妃がそこにいた。金色の髪をアップにしておでこを出している。
エステで肌がきれいになったので露出が多めだ。肩も大きく出ている白い光沢があるドレスを着ている。
絶対このドレス高いんだろうな。なんて関心をしている場合じゃない。すぐに片膝を付いて臣下の礼を行う。
「キールちゃん。今日はお忍びだからいいわよ。それに、ちょっと興味があったのよね。私の息子の相手であるミストランテ・ド・ラ・ユーラシアという子とキールちゃんが要注意だというアンネ・ロードスタという子に。ちゃんと紹介してよね」
「はい、もちろんです」
といっても、私は二人ともと会話したことないんだけれどね。まあ、カグーイ王妃が話しをしたいって伝えればいいか。
「そうそう、事前に言っちゃ駄目だからね。サプライズがしたいんだからね。とりあえず、先にミストランテを呼び出してちょうだい。息子が一緒でもいいわよ」
そのほうが安全そうだ。ユーフィリアに指示を出してこの場はスティーブとダリアに任せよう。おいしいダンデ茶が出てきた。
「やっぱりダンデ茶はドカーケ産に限るわね。この深い味わい。ほんのりある苦みと甘味のバランスがいいのよね。他でも作らせているけれどどうも何かが足りないのよ。コツってあるのかしら?」
カグーイ王妃の大きな目が私を見てくる。しかもちょっと近い。ミストランテとレイフォンス第二王子を迎え入れるため、今私はカグーイ王妃の隣に座っている。近いのだ。そして、圧がすごい。
「そうですね。淹れる時の蒸らし時間でも味は変わります。後は焙煎の仕方でも味は変わります。この辺りはその時の気候、温度で少しずつ変化することで味が変わります」
「ふ~ん、そういう答えを求めていたわけじゃないんだけれどね。まあいいわ。『ここ』に来ればおいしいダンデ茶も食べたことないスイーツもいただけるしね。ガラ。宜しくね」
カグーイ王妃の後ろにはガラとサラが立っている。
「「了解」」
二人とも無口なのだ。最低限の言葉しか言ってくれない。基本的にガラがカグーイ王妃を連れてくることが多いがたまにサラの日もある。
サラの時は一緒に温泉に入っているみたいだ。私は政務があると言い訳して近寄っていない。それに温泉街はゲーム通りにマリンケ族の中で土魔法が不得意な人に任せている。レガンス・フルベ。ハッサムの姉だ。
ハッサムがドカーケに仕えるキッカケになったのが家族を支えるということだったのだ。ハッサムの姉と妹の2人が土魔法の適性がないのだ。
姉であるレガンスはもう少ししたら代官として任命が出来るくらいになるだろう。妹のニュクス・フルベは施術エリアを任せている。この二人は元々ゲームに出てきたのだ。ゲームに出て来なかったのはハッサムだ。
私という存在がなかったらハッサムはどこかで傭兵をしていたのか、今回のユーラシア王国との戦いに巻き込まれていたのかもしれない。ゲームではハッサムが出て来ないからだ。優秀なのに。
ちなみに、顔立ちはわからない。なぜかと言うとハッサムと同じように顔をほとんど隠しているからだ。
白い肌と白い長い髪はわかる。そして、赤い瞳だ。見た目で忌み嫌う人も多いが、ノンリケもかなりうまく街をまとめてくれている。おかげでマリンケ族との融和も進んでいる。
「失礼します」
「どうぞ」
迎えに行っていたユーフィリアがミストランテとレイフォンス第二王子を連れてきた。横を見ると扇子を広げてカグーイ王妃は顔を隠されている。波乱が起きる予感しかしませんわ。
「夜会前に打ち合わせと言って妾を呼び出したのです。それ相当の特別な話しでもあるんでしょうね。ふん」
銀色の長い髪に少し細目、釣り目の銀色の目をした女性。それがミストランテだ。別名「傲慢」だ。
シーズン2から7つの大罪が悪役令嬢に追加されている。顎が上がり明らかに私を見下している。まあ、一国の王女と子爵だしね。そうなるわね。ゲームでも見ていたからミストランテの行動に違和感はない。横にカグーイ王妃が居なければ。
「これは母上。どうして今日はこちらに。それにそちらにおられるのはグルニクル侯爵の子息女のガラ様とサラ様ですね。これは失礼しました」
ミストランテの横にいたレイフォンス王子がそっと頭を下げる。ミストランテ王女は私を睨んできた。ってか、私はこんなことしたわけじゃないですからね。
「レイフォンスは流石に早かったわね。それでミストランテ王女。それ相当の特別なお話しがあるのでお呼びしましたの。どうぞおかけください。ドカーケ産のダンデ茶にこのマカロンというお菓子は非常に合うらしいのよ」
カグーイ王妃の口調は丁寧だ。言葉づかいもやわらかい。だが、目が笑っていない。凄みがあるのだ。笑顔でこんな凄みが出せるものなのか。これが王妃なのか。怖い。
「これはカグーイ王妃。今日はいつだんとお美しいですわね。その美貌の秘訣はこの地にある温泉とエステでしょうか?ぜひ気になります。ただ、今宵はドカーケ子爵主催の夜会もあります。あまり長居をするとドカーケ子爵が迷惑でしょう」
