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9歳 vs 7歳(25歳)。1



1日が終わるのって早い。

まだ感覚も上手く掴めないから、子供の体力が分からないし、口もまわしにくいわ。

お嬢様言葉は7年間のスチュワートとマナーの先生の教育で、みっちり身に付いているようだけど、少し不安。


7時過ぎか、、

そろそろマリエラが起こしに来るかしら。


――――コンコン



「お嬢様、マリエラです。

朝食の準備が整いました」



「入って」



毎日誰かが起こしに来てくれるなんて新鮮。

何も感じなかった昨日までの自分が怖いわ。

前世の私なんて、寝坊しない為に

スマホのアラームとデジタル時計の2台体制だったのよ?それも5分おきのスヌーズ設定。


そういえば使用人達って、どうやって起きてるの?

アラーム時計があるのかしら?

だったら私もほしいわ。



「すっかり、顔色が良くなられましたね。

ご気分はいかがですか?

シェフが今日の朝食はスペシャルメニューだって言ってましたよっ」



髪をとかしながら、部屋着に着替えさせてくれる。

すごい。早技。



「一晩寝たらすっかり良くなったわ。

みんなにもお礼を言わなくちゃねっ。

スペシャルメニューって何かしらっ?楽しみ!」



シェフの料理がとっても美味しいの。

食文化は日本の方が断然優れているし、

メニューもいっぱいあるけど、きっとウチのシェフは天才なんだわ。

少ない調理法の中で、毎日飽きないように工夫してくれている。

せっかくだから、日本の料理も作ってもらえるか聞いてみよっと。





――――――――――――

――――――

―――


食堂に着くと、お父様とお母様がもう座っていた。



「お待たせしました。お父様、お母様、

昨日はご心配をおかけして申し訳ありません。

元気になりましたわ」



軽くお辞儀をしながら、席に着く。

お腹すいた〜



「それは何よりだ。

さっ、いっぱいお食べ」



「はい!」



と、言われても私の前には空の食器だけ。

2人の前には、サラダとベーコン、オムレツ、パンにスープが並んでいる。


あのベーコンっぽいの、ベーコンであってるのかな。

何肉なんだろう。

あとパンはちょっと残念。子供には少し硬すぎるわ。



「お待たせ致しました!

今日はシルヴィーお嬢様だけの特別プレートですよ!」



「シェフっ!」



料理長のトマスがワゴンを引きながら入ってきた。

さっきマリエラが言ってたスペシャルメニューって

ベーコンとオムレツじゃなくて、

私だけのメニューだったのね!

嬉しいっ、たった半日だけど快気祝い的なやつかしら。



「わぁっ、かわいい!」



くまさんのパンケーキに、付け合わせのフルーツサラダ。スープの野菜もくまさん型になっている。



「これで仕上げですっ。離れて下さいね、《ファイア》」



湯気がたっているミニ鍋から、パンケーキにアツアツのリンゴソース?をかける。

そしてシェフが《ファイア》と唱えるとソースが一瞬燃えた。

………っっ魔法でフランベしたのねっ!素敵っ!

私も使えるかしら?

ああっ、これぞファンタジー‼︎



「どうぞ、お召し上がり下さい。

熱いので気を付けて下さいね?」



「ありがとうっ!

ふぅ、ふぅ、ふー。っっっ、、美味しいーーっ‼︎」



シェフ、いやトマス様!あなたは神かっ!

口いっぱいに頬張って、思わず足がジタバタと揺れてしまう。

はぁっ、幸せ。




「し、シルヴィー?」



「はい?―――――ぁ゛、これは…そのっ」



しまったー!

シルヴィアは絶対こんな事しない。

ちゃんと小さく一口サイズに切るし、口いっぱいに頬張るなんてありえない。

極め付けは叫びながらの足ジタバタ。


ど、どうしよう。

コレが前世なら25歳の社会人が子供っぽい事をして、みっともない。と、恥をかくだけだけど、今は違う。


お父様と使用人達は目を点にしてガン見してくるし、

お母様は、ただでさえ大きい瞳をさらに開けてパチクリさせている。

冷や汗がっ。いたるところから冷や汗が出てきてるわっ。



「そうですか、そうですか!

うんうん、おかわりも作れますからね」



トマスだけが、嬉しそうに頷いている。

私の行動は特に気にならなかったようだ。

トマス、、、やはりあなたは神かっ!



「ごめんなさいっ。…その、昨夜は何も食べずに寝てしまったから、お腹が空いてたみたい!

