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~家族との会話~

~家族との会話~


 このロンベルト王国は領主制だ。王直轄の王都以外は各領主が治めている。領土といっても様々だ。


 ロンベルト王国一番の穀倉地帯を治めているのが、悪役令嬢のレイリアの実家であるカルディア領だ。


 ここは王都から南に位置していて気候も穏やか。そして、その南にある港町と王都を繋ぐ中継地点でもある。はっきりいってむちゃくちゃいい土地である。


 レイリアの父アーデルハイド・レン・フォルエ・カルディアはこの国の宰相だ。


 だとしたら誰が領土を治めているのかというとレイリアの祖父ガストン・ルン・フォルエ・カルディアが治めている。


 ではドカーケ領はどうかというと確かに私の祖父ランベル・テル・ドカーケが治めている。


 けれど、ドカーケ領はロンベルト王国の北西に位置していて、平地も少なく冬は雪で覆われるし、特に名産もない。


 父親であるリック・テリ・ドカーケは要職についているわけではないから収穫のある秋前には領土に戻れるのだ。というか、少ない収穫量だが、収穫をする人手もまたいないのだ。そして、収穫が終わると冬籠りの準備がある。


 雪が降り積もる期間に移動はできない。そう、秋から春にかけて父親はドカーケ領にいるのだ。


 だから要職につくことができない。これは西と東との差はあるがアイルのいるシンフォニア領も同じようなものだ。


 ただ、シンフォニア領はまだ他国との国交が若干だがある。 ドカーケ領土も確かに他国と隣接はしている。


 岩しかない険しい山にレベルの高いモンスターがいる山脈。ちなみに山脈の中央に火山がある。その火山の向こうにベルフェール帝国があるのだ。


 ベルフェール帝国に行くには山にいる強いモンスターを倒さないといけないし、火山には火竜もいる。


 ちなみに、この火竜は神の使いでもある。この「剣と魔法のストーレンラブ」はシリーズが複数出ているが火竜が出て来るのはシーズン3だ。


 火竜と交渉をしてベルフェール帝国と国交を開けるようになるのだけれど、武力がほぼMaxじゃないと火竜に会いにいけないのだ。


その前に岩しかないエリアに一つ街をつくるというイベントもある。これは初期に行っていないと火竜イベントに間に合わないのだ。


 ただ、街をつくるといっても、そのきっかけのイベントをこなせば勝手に街が発展してくれる。


 ドカーケ領のことを思えばすぐにでも実施したいけれど、このイベントって今行ってもうまくいくのかな?まあ、機会があったら試してみよう。ってか、ゲームだと勝手に街が発展してくれたけれど実際はそんな簡単じゃないよね。


 もう一つユーラシア王国という国も接していると言ってもいいが、これまた不毛の大地を越えないといけないのだ。実際は交易なんかできないので単に接しているだけだ。


 閑話休題。話しが脱線しちゃった。


 ドカーケ領の冬は寒い。そして、寒いのには理由が2つある。この火竜が本来の場所にいないためだ。そしてもう一つ。手前の山には冬将軍がいることも理由の一つだ。


 この冬将軍は討伐対象でもあるが、むちゃくちゃ強い。日本の武士みたいなカッコをしていて、居合切りとかしてくる。レベルが低いと初撃で終了してしまうのだ。今の私ではその近くに行くことすらできないけどね。


 そんなことを馬車に乗りながら思い出していた。この石畳に赤レンガの街並みを見ながらだ。まるでヨーロッパに旅行に行った気分だ。


 キールの記憶もある。この道を曲がればもうすぐ、王都にあるドカーケ家につく。資金は苦しくても貴族としての誇りを維持する。それが父リックの考えだ。


 正直、貴族の矜持は私にはわからない。屋敷は広いけれど手入れがすべて行き届いていないし、メイドも執事も他家と比べるとすくない。まあ、そう思うとアイルのとこよりはまだましなのだろう。


 あそこは炊事などの家事は家族で行っているし、服は姉妹で協力して着せあっているし、服の修繕も自分たちでしているのだ。ちなみに、アイルの妹はスウ・シンフォニアという。シーズン2で出て来るのだ。


 シーズン2ではアイルはルー王子と婚約をしてスウは主人公のお助けキャラとして登場する。でも、この世界はアイルとルー王子は結ばれなかった。


 ルー王子は攻略の難しさから他の攻略対象と同時並行ができない。というか、他の攻略対象はルー王子より先に落とさないといけないからだ。


 もう一人隠れキャラがいるけれど、そのキャラを攻略するのはルー王子より難しい。ちなみに、私の推しキャラで、このシリーズを通しての人気キャラだ。まぁ、封印されている人だからその封印を解かないといけないのだけれど、ステータスがほぼMaxじゃないと封印が解除できない。