そう言って私に矛先を向けてくる。やめて。そういうの。
「いえいえ、主賓は遅れて行くものです。今はドカーケ料理に皆さん舌鼓を打っておられるでしょう。ただ、料理は皆さんにも食べていただきたいので本題に入れたらと思っています。カグーイ王妃。いかがでしょう」
はい、パスしました。早く終わらせておいしい食事に行きましょう。行きましょう。私の護衛のはずのアイルなんてもう会場に入っていますからね。護衛はハッサム一人だけです。まあ、この場にレベル99のスティーブとダリアもいるから何が起きても安心ですけれどね。
「そうね。ミストランテ王女の噂は聞いておりましたが、その一旦を垣間見られた気がします。一国の王女という矜持をはき違えないようにしてください。レイフォンス。あなたもです。ミストランテをうまく教育しなさい。レイフォンスはユーラシア王国を支えるためにロンベルト王国から婿に出すのですからね」
ゲームだとレイフォンスはかなりミストランテに振り回されているイメージしかなかった。基本的にレイフォンスはいい人なのだ。良識人でもある。そして、自国に後ろ盾が少ないことからすごく丁寧なのだ。
「母上。かしこまりました。母上の希望に添えるよう尽力いたします」
レイフォンスは頭を下げるが強くミストランテに言うことができない。ミストランテを怖がっているからだ。まあ、顔立ちも振る舞いも怖いしね。解るよ。その気持ち。
「それで、本題です。ミストランテ王女。ここにいるドカーケ子爵ですが、今ロンベルト王国の未来が一番見えているものでもあります」
いえ、見えてませんよ。一寸先すらわかりません。ゲームでの展開以外わかりませんからね。この場がどうなるのかハラハラしながら過ごしています。
「そう、ユーラシア王国が抱えている問題もこのドカーケ子爵が説明してくれて理解できました」
いや、私はレイリアに話しただけ。そのレイリアが証拠を集めて王と王妃に説明をしたのだ。
「ただね、今すぐユーラシア王国が抱えている不平等を解消することはできない。それには時間がかかるの。少しずつ変わっていく。おそらくこの1年でそれを感じるはず。だからあなたの力で、あなたが卒業するまではユーラシア王国が何も行動しないようにしてくれないかしら」
カグーイ王妃は笑顔だ。だが、私の威圧以上にプレッシャーを感じる。なんだこれ。怖い。
「い、意味がわかりませんことよ」
この圧の中でもミストランテは変わらなかった。
「そう、こういう書類もあるのだけれどどうかしら?」
カグーイ王妃がそう言うと後ろにいたガラが書類をミストランテの前に置いた。
「こ、これは?」
「そうね。ロッテンマイヤ派閥が行っている内容のまとめかしら。あなたが全てを把握しているのかは知らないけれど、私たちは見せられる分だけでもそれだけの事を把握しているわ。そして、未然に防ぐことだって出来る」
ミストランテの笑顔は変わらない。でも、そわそわしだした。ってか、これ私が把握している内容のすべてじゃない。これ以上の事はない。だが、それをミストランテが把握をしているわけではない。
「こ、こんな書類だけ並べられても」
その瞬間サラが一瞬消えて誰かを連れてきた。この人の顔はイベントのコンプリート絵柄で見たことがある。ミストランテの父親であり、ユーラシア王国の国王だ。
「お久しぶりです。ユーラシア王。あなたにもお願いがあります。先日書類をお渡ししたかと思いますが、私どもを煩わせるようなことはしないでいただきたいですね。少なくともあなたの娘が学園にいるうちは。それまでの間に私たちもユーラシア王国との関係を改善もしくはその改善の一端をお見せします。自国を抑えてもらえますかしら?」
これは恐怖だろう。事前にこの場に連れてくると話していたわけじゃないのはユーラシア王の狼狽ぶりでわかる。そしてミストランテの後ろにそっとガラが移動しているのだ。断ったら娘の命はないと言っているのに等しい。
「ああ、わかった。ミストランテ。お前もおとなしくしておくように」
ユーラシア王はその言葉を言った瞬間にまたサラと一緒に消えた。
「では、話しは終わりましたわよ。では夜会に行きましょうか」
今、ものすごい事が起きましたよね。他国の王を一瞬攫ってこのドカーケに連れてきましたのよね。そして、娘を人質にしての交渉。
「これからも仲良くできそうですね。ミストランテ王女」
今日一番の笑顔をカグーイ王妃は浮かべた。
「ええ、そうですわね」
ミストランテの目から光沢が消えた気がした。平等な関係に本当になれるのだろうか?
とりあえず夜会の主催者として挨拶をしないといけないのだ。両脇にこの二人がいる状態で。いやだ。逃げたい。
「キールお嬢様。準備は整っています」
ものすごくきれいな笑顔をしたスティーブが私のすぐ横に立っていた。魔王であるスティーブからは逃げられないのだった。




