ジーモとランドルフ。3
注;茶番回です。
「シルヴィア様は貴方の為を思って、次の授業に誘われたのですよ? それを馬鹿にしているですって!
失礼にも程がありますわ。今すぐ撤回しなさい!」
トゥンク――…
エリザベスっ、
あのエリザベスが私の為に怒ってくれたのっ?
なのに何故私を断罪するのよー‼︎
婚約破棄イベントでも守って欲しかったわ……
いや、落ち着くのよ、シルヴィア。
エリザベスは私の名誉の為に怒ってくれているのに、余計な事考えちゃダメ!
でも困ったわね。
ぶっちゃけロイドは間違ってないから、とばっちり――――
ではないな。うん。
授業サボる方が悪いもの。
じゃあロイドは助けなくて良いわね。
よし、エリザベスを宥めてサクッと授業に行こう。
「あの、エリザ――」
「何でアンタにそんな事言われなきゃいけないのー?
オレはシルに興味があるだけで、シルの金魚の糞に興味はないんだけど」
遮るどころか、何言ってくれちゃってるのー‼︎ この子‼︎
「(ピク)金魚の…糞? この私が? 」
めっちゃ震えてるよ、エリザベス。
相当怒ってらっしゃる!
金魚の糞はない、さすがにない。
それは三下のモブキャラを表す言葉よ。
彼女はモブじゃなくて、メイン側の人だから!
「いけないっ!エリザベス様、ロイド様、あと5分で授業が始まりますわ。今なら走れば間に合います」
「走る? 」
「ええ、マナーとしてはありえませんが、私達は学生です。優先されるべきは学ぶ事。
大丈夫です。先生には私からお詫び致しますわ。
皆様が咎められる事も、後ろ指さされる事もありません(たぶん)」
「まあ、さすがシルヴィア様ですわ。
ですがシルヴィア様にそんなマネはさせられません!
私がつい感情的になってしまったばかり…」
えっ、目尻に光るものが。
もしかして泣いていらっしゃる⁉︎
やっぱ、走るのNG?
淑女としてアウトだった系?
泣くほど嫌だったのっ?
「エ、エ、エリザベス様っ。何を仰いますの!
いつも冷静でいらっしゃるのに、私の為に怒って下さったのでしょう? 」
「ですがっ、ぐす。私のせいでシルヴィア様が謝るだなんて!」
そこっ?
涙のポイントそこだったの?
他人に責任を取らせるのが嫌なのね。
素晴らしいな、実はエリザベスが聖女なのではっ。
「ロイド様、申し訳ありませんが、アンネ様を連れて先に教室に行って下さる?
先生には、移動途中 エリザベス様が気分が悪くなられて、私が医務室に付き添っているとお伝え下さい」
「……何故、オレまで 」
「アンネ様1人に行かせるつもりですか。
ロイド様は殿方でしょう?
しっかり送り届けて、ついでに授業も受けて下さいませ」
「シルは来るの」
「ええ、もちろん途中から参加致しますわ。
私、学生ですので」
「はぁー、行くよ。何ぼーっとしてるの」
「えっ、あっはい!
シルヴィア様、エリザベス様、後ほどっ」
ふぅ。さて、どう慰めるべきか。
とりあえず医務室行こう。
「エリザベス様、落ち着かれました? 」
「ええ、ごめんなさい。結局シルヴィア様にご迷惑を」
普段プライド高くて高飛車なエリザベスが謝るなんて新鮮。
しかも、しゅんとしてる姿が胸キュンなんですが。
「まあ、迷惑だなんてとんでもない!(むしろ貴重な体験をありがとうございます)」
「シルヴィア様っ(ただ力になりたかっただけなのに、私ったら空回りばかり…)」
え゛ぇ、どうすれば良いの。
余計落ち込んで見えるんだけど。
全く悪くない彼女が嫌な思いをするのは良くないわ。
あ゛〜、私の心の声が漏れたばかりに……
本当にごめんなさい。
「私、嬉しかったですわ。
エリザベス様は本当に立派な方ですね。
私も見習わなければなりません(清い心って大事)」
「みっ! 見習うっ? 私をっ⁈ 」
「ええ」
「あっあ、あぅ」
あら顔が真っ赤っか。
「エリザベス様? 」
「っは、わっ、私! もう少しここで休んでいきますわ!
