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シルヴィー化粧水と、それから。



お母様のネームバリューに頼るつもりが、王妃様とローレヌ公爵夫人(宰相のおくさま)が出てくるとは。

おかげで、とんとん拍子に化粧水ブランドを立ち上げる事が出来た。

商人ギルドに行って、ギルド証を作り、お店の登録まで終えてある。

私は座ってるだけで、全てスチュワートがしてくれたんだけどね。

日持ちするわけじゃないから、店舗は持たずに貴族中心にお母様を介して販売するつもり。

まとまった資金が出来たら、商品展開や店舗販売も考えていこう。

でも防腐剤なんて、エタノールしか代用出来ないよね。

そうすると肌が弱い人にはキツすぎる。

防腐剤になる植物とかないのかな?

それさえ出来れば、日持ちだけじゃなくて、蒸留水をブレンドする事だって可能だわ。



「お嬢様、瓶詰め終わりました」



「ありがとう、リアム」



まだ8歳だから、家から通う方向で行くと思ったのに、

彼は親元を離れて住み込みを選んだ。

小学校低学年で知らない人の家に住むって、すごい決断よね。マネ出来ないわ。

見習いを始めて3週間が経とうとしているけど、

私への接し方は硬いままで変わらない。

ビルクはあんなにフランクなのに、兄弟って言っても全然違うのねー。


商品については、

製造量を増やしていきたいから、化粧水は3ライン、6種にしようと思うの。

被験者……こほん。

感想をレポートしてくれたお母様とメイド達によると、センチフォリアローズ・カレンデュラ・ピオニーの3種が、使いやすくて良いらしい。


今後ローズの種類は増やしていきたいわね、

ダマスクローズとかブルガリアンローズとか。


ん〜、防腐剤どうしたものか。

5日じゃなくて、せめて2週間は欲しいな。

 

―――ちょい、ちょい



「あら、中に入って来ちゃったの?(コソッ)」



1人の精霊が私の腕をつついてきた。

1人で合ってるのかしら、1体? 1匹?

蒸留水飲みたいのかな。

「飲む?」と聞くと、パァッと表情を明るくさせて、

顔をぶんぶん振っている。可愛いわぁ〜  

ミルクパン型の軽量スプーンに入れてあげる。

最近分かった事なんだけど、このサイズが飲みやすいみたい。

ちびちびと飲み切ると、ローズマリーウォーターの瓶をぽんぽんと叩く。

ローズマリーが飲みたいのかと聞くとそうではないらしい。

「これまぜる〜、長持ちする!シルヴィア喜ぶ!」


盲点だった!

防腐剤がないからブレンドしちゃいけないと思ってたけど、ローズマリーが天然の防腐剤だったのね!



「ありがとう!

次に蒸留水を作る時は、好きな植物を持って来てちょうだい。お礼にプレゼントするわ」



「シルヴィアうれしぃ? 僕もうれしぃっ!」

ぴょんぴょん飛び跳ねながら、お庭へ帰って行く。

……性別、あったのね。精霊って。



これで使用期限の問題もクリア出来た!

あとは完成品を試してもらいつつ、2週間腐らないかの実験をすれば、いよいよ販売ね!



