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~モカグリーンの独白~

~モカグリーンの独白~


 ガルガンチュア家の長女として生まれた私に自由なんてものはありません。それに、すべての属性魔法を使え、呪術にもたけている私はユーラシア王国の道具です。


 私の行動はユーラシア王国のためでなければならない。だが、私の全てを変えた存在がいます。


 メリド・ラ・ド・ザッカス。


 私の婚約者です。ユーラシア王国はロンベルト王国の属国です。自分たちがどう主張しようとそのことは変わりません。


 それにロンベルト王国の地には魔女と魔王がいます。あの地は霊的にも守られていますし、あの魔を解き放つ愚行を誰も行いません。だからこそ、ロンベルト王国は1000年王国と言われているのです。それにロンベルト王国には生きる英雄もいます。


 私はロンベルト王国に服従することに異議はありませんが、父は違いました。ただ、国力が違うため戦争は出来ず、裏工作しかできません。気づかれないように、お辞儀をした時に地面に向けた顔は怒り狂っている。それが父です。


 その父が連れてきた私の婚約者。ロンベルト王国のザッカス家の二男。能力はかなり高いと聞かされていました。


 そして、このガルガンチュア家に入り婿としてやってくるらしい。


「籠絡しろ。絶対にだ。呪いで意識を奪ってもいいぞ」


 そう言われたが、一目見てその繊細な女性のように見える整った顔立ちに心が奪われた。そして、あり得ないほどの魔力と創造魔法に私は心を奪われたのだ。


 だが、メリドの心は私を向いていなかった。メリドはロンベルト王国の守りの要の一つである魔女に恋をしていたのだ。


 何度も国を越えて、時間をかけてメリドに会いにいきました。するとメリドから空間転移の魔法理論を教わった。


「お前ならできるかもな」


 ぶっきらぼうに言う言葉。でも、視線は私を絶対に見てくれない。この人を振り向かせたい。私はそう思って空間転移魔法を習得した。ただ、降り立つ先が嵐の後のようになってしまうのだ。これだけが難点だ。


 もうすぐ12歳。ようやくロンベルト王国にある学園に入学できる。そう思っていたら父からこう言われた。


「ロンベルト王国に入るのだ。穀倉豊かな土地や水源に呪いをかけて来るがいい。目立たないよう遅行性のな」


 嫌がらせに近い。テロのような行いだ。大人たちは何をどう考えているのかわからない。だが、私たち子供はそれに従うことしか許されていない。乗り気はしないが様子を見て実行するか。できれば、メリドがいるザッカス領に影響がない場所で行おう。


 なんて、軽く思っていました。ロンベルト王国に入り、私たちを歓迎する会の前にレイリア様に呼び出されました。


 父からは絶対に敵にまわすなと言われている相手です。ユーラシア王国でも要注意人物として名前があがっています。


「はるばるユーラシア王国からようこそお越しくださいました」


 優雅な挨拶だった。だが、そこから一人ひとりに釘をさすように話していったのだ。


 そう、私たちはユーラシア王国から言われている事やその動きについて。私たちの相手は思った以上の存在のようです。私たちは結束しました。そして、学んだのです。敵にまわしてはいけないと。


 そして、もう一つ。学園にいる「アンネ・ロードスタ」という人物と距離を開ける様にと。彼女の狙いは私たちの誰かの婚約破棄であると言われた。そのために近づいてくると。


 偶然を装い色々な出会いがありました。だが、ミストランデ様が籠絡されました。聞く所によると「翡翠の石」というレアアイテムを受け取ったそうだ。


 受け取った「翡翠の石」をレイリアに献上していたのは流石だと思った。あのプライドの高いミストランデ様がそんなことを行ったのだ。多分本国から指示があったのかもしれません。


 私も父にレイリアは私たちが行おうとしていることを把握していると伝えたらびっくりしていた。


 各地への呪術に関しては一旦停止となった。心苦しかったから助かった。そう思っていたらメリドの魔力が遠くの地に移動した。何かあったのかと思っておいかけたら、もう一人の要注意人物にであった。


 キール・テル・ドカーケ。


 英雄の孫である。だが、このキールが領主になってからドカーケは裕福になったという。最近は鉄などの資源の購入を増やしている。その動きはまるで富国強兵。不用意に敵対せず友好関係を築くようにと言われている相手だ。