どうぞ授業にお戻りになって下さいましっ」
「…心配ですわ、私も一緒に」
「結構ですわ‼︎ 早く行って下さいましっ!」
「(おぉぅ)分かりましたわ。
ゆっくり休んで下さいね」
「(あぁっ‼︎ せっかくシルヴィア様が褒めて下さったのに!)」
きっと弱った姿を見せたくないのね。
さすがヒロインのライバル。悪役令嬢とは大違い。
――――――――――――
――――――
―――
「お嬢様、お迎えに上がりました(何もしてませんよね)」
リアムの笑顔が恐い。
「お嬢様?(まさかやったのか)」
「(すみません。間接的?にエリザベスを泣かせました)」
「ランチはどちらで召し上がりますか(説明しろ)」
「し、食堂? 」
「(あ゛? )食堂でございますか? 」
「ぃやっぱり、中庭で」
準備してくるから待ってろと言われ、大人しく教室で待つ私。
アンネ様と復活したエリザベスが一緒にと誘ってくれたけど、泣く泣くお断りしました。
リアムの視線が「やめろ」って言ってたのよ。
くそぅ、エンジェル達とのランチタイムがぁー。
「お待たせ致しました。参りましょう」
「――あの、リアム? 中庭はアッチよ」
「いいえ、コチラで合ってます」
……森だよ。
学舎の裏の森だよね。ココ。
「やあ、シルヴィア。授業お疲れ」
「………リアム? 」
「中庭で食べる用にと食堂へ行ったら、こうなりました」
食堂に行ったら、王子釣れるの。
スゴイネ、ウチノシツジ
「うん、樹々に囲まれて食べるというのも悪くないね」
「森ですから囲まれて当然ですわ、エリオット様」
「まあ、食べなよ。冷めちゃうし」
そのまま食べるかと思いきや、リアムの小言が始まりました。
一応 王子の前だけど気にならないようです。
強いな。
「もうその辺で良いんじゃないか、リアム」
「いえ、殿下。こういう事はしっかりしておかないと。
それにお嬢様は殿下の婚約者でもあるんですよ。
学園内の出来事はすぐまわるでしょうね」
「……シルヴィア、リアムの言う通りだ。
気を付けた方が良い、君は嫌でも目立つから」
「エリオット様はどちらの味方なんですか」
――ぎゅるるぅ
お昼、食べても良いかしら。
正座も疲れたわ。
「はぁ、食べても良いですよ。そんな瞳で見ないで下さい。
これはお嬢様の為を思ってなんですからね。
ほら、口開けて」
「あー、
もぐもぐ――――うん、美味しい」
「ん゛? ちょっと待とうか。
いつもそんな食べ方をしているのかな」
「いつもではありません。お嬢様がお腹が空いて限界の時だけです」
「もぐもぐ」
説明しながらも流れる手つきでバランス良く、口に運ばれる食べ物。
無駄にハイスペックだな、リアムよ。
「シルヴィア、今後は禁止だ。今から禁止だ。
自分で食べなさい。無理なら僕が食べさせるから」
「「いえいえ、エリオット様(殿下)にそんな事はさせられません」」
「リアム、君とは話し合う必要がありそうだ(彼女は僕の婚約者なんだが)」
「何をでしょうか(その前に俺のお嬢様です)」
ふむ。
エリオット×リアムだと思っていたけど、
リアム×エリオットもアリか。
主人には口が悪いハイスペック執事×腹黒王子。
良いわね。売れるわ。
うふ腐
「「シルヴィア(お嬢様)? 」」
「あら、ごめんなさい。どうぞ続けて」
あっ、エリオット見て思い出した。
放課後、生徒会室寄ってランドルフに様子聞かなきゃ。
オマケ(マナー授業)
「遅れて申し訳ありません」
「まあ、良いのよ。2人から話は聞いています(自らは学友に付き添い、他の生徒には授業が間に合うように配慮する。エレガントですわ)」
「(何かしら、この生暖かい眼差しは。
でも怒られなくてラッキー♪
とりあえず席に座ろうっと)」
こうして本人の知らぬ間にシルヴィアの信頼度はアップするのであった。




