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~モンスター大量発生の目的は?~

~モンスター大量発生の目的は?~


 ゲームでは、序盤から王都近郊でモンスターの大量発生イベントは起きる。ただ、このイベントは時期によって変化するのだ。


 まず、ゲーム開始時だとゴブリンが出現する噂話しが流れる。その後、ゴブリンウォーリア、アーチャー、ソーサラーなどを見かけた噂話が流れるのだ。


 ここで放置をすると次はホブゴブリンかゴブリンジェネラルのどちらかの出現したという噂が流れる。


 ここからの展開が早い。ゴブリンジェネラルを見かけて少しすると、ゴブリンキングとクイーンを見かけたという噂が流れる。


 この噂が分岐点なのだ。この時までにレベルを30まで上げておかないと次にゴブリンエンペラーが出現するのだ。


 ゴブリンエンペラーが出現すると王都は封鎖され、学園は3か月休学となる。つまり、3か月攻略もできないし、ステータスあげもイベントも行えないのだ。つまりペナルティを受けるのだ。


 この3か月が結構きつい。だから、早い段階からレベルを上げておかないと取り返しがつかない状況になるのだ。


 だが、それもゲームだからの話しだ。討伐隊にお父様が参加したのだ。一人だけでもすべてのゴブリンを倒しきるだけの力がある。ゴブリンエンペラーは普通にゲームしていた場合倒す事は出来ないが、3か月拘束されることの抜け道として自らゴブリンエンペラーを倒すというルートがある。


 ただ、勝利しても誰からも認められないため、行う者はいない。私も攻略サイトと動画で見たことがあるだけだ。動画見た感じだとお父様なら瞬殺できるくらいの相手だ。


 だからお父様が行方不明になったという話しを聞いた時、何かの戦略だと思ったのだ。それに、同行しているのはスキル『絶体絶命』を持っているギリークも居るのだ。


 大丈夫。そう思っていたからこそ、エンデュミオン様が言った言葉にびっくりしたのだ。


「そうだね、これはちょっと面倒なことになった。さて、どうするのが一番いいだろう?とりあえず、現場に行こうか」



 というわけで現場に来ました。というか、エンデュミオン様に言われて上空から見ています。


「透明魔法を使っているから大丈夫だよ」


 いえ、そこは心配していません。ただ、お茶を飲んでいたそのままのメンバーで空に居るので何名かが慌てているだけです。


 まず、カーペットも敷いている状態だし、テーブルに椅子もある。座ってお茶を飲んでいるのは私、エンデュミオン様、マナナンガルだ。


 私の後ろにはユーフィリアが立っている。リッカは慣れていないから腰を抜かして座り込んでいる。アンも居るけれど、アンは周囲を見て楽しんでいる。


 そして、眼下に広がるのは王都近郊にある森のはずなのだが、大きな真っ黒な穴が開いているのだ。大きさは野球場10個分くらいと言う感じかな?


 お父様が行方不明になった報告をしたのはギリークだった。豆粒大の大きさだけれど助かっているのが解った。


「エンデュミオン様。この黒い穴は一体何ですか?」


 上空を飛んでいるからわかるのだ。単なるクレータではないことが。空間ごとえぐられてそこが見えない状態なのだ。


「そうだね、世界に開いた穴でも言うべきだろうね。これは別の世界線が影響している。多分、僕たちの敵は一人じゃないね。見えない敵がいると思った方がいい」


 エンデュミオン様がそう言ったが、私は一人だけ思い当たる相手がいる。会った瞬間から違和感しかなかったものがいる。


『ラヴィロール・デ・ラスティア』


 通称R2と言われている彼のステータスはまったく見れなかったのだ。だからこそ、警戒をしている。ユキシールと違ってR2は違う存在だ。なんというかこの世界とは違う存在なのがわかる。


 そしてこんな通常と違うことをしてくるなんて思い当たる相手は一人しかいない。だが、一体なんのためにこんな穴をあけたのだろう。


「ねえ、エンデュミオン様。この穴の奥はどうなっているのか確認することはできます?」


「そうだね。中に入るのはやめておいた方がいいよ。別の空間というか、世界に転移するだろうから。そして、この中に居たであろう者達も転移をしているようなんだよね。これはちょっと困ったことだ。ただでさえこの世界は魂の質量が合わなくなってきているのに」


 ちょっと待って。情報が多すぎるけれど、一番葉この中にいたものが別の世界に転移しているんだよね。ってことはお父様は?転移したの?