 レベル1で主人公の1/10のステータスの私にはもう関係のない話しだ。でも、いつか会えたらいいな。エンデュミオン様。


 そう思っていたら馬車が止まった。そして、ゆっくり扉が開く。


「お嬢様着きました」

「ありがとう、荷物は私の部屋までお願いします」


 私はそう言ってゆっくり馬車を降りる。こういう事はお願いをしないといけない。自分でやってはいけない。貴族のマナーだ。


 意味がわからないが、一介の男爵家令嬢、しかも罪人扱いの私が異を唱えていいわけがない。郷に入れば郷に従えというやつだ。まあ、といってもそこまで荷物がないけれどね。


 屋敷を見る。庭こそ他家に比べると狭いが屋敷自体はある程度の大きさだ。


 おじいちゃんの時代ドカーケは名家だったらしい。その名残だ。


 確かモンスター討伐でかなりの武勲を上げたそうなんだ。あのおじいちゃんがだ。結構有名らしい。劇場でその時の武勇伝も上演されているし、本にもなっている。


 でも、身近で見ているとその逸話は盛りに盛られたものだとしか思えない。美談だなんて思えないからだ。まあ、どっちでもいい話しだ。


 屋敷に入るとお母様が待っていた。あれ、おかしい。なんでお父様までいるのだろう。


「おお、戻って来たか。大変だったな」


 お父様がそう言ってくれる。


「すみません。退学になってしまって」


 そう言って頭を下げる。


「それはもうどうでもいいことなのだよ。話しは聞いている。ルーファス王子の勘違いだということもな。だが、一旦王族が発言したものを取り下げることはできない。だから、色々と温情をくださったのだ」


 そう言われて首をかしげた。あのノートが証拠になったはずなのに。


 あのノートには主人公が暗躍したことが書かれているはず。それが広められてバッドエンディングになるのだ。


 確かあのバッドエンディングは結構ひどい。家が取り壊され僻地に侍女として飛ばされるのだ。しかも隷属の首輪付きという。


 隷属の首輪は魔法具だ。つけると主人の不利益になることはできなくなる。主人に対して反逆の意思ありと判断されると首輪が締まるのだ。


 また、主人と契約をすると主人が生殺与奪を握る。重犯罪者や捕虜に付けられるのだ。


 ちなみに、隷属には二つある。一つは犯罪奴隷。こちらは解放されることはない。もう一つは借金奴隷だ。


 これは働きながらお金を稼げれば奴隷から解放される。けれど、奴隷にまともな給金を渡している人は少ない。どちらにしてもなってしまえば抜け出せないものだ。それが奴隷であり、隷属というシステムだ。


 そして、そこまでの縛りがあるはずのイベントのキーアイテムであるあのノートを見ても私が脅えなかったかというと、ノート自体は断罪イベントで相手側が出して来てその場で読まれるからだ。


 アイルの筆跡をまねたもの。誰が書いたのかはゲームでは説明が無かったけれど、そういうのが得意な取り巻きがいるのだろうと思った。多分そういうスキルがあるんだろう。詳しくはわからない。


 遠い目をしながらそう思っていたら衝撃が顔にやってきた。


「キールちゃん、大変だったわよね」


 そう言ってお母様に抱きしめられた。お母様は結構喜怒哀楽が激しい人だ。貴族というルールを結構無視したがる人なのだ。人間味があって私は好きだけれど。そのたわわな胸が私の顔に埋められている。ってか、窒息しそう。


 ちなみに、ドカーケ家の血筋はお母様でお父様は婿入りだ。お母様に一目ぼれをして結婚をしたのだそうだ。普通は血筋などで結婚を選ぶのだが、お父様はそれを一切無視したのだ。といっても、侯爵家の3男だから自由だったからだろう。


「ううん、大丈夫よ」


 私はお母様を抱きしめ返した。


 確かにそんなにひどい目に合っていない。まあ、顔は床に押し付けられたけれど別に怪我したわけじゃない。顔とドレスは汚れたけれどね。


「頑張ったのはキールだからな。だが、私だけ今年は領に戻れないからそのつもりで居てくれ」


 お父様がそう言っていたので不思議に思った。


「どうかしたの?」

「ああ、まだ聞いていないのね」


 お母様の強烈なハグから解放された。お母様は結構弾力がある体形をしている。私と違って。


 私はどうやらお母様の遺伝子を受け継がなかったみたいだ。すらっとしたと言えば聞こえがいいが私はあまり出るところが出ていないのだ。


 多分、これから成長するはず。いや成長しろ。


 お母様が優しい口調でこう言ってきた。


「まあ、キールには悪いけれど、今回の事はキール以外にはいいことだらけなの。まず、納税が3年間免除になったのよ」


 うん、それ知っている。というか、私が交渉したしね。


「それに、お父様が出世したのよ」

「そうだとも。今回取り壊しになった家があってだな。その分の仕事の一部を受け継ぐことになったんだ」


 取り壊しになった家?はて?そんなイベントあったかしら?