 学園でこのキールの弟のナッカがいるがかなり優秀だ。ありえないくらいの。たまに目が死んでいるが基本的に理想的な貴族しての振る舞いをするのがナッカだ。


 結果的に無事に済んだが怒りに触れてしまったのだ。父に報告すると謝罪をするようにと言われまず手紙を送った。するとキールから直接話しがしたいと言われたため、再度空間転移魔法でドカーケに向かった。


 着いた先は街から少し離れた山間の場所だ。といっても地面は石畳が敷かれてあり目の前に木でつくられた変わった形の建物が立っている。


「ここは?」


 私はドカーケに来たはずだ。目の前には多分セントラルドカーケが見える。どういうことだ?


「ここは新しく作ったセントラルドカーケ神社よ。あそこは神のための社よ。といっても私もそこまで詳しくないから見た目だけそれっぽいだけよ」


 目の前に居たのはキールだ。この人はいまいちわからない。強いはずなのに、そのオーラがないのだ。かと思ったら威圧で体ごと押しつぶされそうになる。


「こんなに広いスペースが必要なのですか?」


 背後から声がした。黒髪をきっちと分けた姿勢のよいメイドがいた。このメイドは本当に怖い。


 キールより脅威に感じる。というか、ドカーケに何度か来たがこの場所はおかしい。皆レベルが高すぎる。


 兵士も練度が高い。それにドカーケの街は辺境に見えない。


 王都と遜色がないくらい栄えているのだ。高いきれいな建物が町中にあり、キレイで衛生的なのだ。糞尿の臭いがどこからもしない街だ。


 それに、街の周囲の畑もかなり育ってきている。区画が分かれているのかこの距離だと作られているものがエリアによって異なるのが良くわかる。見たことがない農地になっている。


「ユーフィリア。ここはまだ建てるものがあるのよ。おみくじとか手水とか。色々まだあるのよ。マナナンガルに神を祀りたいからご神体を作ってとお願いしたら体を清めるとか言い出して大変なのよ。あの子そんなに信心深かったっけ?まあ、いいわ。とりあえず、モカグリーンが来てくれてよかったわ」


 周囲を見渡しながらキールは歩いていく。その先に石を土台にした上に平らな石を置いた所まで歩いて行った。


「座ったら?」


 キールはそう言いながら石の上に座った。座ると石は魔力で加工されたものだとわかった。こんなにきれいに作ることができるのか。メリドの思い人は。私は自分の魔法制御がまだまだだと思った。


「なんじゃ、そこにおるのは。空間転移魔法が発動したからメリドかと思ったではないか」


 声がしたと思ったら魔女がそこにいた。いつから居たのだ。本当に嫌になる。このドカーケには自信を失わせるものたちばかりしかいない。


「マナナンガル。ちょうどよかったわ。おそらくもうちょっとしたらモカグリーンが黒魔水晶を手に入れると思うのよ。それで、黒魔水晶を使ってマナナンガルにかかっている呪いを解呪しようとするのよね。それがどういう事になるのかをモカグリーンに話しておこうと思っていたの。同席するでしょ?」


 黒魔水晶はそう簡単に手に入るアイテムじゃない。だが、確かに私は解呪のためにアイテムを集めようとしていた。黒魔水晶があれば私が思っている解呪は成功する。


「ふん、自分の死を早める話しに参加すると思っておるのか?キールお嬢様の決定に従いたいが、そんな話しよりご神体を作成するほうが妾にとっては大事じゃ」


 吐き捨てるようにマナナンガルはそう言って立ち去った。どういう事だ?死を早めると言うのは。キールが困った表情をしながらこう言って来た。


「そうね。私はここまでマナナンガルがご神体作成に力を入れると思っていなかったの。ごめんね。結論から言うとモカグリーンのその解呪では誰も救われないわ。1000年の月日から解放されると言う点はあっているけれど、それって止まっていた月日が一気に動き出しちゃうことでもあるの。人の体は1000年の月日には耐えられないわ。解呪の瞬間にマナナンガルは塵となるでしょう。私が言ったことに何か思い当たることはない?」


 私は呪いを解くという点にのみ注力していた。確かに人の体は1000年の月日に耐えられることはない。ならば、私が行おうとしていたことは一体?


