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~夏に向けて~

~夏に向けて~


 予想外にアンネはしぶとい。ロードスタ領から支援されることはなくなったみたいだ。


 だが、3人メンバーを集めてモンスター狩りを行ったのだ。


 しかも峡谷で「翡翠の石」をゲットしている。「翡翠の石」は滅多に入らない希少アイテムの一つだ。そして、この「翡翠の石」を誰よりも欲しがっているのがシーズン2の悪役令嬢であるミストランテ・ド・ラ・ユーラシアだ。


 ユーラシア王国は鉱山で有名な国だが、翡翠は産出されないらしい。翡翠の石はなぜかモンスターを倒した時にレアドロップとして出て来るだけなのだ。


 そして、この翡翠の石は色んな使い方がある。普通に宝石としても使えるが一番は魔力をため込むことが出来るのだ。いうならば「電池」だ。魔力切れを起こしそうになった時に翡翠の石から魔力を吸収できる。これが翡翠の石の希少価値を高めているのだ。


 翡翠の石のイベントは結構ある。アンネはユーラシア王国への献上、婚約者である第二王子であるレイフォンスへの献上までは理解できた。だが、まさかプライドの塊であるミストランテがまさかレイリアにも献上するとは思っていなかった。


 それも、翡翠の石を献上する代わりにお茶会にアンネを入れてよいかという内容だったのだ。レイリアも悩んだがお茶会に入れることで情報を収集できると判断したから入れたという。


 確かに色々とわかることもあるが、フラグを立てられるという意味では悪手だ。だが、私には止めることはできない。それくらい翡翠の石に魅力があるからだ。


 先手を打つとしても希少アイテム狩りは効率が悪いし、私はいまいち乱数管理がわからなかったのだ。意味不明だし。行動を制限してその場所に行き、同じことをすれば再現が可能になると言われてもいまいちわからなかった。


 でも、相手はそれができるみたいだ。ということはこれからも希少アイテムで攻勢をかけてきそうだ。


 どうするのが良いのだろう?多分、希少アイテムはいくつかある。今回はミストランテ用の希少アイテムだったが、攻略キャラごとに希少アイテムはあるのだ。


「どうしたらいいだろう?」


 つい言葉に出ていた。今日は何もないので護衛はアイルだけだ。アイルが言う。


「キールが悩んでいるのがおかしい。相手がどういう行動を取ってもやることは変わらない。いつも通りでいいじゃないか?」


 いつも通りってなんだ?


「いつも通りってどんな私なの?」


 つい言葉に出ていた。だって、希少アイテムを使う事は多分阻止できない。でも、フラグは立てさせたくないのだ。


「いつも通りはいつも通り。そんな策を練る必要はない。王道でぶつかればいい」


 王道でぶつかる。確かにそうだ。変な策を練ろうとしても私はうまく行かない。そんなに器用じゃないしね。


 ならば普通にゲーム上の対応をすればいいんだ。ただ、私は学園じゃなくドカーケにいる。ならば、皆をここに招待すればいいだけだ。予定通り夏までに温泉街は完成しそうだ。後は全員を招待してしまえばいい。


 男性キャラも女性キャラも。ナッカもスウもだ。それが一番早い。そこで私が皆と仲良くなって信愛度を上げて行けばいいんだ。


 イベントは別に学園で行うことにこだわる必要はないしね。


「アイルありがとう。じゃあ、ちょっと用意をしてほしいものがあるの」


 私が狙うのは友情エンドだ。主人公は誰とも結ばれないエンディング。全ての攻略対象がドカーケ内で婚約者と過ごせる場を作ればいいのだ。


 このドカーケでイベントを起こさせる。その間にアンネに何もさせなければいいのだ。アンネが誰の相手もしないように私は夏の間に前回ドカーケに来たドーソン・ロードスタも招くことに決めた。


 というか、このドカーケで起きるイベントを思い出していた。イベントは色々あったはずだ。確かこの時期に発生するモンスター討伐もあるがあればアンネに経験値を渡すくらいなら先に間引いておこう。


「アイル。お願いがあるの。イーストドカーケの先にある森でワイルドラビットが大量発生する時期だと思うの。ヨシュアとともにちょっと狩ってきてほしいの。確かワイルドラビットの皮はピンク色で女性に人気だからできれば皮を回収してほしいの」


 そう言えば、このワイルドラビットの皮で出来たアイテムは夏には不人気だけれど冬になると結構人気商品なのだ。もふもふの帽子にコートが売れるのだ。


「皮はどうすればいいですか?」


「上等なものはレイリアとカチュアに献上ね。冬になったらユーラシア王国から来ている彼女たちにもプレゼントしましょう。そうね、アンネにも上げましょう。みんな同じがいいでしょうし。残りの一部は領内で使い後はクルル商会経由で販売してもらいましょ」


 友情エンドの条件の一つだ。全員同じワイルドラビットの商品を手にすることだ。本当ならば主人公が夏休みの間に刈り取ってプレゼントするのだが、私が主人公の変わりをしたって問題ないでしょ。