「後は当家に配慮される奴隷を2名いただけるのだよ。一人は犯罪奴隷で、もう一人は借金奴隷だ。まあ、食事代は必要だが、給金は別に不要らしい。我が領はいつだって人手不足だ。奴隷2名なんて労働力としてかなり助かる。本当にありがたいことだ」


 お父様はそう言って笑っている。まあ、確かに労働力は大切だ。


 特に収穫時期は本当に大変なのだ。


「でも、キール。あなたは違うの。これから冬前にかけての卒業シーズンの社交界に出られないし」


 それは大丈夫です。というか社交界って疲れるから嫌だったんだよね。爵位が上の人に挨拶をしないといけないし、踊りに誘われたら相手の爵位が上だとどんな相手でも絶対に踊らないといけないし。特に脂ぎったおっさんとかまじ辛い。べたべた体触られるし。


 夜会は壁際に料理があるけれど、食べることもあまりできないし。まあ、あんまりおいしくないけれどね。


 日本の、それも現代の料理の味を知っている私からしたらこの世界の食事は食べられないことはないレベルだ。


 基本的に調味料が少ないのだ。塩味とかトマトケチャップとかだ。ちなみにトマトはソフィアの所の名産です。うらやましいです。はい。


 でも、食べられるものは食べておきたい。けれど、社交界って目の前に料理があるのに食べられないのだから。


「それに、退学となったから婚約も破棄されてしまったしね」


 そう言えば思い出した。私にも婚約者がいたんだ。確かチャロモ男爵の二男のはず。顔が思い出せない。まあ、どうでもいいか。破棄されたんだしね。


「それに、領主代行を命じられたからしばらく呼ばれない限り王都に来ることも許されないの」


 それもどうでもいい。キールとしての記憶はあるけれど、今の私にはこの王都は息がつまりそうでしかない。


「お母様。私は別にかまいませんわ。領内が少しでも良くなるのなら」


 私がそういうとお母様は大きく目を見開いてこう言ってきた。


「結婚できなくなるかもしれないのよ」


 結婚かぁ。まあ、前世でも結婚していなかったし。というか、森林保全活動とか農村支援とかどちらかというと都心にいなくなった私は彼氏にもふられたのだ。


 仕事と俺とどっちが大事なんだよ。


 とか、意味わからないこと言われたっけ。「仕事です」と言ってみたら見事に振られた。


「私には領民がいますから」


 これ言ってみたかったセリフだ。確か悪役令嬢に転生して領土を盛り上げた話しがあったけれど、こういうセリフを言っていたはずだ。あこがれでもある。


「まあ、キール。貴女って子は。私はもう何も言いません。貴女の好きなようにやりなさい。現地にはスティーブが居るからつかってね」


 そう言われて思い出した。スティーブはオールバックで冷血漢の執事だ。仕事は出来るのだが血が通っていないのだ。


「温情なんて何の役にも立ちません。秩序こそ正義で全てです」


 そう言っていたな。まあ、苦手だけれど向き合わないといけない相手だ。


「後は弟のナッカもいるし。あ、でもナッカは来年学園ね」


 ナッカ。実はこの子は次のシーズンで出て来る。トラブルメーカーとしてだ。そのトラブルが原因でドカーケ家は潰される。ドカーケ領の更に北、何もない場所を守護するように言われるのだ。


 身分違いの女性に恋をしてストーカーまがいのことをするのだ。あんまりどうでもいいイベントだったからちゃんと覚えていない。攻略にそこまで関係ないイベントだ。確か王族への信愛度があがるイベントのはず。


 シーズン2でルー王子は断罪イベントで出て来る。その横にいるのは通常モードだとアイルだ。


 だが、全クリアをしたらエキストラモードが出て来る。これは「剣と魔法のストーレンラブ」のシーズン1が難しすぎてクレームが出て、それ以降通常モードどエキストラモードに別れたのだ。


 ちなみに、エキストラモードでは全部アイルの変わりがレイリアなのだ。つまり、これからの世界はエキストラモードと思えば展開はある程度読める。


 読めるけれど、本当にひどいのだ。一つのミスが命取り。それがエキストラモード。レイリアが鬼過ぎるのだ。


 だから王族への信愛度を上げないといけないイベントも何種類かあった。


 けれど、愚弟のイベントは本当にクリアが難しい。噂ではクリアすると「調教」というスキルが手に入るらしい。意味不明だ。そして、このイベントがなぜ難しいかと言うと愚弟の行動がランダムなのだ。


 どうにかしないといけないけれど、とりあえず先送りだ。まだ愚弟が学園に入学するのに時間がある。


 とりあえず私はそれよりも先に領主代行として働かないといけない。愚弟の相手は後からでもなんとかなる。そう思っていたら館が騒がしくなった。


「旦那様、お客様です」


 メイドが走ってやってきた。


「一体誰が来たって言うんだ。そんなにあわてて」


「それが、レイリア・ルン・フォルデ・カルディア様が公爵代理で来られたと」


 本日2回目のレイリアとの邂逅だ。絶対にいい事ないと思った。


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