前世は突然に。3
シルヴィア覚醒前(賢い7歳):ひらがな多め
シルヴィア覚醒後(中身25歳):口調も若干くだけ気味。
↑のイメージです。
ぱちっ―――
あれ、この天井は自分の部屋?
「お嬢様っ!目が覚めたのですかっ⁉︎」
マリエラが半泣きで私の顔をのぞき込んできた。
いったいどうしたの、そうぞうしい。
「マリエラ、少し静かにして」
頭に響くじゃない。
というか、こうとうぶが痛い。
イタ、ん?やだ、たんこぶができてるわ。
「良かったです、お嬢様!
すぐにお医者様を呼んで参りますねっ、
――――誰かレイブ先生を!お嬢様が目を覚まされましたわ!
―――旦那様っ、奥様!シルヴィア様がっ!」
マリエラのあわてぶりにもまさるスピードで
お父様とお母様、少し遅れてスチュワートがレイブ先生を連れて来た。
しかも、どうして皆んな不安そうな顔なの?
「シルヴィー!良かった、目が覚めたのかい?
お父様だよ、分かるか?」
たいへん、お父様がおかしくなってしまわれたわ。
「お、お父様、どうされましたの?
もちろん分かりますわよ?」
「ああっ、本当に良かった!
急に庭で倒れたと聞いて、私が倒れるかと思ったよ」
庭でたおれた?
私が?
おぼえがないわ……
「…私、いつたおれたの?」
「3時間くらい前よっ、まさかあなた記憶がっ!」
真っ青なお母様をレイブ先生がなだめる。
「奥様、おそらく記憶が混乱しているのでしょう。
――すみません、どなたかお茶を奥様とお嬢様に」
かしこまりましたっ!とマリエラがちゅうぼうへ駆けていく。
どうやら、とても心配させてしまったみたいね。
ん〜
たしかお庭でバラを見てたのよね……
あら?でも水やりは今朝したし、
私どうしてお庭なんかに?
うっ、頭が痛い。
「お嬢様、お茶をどうぞ。
奥様もお飲みになって下さいまし」
マリエラがお茶を持って戻ってきた。
良い香り。
「ふぅ、ふぅ。……こくん。
なんだか、落ち着くわ。ありがとう、マリエラ」
「いいえ、お嬢様。
私がご一緒しておけば、お嬢様の体調に気付けたかもしれないのに………申し訳ありません」
しゅん、と、まるで叱られた犬みたいに
落ち込んでる。
「ねぇ、私どうしてお庭に居たのかしら?」
不思議よね〜
「覚えていらっしゃらないのですか?
エリオット殿下にお嬢様がバラを選んで差し上げていたんですよ」
ん―――?
エリオット殿下?
まぁ、その方はどこからわいてきたの?
あら?何かしら、急に頭に映像が、、
すごい、美少年………あぁエリオット様ね。
………………………………………………………………………………腹黒?
「お嬢様?」
「エリオット殿下のお名前って、何だったかしら」
「もうっ!何を言ってらっしゃるんですかぁ?
エリオット・ファン・ベーヴェルン様ですよ」
「そうよ………そうだわ!」
思い出した!
氷の第1王子よ!7人の騎士の!
お客様が来るからと、朝からお粧ししたら
エリオットが来たのよ。
ああっ、どうして今まで気付かなかったのかしら!
ココはベーヴェルン王国、
そしてエリオットと私の婚約。
まんま、乙女ゲーム『ベーヴェルン王立学園〜光の聖女と7人の騎士〜』の世界じゃない‼︎
まさか私が悪役令嬢に転生してたなんてっ。
確か、前世の私が1番最後にプレイしてた乙女ゲームよね?
社会人3年目の実家暮らし、彼氏なし。だったからゲームにガッツリ課金したなぁ。
魅力度upの為に、イベント毎にガチャ回しまくってたし、アバターもすごい拘った気がする。
………っどうして、主人公じゃないのよーーー!