「そうね、もしそんなことが起こってしまったらメリドはどうなるかしら?モカグリーンに感謝すると思う?」


 マナナンガルを塵にした存在として私は恨まれるだろう。婚約も破棄され、私はユーラシア王国に強制送還となる。


 父が願っていたロンベルト王国に呪いを刻むこともできず、ガルガンチュア家を継ぐ存在も失ってしまう。恐怖しかない未来だ。


「ならば私はどうすれば?」


「そうね、普通呪術って身代わりを用意するわよね。その月日の流れを受け止める身代わりがあればいいんじゃない?それか呪いを解呪せずに呪いを上書きするとか?あ、そうか。もう少ししたらマナナンガルは1000年を迎えてしまうの。そうなると勝手に呪いは解呪されるわよ。どっちにしても時間はそこまで残されていないのよ。まあ、よく考えてみて。私の話しは以上よ。後は戻りたい時に戻ってね。あんまり遅くならないように」


 キールはそう言って長い石畳の階段を降りて行った。しかも結構なスピードでだ。何かの特訓なのだろうか?よくわからない。


 だが、言われたこと、指摘されたことは納得できた。それ以上に私はロンベルト王国を怖いと思った。どこまで先を読み切っているのだ。我々は手のひらでただ踊っているだけなのではないのか?


「なんじゃ、まだ居たのか?」


 マナナンガルが声をかけてきた。私はこの魔女が嫌いだ。この魔女が居る限りメリドは私を振り向かない。だが、この魔女がメリドを育てたのも事実だ。そして、二人は愛し合っている。


「そんな目でみるな。妾はお主がうらやましい。妾にはできないことが唯一できるからな」


「そんなことはない。私は何もかもあなたに及ばない」


 嫌味か。メリドとマナナンガルが愛し合っているのも知っているし、二人が重なり合っている所も何度も見ている。


「ふん、妾にはメリドの子を成すことができぬ。それは絶対じゃ。妾の時は止まったままじゃからな。触れることはできたとしても、時を動かすことはできぬ。それがこの呪いだ。それで、お主はどうするのだ?解呪したいのか?その行動の結果何をもたらすのかキールお嬢様から教わったのじゃろ」


 金髪の髪を揺らしながらマナナンガルが私を見ている。そう言えば私はマナナンガルとちゃんと会話をしたことがなかった。


「ええ、教わりました。素人のはずのキールが言ったことは、でも、納得ができるものばかりでした。あれは一体?」


「あれはイレギュラーじゃな。ひょっとしたら、未来が見えておるのかも知れぬ。そう思ったことは何回もあった。この神社とやらを建てたいといったのもびっくりした。お主らにはこの意味はわからぬだろう。だが、これは妾らが忘れていたこと、失ってしまったことでもあるのじゃ」


 『ジンジャ』って何だ?聞いたことがない。私がきょとんとしていたらマナナンガルがこう言って来た。


「この世界は神が作られたものじゃ。だが、神は行き過ぎた知識や文明に裁きを下したのじゃ。妾らはそれらと戦い束の間の平和を手に入れた。それは妾らだけじゃない。妾らに協力してくれる神がいたからじゃ。じゃが、お主もそうじゃろうが神を感じることもなければ神を祀ることもない。もう諦めようとしていたらキールお嬢様が神を祀る社を作りたいと言い出したのじゃ。あれは本当に何者じゃ?未来でも見えているのではと思うくらいじゃ」


 1000年生きる魔女ですらつかみ切れない存在。イレギュラー。だが、私はこのままだったら暴走していただろう。


「お主は多分近いうちに黒魔水晶を手に入れるだろう。あのキールお嬢様がそう言うのならそれは事実じゃろう。それでどうするのじゃ?」


「今の解呪方法では意味がありません。ただ、さっきキールが言っていた会話の中で考え付いた対応があると言えばあります。ただ、それを実現するには黒魔水晶が6個必要になります」


 そう、1000年の呪いを解呪できないのなら、もう一度かけてしまえばいいのだ。ただ、その場合マナナンガルは更に1000年の月日を過ごすことになるが。


「ふむ、お主が考えていることは実現してほしくはないが、確かにもう少しだけ生きたいと思う世界になったのも事実じゃのう」


「本当ならあなたをどうにかしたいんです。けれど、無理なのなら私は私の出来ることをするだけです」


 そう。心は奪えない。でも、子は成せる。ならば私はメリドとの関係をもらおう。後は父をどう説得するかだ。だって、今のメリドが望んでいることは、父の願いと違うからだ。


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