それに、くまさんのパンケーキなんて初めてだから、嬉しくて………」



何だこの言い訳は。

もっと上手いこと言いなさいよ、でも7歳なんてこんなもんか。

いや、シルヴィアを普通の7歳と一緒にしちゃダメか。



「ま、まぁ、そうよねっ。

夜何も食べなければ、さぞお腹が空いた事でしょう。

本当にシルヴィーが元気そうで良かったわ。

冷めないうちにいただいちゃいなさいっ。

トマス。私も今度、いただきたいわ」



女神ーーー!

お母様の圧倒的女神さよ。



「かしこまりました、奥様。

よろしければ旦那様も ご一緒にお作り致しますよ」



ないす、ナイスよ、シェフ!



「ゔ、、ん。そうだね、今度クリスティアと一緒にもらおうかな。

トマス、有難う。シルヴィーもとても喜んでいる」



「勿体ないお言葉でございます。

では厨房に戻りますので、何かございましたら」



「何か」で、私にウィンクしながら戻って行ったよ…

ちょっと今は、おかわり出来る雰囲気じゃないかな。

ごめん、シェフ。



「そういえば、お父様。

今日、殿下は何時頃にいらっしゃるのですか?」



れっつ話題転換。



「ん?ああ、お昼過ぎから夕方にかけてだそうだ。

お見舞いに来て下るんだから、お礼を言うんだよ」



「もちろんですわ」



早くてお昼過ぎか…

あまり時間がないわね、プランを練らなくちゃ。



「あと、アレンが今晩か明日の朝に帰ってくるそうだよ」



「っ本当ですのっ⁉︎」



お兄様が帰って来る!

ベーヴェルン王立学園 中等部に通うアレン兄様は、

わざわざ宿舎を選んで通学している。

この間の春休みに会ったきりだから嬉しいわっ。

美形遺伝子をバッチリ引き継いだ、成長期のザ・美少年よ!



「ハハッ、昨日シルヴィーの事で遣いをやったら、

すぐ帰る!と返事が来たよ。

アレン(あれ)は妹が大好きだからねえ」



「お兄様はシスコンではありませんっ」



顔が良くて、頭が良くて、優しくて、必ずお土産を買って来てくれて、

まさに理想の兄!



「しすこん?とは何だね?」



ありゃ、シスコンは通じないのか。



「えぇっと、妹が大好きすぎる兄の事ですわ。

ええ、誰かがそのような事を。お、お茶会の時だったかしら?おほほ」



「ふむ、そんな言葉聞いた事がないが…

貴婦人の流行り言葉かなんかだろうか?

まあ〜だとすると、あっているね。アレンは少し度が過ぎる」



きっ、貴婦人っwww

ごめんなさい、お父様。変な言葉をお教えして。

不思議そうな表情も様になってますわ。



「そうでしょうか…?でも早くお会いしたいわ!


あっ、そうだ。殿下の()()()()()って、他に誰がいらっしゃいましたの?」



「!……なんだ、知っていたのか。

本当にシルヴィーは聡い子だね、お父様は心配だよ。

んー、メディス公爵家の長女の娘とユースルン侯爵家の長男の娘、ランド伯爵家の姉妹、――アストゥリアス伯爵家の孫だったかな。()()()知らない」



アストゥリアス伯爵家って、お母様の!

という事は、従姉妹のアリア姉様ね。

その5名が()()だと判断した人って事か。



「そうでしたか…ありがとうございます」



「構わないよ。でも、それを知って()()()()()()()?」



何故かしら、まさか見透かされてるっ?



「いいえ、ただ()()()()()()()ですの」



「そう、なら良いよ。

それを食べたら殿下をお迎えする準備をしなさい。

私は仕事へ行って来る」



「はい、お父様。

あとでお母様と一緒にお見送りに行きますね」



必殺!愛娘のお父様大好きアピール!



「そうか、そうか。ではあとでね。


……………スチュワート、今日は遅めに出る(小声)」



「……かしこまりました。しかし今日は早めに出るご予定だったのでは?」



「急がせてシルヴィーが間に合わなかったら、どうする。悲しむではないかっ(小声)」



「っ!それはいけませんな、かしこまりました。

御者には少し待つよう、言っておきます(小声)」



「ああ、頼む(小声)」





ふふっ、お父様ったら。

食堂を後にした彼等を見て、お母様と私が笑いをこぼす。



「あらあら、旦那様ったら。うふふっ」



――――娘、大勝利っ






シスコンについてですが、

本作においては、いわゆる萌え用語として使用しています。

本来の意味のシスターコンプレックスとは違いますのでご注意下さいませ。

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