お昼の秘事。3
「(私は空気、私は空気)……て、リアム、お前よくこんな中で甘い物食えるな」
「だってココ、スイーツ店ですよ。甘いに決まってるじゃないですか」
「それはそうだが、気にならないのか? アレ」
「んー、まぁお嬢様は無自覚でしょうね。
食い意地はってる方なので。殿下は確信犯ですけど、一体誰にアピールしたいんだか」
「そんな分析は要らん。
はあ、早くトマス殿の料理が食べたい。
今日の夕食のメニューは何だ? 」
「ラグーとだけ。
……ライアン様に関係ありますか? 」
「ん? だって、夕食お邪魔するだろう。
シルヴィア嬢を家まで送る時は、いつもそうじゃないか」
「(マジで食費請求してやろうか)いや、当たり前みたいに言わないで下さい。
貴方も大概ですね」
入店時の事もあって、あまり長居は出来なかったけど、美味しかったから満足!
終始視線は突き刺さってたけど。
奥の方に見知った顔もあったし……
次、お茶会があったら問い詰められそうね。
「さて、次は何処へ行く? 」
「そうですね。記念に何か買いましょうか」
「宝石でも見る? 」
バカめっ、学生がデートで宝石買う訳なかろうが!
まさかお相手は貴婦人なのっ⁉︎
それはそれで萌えますけども、ええ。
「いえ、例えば…そう。
広場の露店で売っているような物をお揃いで買うのです」
「(ピクッ)お揃い 」
「はい、お揃いです! 」
エリオットが名前も知らない美人女性とのお揃いアイテムを大事にしているかと思うと………
滾りますわぁっっっ
「うん、良いね。とても良い。
さっ、早く行こう。どんな物が似合うかな。
出来れば分かりやすい物が良いんだけど」
「(殿下っ、良かったですねっ! ほろり)」
「(あーぁ、婚約者の道突き進んでますよ、お嬢様)」
と、いうわけで買いました。
おそろいのブレスレット。
エリオットには最後まで指輪にしようとごねられたけど、断固拒否した。
指輪はマズイって。意味が変わってくるもの。
私とじゃダメよ。
渋々だけど、少し気恥ずかしそうにブレスレットをはめた彼は、鼻血ものだった。
誰かカメラをここにっ。
「指輪が良かったけど…シルヴィア、毎日つけてね。ブレスレット」
「え、冗談でなく? 」
「そのために買ったんでしょ、お揃いで」
合ってるんだけど、そうじゃない。
これはあくまで予習だから。本番の相手と身につけなきゃ。
私達がやったら順調な婚約をアピールしてる様なものだからね。
「つけるよね、シルヴィア。
断るって事は、まさかやましい事でもあるの」
「あるわけないじゃないですかっ‼︎ 」
「良かった。
でも心配だから、毎日確認しようかな」
「……ご自由に」
もしかして友達とお揃いが嬉しくてたまらないのかしら。
だとしたら、断るのも可哀想だし…。
ん゛ー、ブレスレットだからいっか。
考えるのやめよう。
日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうかな。
あ、もちろんエリオット達は、我が家の夕食に舌鼓を打ってから帰りました。
ライアン様なんて、護衛を放棄して我先にと使用人達とご飯食べやがりましたからね。
それでいいのか、近衛騎士。
――――――――――――
――――――
―――
いつも通り、学園の前で馬車を降りて歩くと、騒めきが広がった。
???
おかしいわ、私の顔に何かついてるのかしら。
「ねえ、リアム。今日の私、変? 」
「いいえ」
「何か、見られてない? 」
「いつもの事ですが……たしかに、今日は一段と酷いかもしれません。どうにかして下さい」
まって、私のセリフなのでは?
「ムリ」
リアムと別れ、教室に入るとバッと視線を浴びた。
え、こわっ。
「エリザベス様、アンネ様、おはようございます」
「「おはようございます。シルヴィア様」」
「あの、今日何か皆さん変じゃありませんこと?
やたら見られていると言いますか…私の自意識過剰かしら」
「いえ、しばらくはシルヴィア様の話題で持ち切りだと思いますわ」
私の、話題?
やだ。変な噂話とかだったらどうしよう。
「そうですよ、シルヴィア様!
私、早くご本人に聞きたくてウズウズしてましたのっ」
「ま、まあ、アンネ様。何かしら」
「昨日のデートで『パルフェ』というお店に行かれましたかっ? 」
「ええ、でも何故」
―――ザワザワ
「まあ、では本当ですの?
