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~盗賊団の噂~

~盗賊団の噂~


「そう言えば、フィーバルとロッテンは活躍しているの?」


 カチュアに言われて思い出した。そう言えば、スティーブに手が足りないと言われたからこの二人を下に付けたのだった。


 スティーブは5つのドカーケの街の代官代理でもある。というか、私も見ているけれどやることが多すぎるのだ。


 というわけで、この二人はスティーブが教育をしてくれている。あれ?そう言えば何か気を付けないといけないと思っていたはずだけれどなんだったかな?


 フィーバルは若いけれど顔立ちが整っている男性だ。ちょっと巻き毛の赤髪を気にしているがそれがまたアクセントになってちょうどいいのだ。


 ロッテンはそばかすがちょっと残っているけれど活発でかわいらしい女の子だ。髪は三つ編みにしてきれいにまとめている。聞くと結構な剛毛なので編み込まないと大変らしい。


 二人はセントラルドカーゲで作業をしている。といっても、スティーブが忙しい時に代理でお願いをしたり、各方面の報告をまとめたりしてもらっている。


 そう、私は一大プロジェクトを伝えたからだ。戸籍を作りたいのだ。大まかなものでいいのだけれど、誰がどこにいて、どういう事をしているのかをまとめられるといいと思ったからだ。


 時間はかかるけれど、冬の間に衛兵の皆さんに協力してもらいながら進めているのだ。登録した際のメリットとして露店市場というかフードコートのようになっているあの場所の食事券というものを配布することにしたのだ。


 ウルグ商会のセアドはかなり動いてくれて今ではテーブルの数も多くなった。はじめはテントに覆われているだけだったたけれど、今では一角が一つの建物のようになっている。柱と屋根はあるけれど壁がない。本当に思っていた感じのフードコートになってくれたのだ。


 しかも、最近はクレープも提供しだしている。アイルがあのフードコートの相談役に任命されているらしい。アイルの試食でOKが出ないと出店できないというらしい。


 なんだかおいしそうに食べ物を食べているアイルはすぐに想像できた。


「その『ふーどこーと』というシステムは面白そうね。レイリアに伝えたらカルディア領でも取り入れたって」


 カチュアが教えてくれた。カチュアもあのフードコートを気に入ってくれた一人だ。今ではドカーケ以外でも似たような取り組みが進んできている。どうもセアドがかなり頑張っているようなのだ。


 ちなみに、セアドとの交渉をここ最近私は行っていない。フィーバルに任せているのだ。私は結果を聞くだけ。というか、スティーブにもっと面白い取り組みを考えろと言われている。そして、取り組みの王都への申請書などの手続きに追われているのだ。


 もちろん、色々な最終決裁は私なのでその確認も行っている。


「失礼します」


 扉を開けて入ってきたのはフィーバルとロッテンだ。横にスティーブもいる。というか、なんかロッテンはフィーバルじゃなくスティーブばかり見ているような気がする。


 あれ?フィーバルとロッテンって恋人同士だったはずなのに、一体何があったんだろう?スティーブを呼んだのはほかでもない。カチュアから聞いた話しを共有したかったからだ。しかも当事者の口からだ。そう、ドカーケ領に来る際に盗賊団に出会ったとカチュアが言ったからだ。


 王都からドカーケ領に来る道は一つしかない。いや、迂回をすれば南にあるクロービア領を経由してくることも可能ではある。けれど、大半は王都から西に延びる街道を進むのが普通だ。


「それで、どのあたりで襲われたのですか?」

「そうね、峡谷に差し掛かるあたりかしら」


 ドカーケ領の領境には川が流れている。この川を使った水車を作ろうと思ったのだが、谷になっている所が多い、一部は森の中腹過ぎるためモンスターが多く危険ということで諦めたのだ。


 治水も行ないといけないのだが、近くに人が住んでいないため、後にまわしている。というか、開拓すれば絶対にいいということは解っているけれどそこまで手が回らないのだ。


「あのあたりですか。まあ、隠れる場所もないこともないですが不自然ですね」


 スティーブは地図を出しながら話している。地図は機密事項だ。そのため、詳細なものではないが、大体の場所がわかればいいのだ。


「護衛に雇ったものがいたおかげで何とかなったけれど、今後は気を付けた方がいいと思うわ。フィーバル、ロッテン。あなたたちも気を付けてね」


 この二人はカチュアから預かっているだけだ。私の部下ではない。だから彼らに何かあったら私の責任になる。だからこそ、この場に呼んだのだ。


「でも、対策ってどうするのがいいのかしら。いっそこの場所に衛兵の詰所とか何かを作って監視でもさせようかしら?」


 ドカーケ領の境ではあるが、特段何かがあるわけじゃない。その境界から半日もすればサウスドカーケに着くのだ。だが、半日。何かがあって駆けつけてもどうしようもない距離でもある。


「それはやめておいた方がいいわよ」


 カチュアにそう言われた。私がきょとんとしているからか呆れながらこう言って来た。


「まずね、ここはドカーケ領ではあるけれど、すぐそばは隣のカシャーク子爵の領地よ。そんなところに衛兵を置いたら攻め込まれるのでは誤解をされる可能性があるわ。それでなくてもキールには反意ありと噂があるからね」


 誰がそんな噂流しているの。事実無根よ。名誉棄損よ。訴えたい。ってか、この世界にそういう法律がないんだった。残念。


「それに隣があのカシャーク子爵なのでしょ。あそこの領地はいい噂は聞かないわね。だから変に刺激するのはやめた方がいいわよ」


 衛兵を置く、詰所を作るとかは良くないみたいだ。でも、何もしないというわけにもいかない。なかなかに難しい事だ。


「スティーブ。どうするのがいいと思う?」


「まずは情報収集からすべきだと思います。適任者はそうですね、衛兵のヨシュア、アイルの二人が良いかと思います」


 ヨシュアってこの前の雪合戦の時に活躍した人の一人よね。


「情報は大事だけれど、現地では休憩する場所もないわよ。どうするつもりなの?非効率過ぎない?」


 カチュアが意見を出してくれる。


「いや、大丈夫だ。1日だけで十分だからだ。調べる場所はもう決まっている。ここだ」


 スティーブが指刺した場所はカシャーク領の最西の街、ウエストカシャークだった。


「しばらくここを拠点としてもらいます。といっても二人だけだと怪しまれるので申し訳ないですが、フィーバルとロッテンにも同行してもらいます。護衛は追加として傭兵を雇い入れます。クルル侯爵子女。ご許可をいただきたいです」


 ここまで言い切るのだ。何か根拠があるのだろう。


「わかりました。いいでしょう」


「それと、少しレッドアイ商会の協力を得たいのですが、ご助力いただけますか?」


 なんでレッドアイ商会の話しが出て来るのだろう?私はまだわかっていなかった。スティーブを敵にまわす怖さを。



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