 主人公がこのドカーケですることを先にしてしまえばいいのだ。それはドカーケのためにもなる。


「後はそうね、ロッテンを呼んで。もうキンダーガーデンもできているのだから手が空いているでしょう。後はマナナンガルも呼んでちょうだい」


 ロッテンとマナナンガルがやってきた。


「キールお嬢様。なんでしょうか?」

「書類整理にも飽きてきたのじゃ。何か面白いことをさせるがよい」


 屯田兵のおかげで結構ドカーケの周囲の森も開拓されてきている。小さい村というか集落もできはじめているのだ。


 どうやら、行き場の無かった貴族の3男とか4男が結構流入しているのだ。


「マナナンガルは土魔法も使えるわよね」

「当たり前だ。どの属性魔法も使えるぞ」


 マナナンガルは胸を張ってそう言って来た。


「ならば、お願いがあるの。カシャーク領との境に川があるじゃない。堤防を作ってほしいのよ。後は河原で少しキャンプができるような場所を作ってほしいのよ。後はちょっとこういう建物を作りたいの。できればドカーケの街すべてに作りたい。ちょっと街から離れた山間につくりたいのよね」


 夏と言えば河原で泳ぐというイベントもあった。場所はドカーケじゃなかったけれど、場所がないなら作っちゃえばいいのだ。


 それに河原への道は前にハッサムが作ってくれたのがあるか。ということなら、マナナンガルのスキルならすぐ終わってしまう。


 おそらく週1回メリドがやってきて手伝うだろうからだ。だから追加でお願いをした。私この世界にきて不思議とないので作りたいって思っていたのよね。後でマナナンガルには説明をしよう。夏祭りと言えば石段と神社でしょう。


「ロッテンはその堤防付近にロッジを作ってほしいの。人手は使っていいからね。夏までに完成させて」


 そう言うとロッテンが青い顔になった。


「夏までってほとんど時間がないですよ」


「大丈夫でしょ。少し前までキンダーガーデンや工場を建設していた人たちの手が空いているでしょう。その人たちを使って。仕事が終わって一休みしているかもしれないけれど、そう言う人たちを遊ばせているだけのゆとりはドカーケにはないのよ」


 人手があるのはわかっている。ただ、一仕事終わったら少し休みを取りたがる人が多いのだ。


「スティーブ。そう言えばノースドカーケのノーフォーク農法はかなり安定してきていると聞いているの。ロイとルースを戻してもらって。後の者たちは西と東に振り分けて領民に説明をするように」


 どんどんと指示を出していく。その様子を見ていてアイルが「無茶振りばっかりだ。だが、いつものキール様が戻ってきた」と言って来た。どういうことよ。


「アン、いるかしら?夏に向けてイベントをするわ。夏祭りというものを実施したいの。そうね。今から手書きで服のデザインをするから、こういうものを作るのを考えて。あ、アイル。討伐に行く前にデザインに追加案を出してから行ってね」


 夏祭りと言えば浴衣だ。後は出店も出させよう。イベント盛りだくさんにしてリア充を爆発させてやろう。それに、アイルはなんだかんだ言ってヨシュアと仲がよいんだよね。


 いいかげん、このタイミングでこの二人が付き合えばいいのにとか思っている。


「ユーフィリア。夏祭りのイベントの調整をしてほしいの。行うのはセントラルドカーケだけだと後でクレームが来そうだから。ウルグ商会と一緒に企画してほしいの。後、出して欲しい新しい食事もあるの」


 そう言った瞬間にアイルの目が輝いた。いや、そんなに輝いてもおいしいものじゃない。作って欲しいのは焼きそばにベビーカステラ、わたあめだ。作りは複雑でないからすぐにできるはずだ。


「アイルが早く戻って来たら試作品を食べられるわよ。ロッテンもマナナンガルもよ。試作品が食べたければ早く動いてね」


 そう言ったら、すでに浴衣のデザインに追加をしたものを渡してこう言って来た。


「なるはやで戻ってきます。ヨシュア。行くわよ」


 ヨシュアが苦笑いをしながらついて行った。これで大丈夫。夏に向けて動き出した。小細工とか、相手がどう動かくかなんて考えるのは面倒だ。


 やるなら私が楽しめる状況にしたい。そうだよね。私はいつだって自分が楽しめる環境を目指していたんだから。


 アイルは速攻で帰ってきたし、河原の整備も恐ろしいくらい早く完成した。皆そんなに新製品を食べたかったんだ。ちなみに、射的と輪投げを作ったらなぜか皆盛り上がっていた。


「これは少し改良すれば戦場でも使えるかもしれないな」


 いや、おじい様。なんでここに居るんですか?


「面白そうなことをしていると聞いたからじゃよ。夏祭りとか楽しそうだな」


 すでに櫓も完成している。後は夏を待つだけだ。その間、アンネの攻略について私は関与しなかった。だが、夏休みにナッカ達が帰ってきてこんな状況になっているなんて思ってもみなかった。


 いや、確かにスウには色々とお願いをはじめにしたわよ。でも、こんな形になるなんて思ってもみなかったのよ。ええ、本当よ。


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