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~ゲームの仕様を実践してみた~

~ゲームの仕様を実践してみた~


 レイリアに言われた。9歳の誕生日。それはお披露目会でもある。昨日、9歳を迎えた、ハイネル・ディ・カリオニア・ファー・ロンベルトを祝う会は社交界でのお披露目をするまで情報は貴族社会にほとんど出ていなかった。そしてその場でユキシール・ネン・フォン・ルークセニヤとの婚約発表となった。


 この情報を知っているのはごく一部の者に限られており、サプライズ発表であった。


「ねえ、どうしてドカーケ領にいるキールが、ハイネル王子が卵アレルギーだということを知っていたのかしら?そして、ルークセニヤ家にお詫びをしたい旨が手紙に書かれているのかしら?」


 レイリアは私がホワイトウイングで送った手紙を出してそう言って来た。


「アレルギーなどの個人情報は秘匿情報だ。それも、王族となるとそう言う情報が広まると命の危険性もある。つまり、知られてはいけない情報なの。マヨネーズの販売を担っているクルル商会としてこの手紙の裏どりをせざるを得なかった。結果は問題を起こさずに終結できた。クルル商会としては助かったのも事実。だが、情報の出所を聞かれ私はキールから届けられた手紙を提出した。悪く思わないで欲しいの」


 カチュアがそう言って来た。まあ、そうなるよね。


「それで、どこでこの情報を知ったのだ?」


 言えるはずがない。攻略サイトで知りました。それに『剣と魔法のストーレンラブ3』でハイネル王子を攻略する上で当人から卵アレルギーについては教えてくれるのだ。


 確かに、信愛度がかなり上がってからじゃないとこの『卵アレルギー』についての情報を教えてくれないのかって疑問はあったが、暗殺とかそういう事が絡んでいたからなのだ。


 困った。本当に困った。自分が書いた手紙のせいで私が王都に召喚されたことがわかったからだ。


「そ、そのちょっとした伝手から情報を得ました」


 うん、言えない。あ、そう言えばゲームで秘匿情報を得る先があったのを思い出した。確かすっごい怪しい動きをすると教えてくれるんだ。どのシーズンでも出て来るお助けキャラだ。


「え~と、その人は『ラジエル様』って言って、この人からその情報がもらえるのよ」


 ラジエルは大天使だ。そして手に『ラジエルの書』を持っている。


 つまりこの世界のなんでも知っている人だ。条件さえ合えば実は簡単に会える天使でもある。ちなみに、1回の情報提供については儀式をすれば教えてくれる。内容は相手や周囲の信愛度だったり、これから起こるイベントフラグだったりだ、


 ラジエルに聞かないとルー王子の攻略は結構難しい。他にそういう攻略キャラはいる。


「はぁ、そんなおとぎ話しを信じるとお思いですか?」


「ならば実演します。庭園に来てください。お母様。用意をしてほしいものがあります。パン、葡萄酒、金貨6枚、台座、ろうそく2本と燭台をお願いします」


 庭園に行き、二本の木を選ぶ。まず二本の木の中央に六芒星を描き、頂点に金貨をすべて表にして並べる。


 魔方陣の上に台座を置く。台座には燭台にろうそくを刺し火をつける。燭台は中央。そして、パン、葡萄酒を並べる。


 台座の前に跪き祈りラジエルに祈りをささげる。そして立ち上がり台座から後ろに離れ右側の木を3周回る。


 次に左側の木を3周回る。最後に右から左に八の字に動き再度台座の前に跪きラジエルに祈りを捧げる。


 ゲームと同じだ。すぐに半透明の白いローブに白い翼、白髪の長髪の女性、そう天使ラジエルが出てきた。よかった。ゲームと一緒だった。出て来なかったらどうしようかと焦ったよ。


「神の子よ。確定した未来の何を求める?」


「今の私の危機の乗り越え方をお教えください」


 教えてもらえることは決まっている。『危機』『信愛と成功』『これから起こるイベント』の3つだけだ。


「すでに確定している未来。そなたの今の危機を救うのはそこにいる2人の娘ともう一人、ルーファス・ディ・カリオニア・ファー・ロンベルトの助力が必要だ。それではさらばだ」


 ラジエルはそう言うとそのまま消えていった。


「一体今のは?」


 振り返るとレイリアもカチュアも茫然としていた。お父様とお母様は膝を地面に付き祈っていた。


「ラジエル様よ。大天使の。今の方法を行えば多分レイリアもカチュアもラジエル様から確定した未来をおしえていただけるわ。ただ、何でも教えてくれるわけじゃなし、制限も多いの。そして、確定していない未来でも聞いてしまったら、その瞬間から抗うことができない確定した未来になってしまうから」


 台座を見るとすでにパンと葡萄酒と金貨6枚はなくなっている。残っているのは台座と燭台だけが。ろうそくはすでに溶け切っている。


「こ、これはその誰でもラジエル様の声を聞けるというのですか?」


「え~と、1日1回だけ。生娘でないと聞くことはできないはずです。たまたま私は古文書でこの方法を知り、試した所できちゃいました。ただ、100%成功するというものでもありません。なので少しだけ運要素もあります」


 まあ、古文書というか攻略サイトだけれどね。このラジエル様のお助けはノーヒントなのよね。なんでこんなの試した人がいるんだろうって思った。


 他にも結構ある。学園の教室を手順通り入って、出てを繰り返すと出会える天使もいるが、私はすでに学生でないため学園に立ち入ることができないけれど。


 こういうなんかよくわからない隠し要素が多いのも『剣と魔法のストーレンラブ』の醍醐味でもある。


「こんなのを見せられたら信じるしかないわね。これって、私もできるのよね?」


 レイリアがそう言っている。


「試されますか?」


 この後、レイリアとカチュアが同じことをしてラジエル様の降臨を体験した。ただ、聞きたい質問に対しての答えがあやふやなものも多い。それは質問した内容が確定した未来ではないためだからだ。


「これは予想以上の成果だわ。レイリア。ルーファス王子についてはお願いできるかしら。私はこれからお父様にお願いをしてきます。今回の強硬派を取り崩してもらいます。それではこちらで失礼しますね」


 そう言ってカチュアは側仕えに伝えた後すぐに馬車に乗って出て行った。


「そうね、先ほどのラジエル様はルーファス王子の手助けが必要と言っていたわ。これから王城に向かいます。キールの王城への登城は明日の午後一番になるわ。そこで先ほどと同じくラジエル様の降臨を行ってもらいます。必要なものは事前に準備して侍女に持たせておくことね。明日は少し早く登城して一緒に王城でお昼を食べましょう。場所はルーファス王子の部屋。私とカチュアとあなたの4人でね。それでは」


 そう言ってレイリアも出て行った。


「キールちゃん、よかった。本当によかった」


 そう言ってお母様に抱きしめられた。


「そうだぞ。王城から呼び出しを受けすぐにレイリア様とカチュア様が我が家を尋ねられると聞いた時は心臓が止まるかと思ったわ」


 お父様も緊張が解けたのか座り込んでいる。


「でも、まだ終わったわけじゃありません」


 そう、私は知っているラジエルの確定した未来のお告げは結構な確立で覆されるのだ。今時点では確定した未来だが、何か別の要因が加わるとすぐに未来は変わってしまうのだ。


 本当にひどい仕様だ。でも、この世界であんなに簡単にラジエルの降臨が出来てしまうとすごい頻度でラジエルは現世に降臨するんじゃないかなって思った。


 実際、1か月後にラジエル自ら降臨方法の変更をするとお告げを行う。それまでの1か月、王都中でラジエル降臨が流行したのはまた別の話しである。


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