「そうだね。別世界に転移したみたいなんだよ。死んだわけじゃないし、あっちの世界とはどこかで繋がってしまっているから何とかなると思うけれど、この場所はこの世界からあっちの世界には行けるけれど、逆は出来ないみたいだからね。上から下に落ちるような感覚だよ。本当に困った事だ」


 ちょっと、突込みが追いつかない。でも、わかったことがある。もう一つの世界があると言うことは、あの『ラヴィロール・デ・ラスティア』はこの世界の住人ではないのだと何となく思った。


 確証はない。けれど、あの違和感がそう考えるとしっくりくる。


「ねえ、どこか反対に『あっち』の世界から『この』世界にくる門というか入り口があってもおかしくないの?」


 私がそう言うとエンデュミオン様はこう言って来た。


「そうだね。こんなエネルギーのバランスを崩壊させるようなものがあるからこの1000年くらい魂の質量があわなかったと考えると納得できるよ。ただ、ここのように見た感じでわかるような穴をあけているとは思えないけれどね。とりあえず、この穴はこれから塞ぐよ。あ、そうそう。ちょっとこの辺りにいるモンスターを儀式として使うから。ちょうどいいくらいの数なんだよね。まるで用意されたかのような」


 何か引っかかる。どうしてこの時期にモンスターが大量発生したのだ。通常ルートではありえない時期だし、そもそもナッカ達は早い段階でゴブリンたちを狩りつくしていたはずだ。


 ならば、この大量発生には意味があるはず。どうして、『ちょうどいいくらいの数』なんだろう?


「エンデュミオン様。少し待ってくれませんか?その穴を塞いだ場合何か問題が起きたりしませんか?」


 何かあるはずだ。


「そうだね。時空の狭間を塞ぐのだから色々な影響は起きるだろうが、このままだと、落ちて吸い込まれるものが出てしまう。塞ぐのが一番だろう」


 ちょっと待って。影響が起きるのよね?どんな?


「エンデュミオン様。影響ってどういう影響が起きると思われますか?この状況。何か用意されつくされているように感じます。モンスターは討伐してもらって構いませんが、あの穴を塞ぐのに使うのには辞めた方がいいと思います」


 私がそう言うとエンデュミオン様は何かを考え始めた。横にいるマナナンガルが口を開く。


「そうじゃな。影響は予想できぬ。こんなこと初めてじゃからな。だが、あの穴をどうするつもりじゃ?」


 そうなんだよね。結構な大きさの穴だ。近くに行ったら誰かが落ちそうだ。そうか、近づかなければいいんだ。


「穴の周囲の土を盛り上げて登れないようにするのはどうでしょうか?人も魔物も近づけないようにすればいいのでは?」


 私がそう言うとエンデュミオン様が指を鳴らした。土が隆起し、硬化したのがわかる。そして、穴の上を網状の何かで囲っている。


「ああ、あれはアラクネの糸だよ。触れたものは何であれ動けなくなる。ただ、この場所にアラクネを置くわけにはいかないから、蜘蛛の巣を張り巡らせただけのようになっているよ。これだと落ちるものもいないだろう」


 起きたことから考えると、何かまだ細工があるような気がする。でもわからなさすぎるのだ。とりあえず、この辺りの魔力をキャンセルできるようにできないかとエンデュミオン様に伝えた所、マナナンガルとエンデュミオン様が二人がかりで実施してくれた。


「ほう、なるほど」

「これは、危なかったな」


 二人が魔力キャンセルを実施してそう言いだした。


「どうしたんですか?」

「ああ、あの穴に魔力を流し込んでいたらこの一体10キロくらいは爆発したようだね。そうなったら王都は壊滅。そして、その地下に封印されているこの世界の魔王が目を醒ましただろうね」


 ちょっと一大事じゃん。回避できてよかった。


「それで、今はどういう状況なの?」

「ああ、魔力を流しても爆発はしない。ただ、この付近は立ち入り禁止にした方がいいだろうね。まだまだ得体のしれない魔法が絡み合っているからね。何が原因で影響するかわからない。そういう状況さ」


 仕方が無い。レイリアにお願いをしてどうにかしてもらおう。でも、王都近くにこんな爆弾を抱えることになるなんて。


 これは『ユキシール』が考えたことだとは思えない。ならば『R2』か。彼の狙いは何なんだろう?


 ただ、接触をしたいとは思えなかった。私の勘が言う。出来るだけ距離を取るべき相手だと。


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