それがダメでもモブならまだ、ヒロインと攻略対象のスチルが楽しめたかもしれないけど、シルヴィアはないわ。
だって悪役令嬢だもの。しかも全ルートで。
7人中5人はバッドエンドでもトゥルーエンドでも殺され、残り2人でもボロ雑巾のように虐げられてポイっだわ。
まずいわ、とにかく現状打破しなきゃ。
いったん、整理が必要ね。
「先生、シルヴィーは大丈夫でしょうか?」
あっ、急に黙り込んだから余計心配させてしまったのね。
「ふむ。様子を見て、もし記憶が――
「先生、お父様。大丈夫ですわ。今ちょうど思い出していたところですの。ご心配をおかけして申し訳ありません」
わぁ、私のお父様イケメン!
艶のある銀髪はキラキラしていて綺麗だし、
アーモンド型の瞳はサファイア色に透き通ってる。
頭の回転も良いし、何よりお母様と娘を大事にしてくれている。
攻略対象達より魅力的だわ!
むしろ何故対象じゃないか不思議よ!
7年も娘やってるから、贔屓目がすごいのかしら?
次にお母様。
丸型の垂れ目でとにかく可愛らしい!
血統書付き小動物のようだわ。
柔らかそうなローズブロンドのウェービーヘアに、
透明感溢れる白肌。
腰もきゅっと締まっていて、……胸はCぐらいかしら?
庇護欲そそられるわ。
まぁ、必要ないんだけどね、、お母様、強いし。…腕っぷしも。
あと私付きのマリエラ。
まだ16歳だったかしら?
日本で言えば高校生くらいなのに、とてもしっかりしている。
私のお茶の好みや、お洋服の好み、体調の変化にだってすぐ気付いてくれるわ。
たまーに、おっちょこちょいなところがあるけど気にならない。
ブリュネットの髪を後ろでお団子にして、リボンで結んでいる。
ふふっ、このリボン、去年私がプレゼントしたの!
そういえば、ゲームにマリエラって出てたかしら?
シルヴィアのお付きは男の子だったような……
まあいいわ。
家令のスチュワートは50代だったっけ。
シルバーグレーが似合う男性って感じ。
いつもピシッとしていて、使用人には勿論、たまにお父様にも厳しい。
作法は厳しいけど、基本私には甘々だわ。
トミー爺と水やりしてると羨ましそうに見てくる事があるから、息抜きにガーデニングしたいのかな?
今度誘ってみようかしら。
「良いんだよ、シルヴィー。
今日はもうゆっくり休みなさい。
――――――あ、明日殿下がお見舞いに来て下さるそうだよ。良かったね」
笑顔が素敵っ、じゃなくて
えーーーっ‼︎
そんな、「あっそういえば」みたいな言い方しないでよっ。
まだ整理も出来てないのに、なんてはた迷惑な。
そもそも倒れた原因は、前世とシルヴィアで混乱したからであって、、これって王子のせいじゃない?
いや、でも待てよ。
そのおかげで思い出せたから、コレはこれで良い…のか?
むしろ感謝すべきだというの?
「じゃあ行くわね。何かあったらすぐ呼ぶのよ?」
「ありがとう、お母様、みんな」
お母様が最後に優しく頭を撫でてマリエラ以外出て行った。
「マリエラ、お茶美味しかったわ。もう一杯お願い出来る?あと、ペンと紙が欲しいの」
「かしこまりました、すぐご用意致しますわ」
ふぅ、今日はシルヴィアにとって間違いなく人生で1番濃い日だったはず。
そもそも前世思い出したって、どこのビックリ人間よ。
ラノベかっ。
―――いやゲームの世界だったわね。
〈ちょこっとプロフィール〉
シルヴィア・フォン・ヴェルトハイム(7)
→乙女ゲームの世界に転生した公爵令嬢。
前世は社会人3年目の25歳。
アレク・フォン・ヴェルトハイム(32)
→ベーヴェルン王国、ヴェルトハイム領を治める若き公爵。2年前に爵位を継いだ。20歳でクリスティアと政略結婚。
シルヴィア以外に息子がいる。
クリスティア・フォン・ヴェルトハイム(30)
→生家はアストゥリアス伯爵家。18歳でアレクと政略結婚。シルヴィア以外に息子がいる。