エリオット殿下とシルヴィア様が、人目も憚らずスイーツを食べさせあっていた、というのは」
んんっ⁉︎
ドユコト、ナニソレ。
「違いますわ!
ただひと口分けて頂いただけです」
「ご自身で、ひと口よそいましたの?」
「それは…」
―――ザワッッッ
「素敵ですわっ!
本当に仲が良くていらっしゃるのね!
感動しましたわ、シルヴィア様」
マイエンジェルよ、どこに感動したと言うんだい。
貴方の感性についていけない私を許して。
「え〜と、おほほ?
でも一体誰が」
「あら、どなたかとお会いしたんじゃありませんの? 」
「いえ、特には。
あっ、でもお店にグラバー子爵夫人がいらっしゃいました」
「それですわ」
「どういう事です、エリザベス様」
「グラバー子爵家のご令嬢なら、在籍されてますわ。
きっと夫人からお聞きになったのでしょう」
失念してたっ。
2年生にいたわ!
ていうか、広まるスピード速すぎない?
昨日の今日よ。しかも朝一。
「困りましたわね。
そんなに噂になってしまうだなんて」
「……今日は、テラスで食べない方が良いかもしれませんね。私達で少し他学年の反応も探って来ますから、シルヴィア様は生徒会室か、何処か別の場所でお昼をとられてはいかがです」
「そう致しますわ。
エリザベス様、ありがとうございます」
「お任せ下さい(失礼な事を仰る方がいたら、叩きのめしてやりますわ)」
あら、何か不穏な気配が。
いやエリザベスに限ってないわ。
私ったら、疲れてるのね。
そして、教室を移動する度に視線を集め、逃げる様に実験棟へ。
私のライフはもうゼロよ。
「やはり、ココでしたか。お嬢様」
「リッ、リアムぅ〜!
貴方なら分かってくれると信じていたわぁ、ぐす」
この1週間通い続けたかいがあったわ。
まさかこんな形で役に立つとは。
「ちょ、抱きつかないで下さい。
誰かに見られたらどうするんですか///」
「大丈夫だもん。誰も来ないわ。マリンちゃんだっていないもの。うぅっ、マリンちゃん、かむばぁーっく! 」
「(まったく…困った人だっ)」
リアムに抱きつき、頭をうりうりと擦り付ける。
この際、髪が乱れようがどうでもいい。
私の精神安定剤を摂取しなければならないのよ!
しばらく、リアムはされるがままになりつつ、背中をポンポンと優しく慰めてくれた。
「ふぅ、少し落ち着いてきたわ。
ありがとう」
「今日だけですから、ね゛っ⁈ 」
どうしたの?
そんな真っ青な顔して――
「ねえ、これって、浮気されたのかな。僕」
はわわっ、振り向いたら殺される!
「とりあえず、離れようか。
シルヴィアはこっちに来なさい」
ゔっ、ヤダ。リアム離れて行かないでっ。魔王の側になんか行きたくないぃー!
――ぎゅうっ
「おっ、お嬢様、離して下さい。
いったん落ち着きましょう」
「(ムリムリムリ)」
――グイッ
「へっ? 」
えっ、ナニコレ。
エリオットに抱きしめられてる?
「ダメだよ、シルヴィア。
君は僕の婚約者なんだから。浮気は許さないよ」
「あ、の、浮気なんてしてませんよ?
ただリアムに慰めてもらっていただけで…」
「どうして慰めるのに抱き合う必要があるの。
それに、他の男に慰められているのも気に入らない」
「え、だってリアムですよ? 」
執事のリアムよ?
主人を主人とも思わない、生意気リアムよっ?
小さい時から一緒じゃない。
「リアムでもだよ。というか、リアムの方が危険だと思うけどね(僕のシルヴィアに気安く触らないで欲しいな、執事如きが)」
――ぎゅうぅっ
「エリオット様、くるしい…」
「お嬢様が苦しがってます(早く離せ、猫被り野郎)」
「おや、婚約者同士が、抱きしめ合うのは当然だろう?
ねぇ、シルヴィア」
「え、いやそれはちょっと」
「――だ、そうですが。殿下」
「・・・シルヴィア、少し黙ってようか」
あ、はい。すみません。
――ぐぅっ
「/// 」
「「・・・・・。」」
おっ、お昼まだなんだもんー!
感想、ブクマ&評価有難うございます‼︎
ネット小説大賞のコンテスト企画にて、読者様にこの作品をピックアップして頂けたようです。
本当に有難うございます!羊
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