チュートリアル終了
さて、男は目の前にある木を見つめる。
男「木… 力を試すには丁度いいか」
男はまず、軽く手のひらを木に添える。
男「これぐらいでは、何もないな…じゃあ」
男は少しだけ力を込めて木に掌底を打ち込む。
すると目の前の木は粉々に崩れた…
男「ふむ… これは…ちょっと力加減を学ばないと危ないな」
男はそのまま、近くにある木という木を攻撃し、力加減を覚えた。
また、手刀の切れ味も試したところ、すんなりと切断することに成功した。
男「切れ味もやばいな… これ…この世界の人間の強度がいかほどか分からないけど…強度次第では、簡単に命を奪ってしまいかねない…なにか良いスキルでもないのか…」
男は加護の一覧をめくる。
男「手加減のスキルがあるじゃないか… けどなぁ…手加減ってどれぐらいのものなのだろうか…これも試さないといけないか… まあ、まずはこの世界の人間の強度をある程度把握しないことには手加減もくそもないな…もしかしたら、オレは雑魚で、他の人間はもっと強い可能性もある」
男「そうだな…町へ行ったら、色々な道具を売っているところへ行ってみよう。 ホームセンターみたいなところがあればいいな… そこの道具を見れば、大体どの程度人間に力があるか見当がつく」
男「そうと決まれば…」
男は木を一本手刀で切断する。
そして、先ほど確認した街に向けて、木を放り投げると、ジャンプしてそれに飛び乗った。
男はまっすぐ街に向かう。
男「…さて、どこに停まろうかな… ①門の前 ②公園 ③城っぽい建物 …①はないな…
警戒される可能性が高そうだし… いきなり生き物に会いたくない… ③もやっぱないよなぁ… ということは適当な広場にするか…」
男は広場の真上で、木を砕き、下に降りた。
男(…ふむ、着地成功かな… 周りに人もいなさそうだし… 見たところ、町並みはよくRPGのゲームで見るような感じだな。
中央に城、その周りに行政系の建物… そこから同心円状に商店や住宅地がある。 田畑もあるな… 門がなかなかでかいことから、何かから護っているようだ…魔物か…それとも同種の戦争か…
建物の大きさ的に…生き物の大きさはオレのいたところと変わりなさそうだ。
あとは…姿形だな…どんな姿の生き物がここに住んでいるのだろうか?
オレも手足が人間と同じというのは分かってるが、顔はイマイチ分からない… 頬はシュッとしてるし、鼻も高い… 以前の世界の基準的には多分、ハンサムだと思うが…この世界の美的基準も分からんし… イマイチ何とも言えんな… まあ、とりあえず、人間に会ってみるか)
男はぶらりと中心に向かって歩いて行く。
商店街のような場所につくと、たくさんの人間のような姿かたちの動くものがいた。
男(人間… っぽいな… というか、ほぼ同じだな)
男は進む。
人間のような者たちは、男の方を見るとぴたりと動きを止めてじっと見つめた。
男(なんだ…視線を感じるぞ… もしかして、オレ何かおかしいのか? いやでも、目の前の…人…人間だろうな… 人間は以前の世界の人間と変わりない…オレが以前の世界の姿と変わりないなら…そんな目で見られるのはおかしい)
男はそのまま、商店街のような道の中心を歩く。
男が通り過ぎた後、ヒソヒソと声が聞こえる。
男は耳を澄ませた。
ヒソヒソ「ねぇねぇ… 今の人めっちゃカッコいいんだけど」
ヒソヒソ「だよね… ヤバいわ」
ヒソヒソ「私もそう思うわぁん」
男(言葉も分かるな… しかし、カッコイイ? カッコイイだと? オレが? いやいやそんなことはない…以前の世界でもたまに言われたが…カッコイイと言われながらもそんなにモテなかったぞ。どうせ、オレの後ろにいた人のことだろうな)
男は振り向くがそれらしいものはいない。
男(オレェ? カッコイイ? そうかなぁ… まあ、カッコイイに越したことはないから…喜んでおこう…だが、接客業でよく使われるお世辞の可能性も高い…あまり自惚れ無いようにしよう)
男は耳を澄ませながら、商店街を進んでいく。
老若男女問わずカッコイイと言われるので、その点については自信を持つことができた。
また客と商人とのやり取りにも目を向けていた。
以前いた世界同様金銭と物を交換していた。
物も見覚えのある果実が並んでいる。
男(さっきの森もそうだが…基本的に以前の世界と変わりないな… 助かるわー)
その時、男の背後から何かが迫る。
男はそれを躱した。
男はその何かを睨み付ける。
その先には、一人の人間がいた。
以前の世界で言う女性のようなフォルムである。
男「何だ?」
男は最もシンプルな問いかけをした。
その人間は手に鋭利なものを持っている。
男(形状から、剣で間違いないだろうな… オレを狙っているのか? それとも誰でも良いのか?
どういう目的だ)
人間はなおも男に向かう。
男はその斬撃を回避しながら、何かよい方法がないか考える。
男(…手荒かもしれないが…)
男は剣を両手で挟む。
人間は剣を引き抜こうとするが、微動だにしない。
男「すまんが…眠ってくれ」
男は加護の一つ、強制命令を発動した。
人間はその場に崩れ落ちた。
男「やれやれ… だから、人間は信用できないんだ」
男は目の前の人間の手足を縛ってから、担ぎ上げて、人気のないところへ向かった。