――――――――――――

――――――

―――


1ヵ月後。


無事2週間の実験をクリアし、みんなの肌の調子も良好。

予めお母様にお茶会やパーティーで宣伝してもらい、

完全受注生産50本限定で、販売する事になっている。


受付は今日の12時から領内にある、小さな別邸で行う。

遣いの人が来たら、お母様にもらった紹介者リストと照らし合わせて予約するシステムよ。

やり辛いけど、初めは肝心だもの。

私がする事は、公爵家がした事と捉えられる。

上流貴族が買えず、下級貴族しか買えませんでした。では済まされないわ。  

もちろん安定したら、領民達にも買えるようにするつもりよ。



商品リストはコレ。


全て100ml 3,000ベルン

〈センチフォリアローズ化粧水 Ⅰ 〉

さっぱりした使用感で、高い抗酸化力によるアンチエイジング効果と保湿。キメを整える効果が期待出来る。

成分;センチフォリアローズ水、ローズマリー水、ゼラニウム水


〈センチフォリアローズ化粧水 Ⅱ 〉

しっとりした使用感で、Ⅰ に比べ高保湿。

成分;センチフォリアローズ水、ローズマリー水、ゼラニウム水、アルガンオイル


〈カレンデュラ化粧水 Ⅰ 〉

さっぱりした使用感で、肌の修復力を高め、肌荒れに効果が期待出来る。

成分;カレンデュラ水、ローズマリー水、ホホバオイル


〈カレンデュラ化粧水 Ⅱ 〉

とろみのある使用感で、高保湿。

成分;カレンデュラ水、ローズマリー水、はちみつ、ホホバオイル


〈ピオニー化粧水 Ⅰ 〉

さっぱりとした使用感で、メラニンの生成を抑え、美白効果が期待出来る。

成分;ピオニー水、ローズマリー水、ホワイトアイリス水


〈ピオニー化粧水 Ⅱ 〉

しっとりした使用感で、Ⅰ に比べ高保湿。

成分;ピオニー水、ローズマリー水、ホワイトアイリス水、ホホバオイル


そしてブランド名は『シルヴィー化粧品』になった。


お母様が社交界で「シルヴィーの化粧水」がと触れ回り、エリオットが化粧水を「シルヴィアの」と王妃様に紹介したせいで、商品より、私の名前が先行してしまったからだ。

宣伝を頼む時に、商品名を決めておけば良かったわ。

もう遅いけど………



「お嬢様、そろそろお時間です」



「分かった、今行くわ。

リアムも今日は私の隣で計算よろしくね?」



「計算でしたら、お任せ下さい!」



11時すぎ。12時直前より30分前には着いておきたいから行かなきゃ。

メンバーは、商業ギルドからお手伝いに来てくれる

ロベルトさん(23)、マリエラ、リアム、ニーナ、私。


ロベルトさんは朝から前乗りしているらしい。


 


「あともう少しで着きますね……え。

――――お嬢様っ!大変です!」



「どうしたのマリエラ?」



「あの列ですよ!あの列の先って別邸ですよね⁈ 」


 

・・・・・なんじゃこりゃ


馬車から見える道は黒く埋め尽くされていた。



「リアム……あれは何かしら」



「馬車ですね、お嬢様」



ですよねー!

まさかアレ全部遣いの列? まだ40分も前よ!



「とりあえず、ここは通れないから裏道に回りましょう(落ち着くのよ、シルヴィア。私なら出来る)」



「(こんな光景を見ても動じないだなんてっ。

やっぱり貴族のお嬢様って凄いんだなぁっ)」 

「(さすがシルヴィアお嬢様!いつでも冷静でいらっしゃるわ!)」

「(もう、帰りたい。ニーナとリアムに任せて帰っても宜しいですか? お嬢様〜!)」



裏からそっと敷地に入ると、ロベルトさんが泣きながら走って来た。

ヤバっ。


「遅いじゃないですかー‼︎

酷いです!こんなに人が来るだなんて聞いてません!

応援が必要なレベルです!」



本当すみません。もっと言うと、頼りはアナタだけです。ロベルトさん。

商売に関して素人のメイド2人と子供2人なんで。

申し訳ありません!



「すみません、ロベルトさん。

私も驚いていたところなの。

まだあと30分はあるから、ギルドに応援をお願いするわ。御者に職員さんを連れて来るように頼んだから」



「ハアっ、困りましたねー。

救いなのは、この列が貴族でなく、貴族の遣いだと言う事ですね」



ねー、貴族が並んでいたらクレーム必須だもんね。

カーテンからそっと外を覗くと、先頭の馬車が目に入った。



「いかがなさいましたか?」



「見て、あの馬車。

造りは上等なのに、家紋が入ってないの」



怪しいわ。


ひとまず流れを最終確認して、受付準備を進める。

10分前か、まだギルドから応援来てないけど始めようかしら。列も増えちゃったし。



「少し早いけど、始めましょう。

ニーナは門を開けて、1台ずつ馬車をお通しして。

マリエラは遣いの方のご案内を。

ロベルトさん、リアム、私は受付。

さっ、行って(まずはあの怪しい馬車からね)」



「おっお嬢様っ?」



ワーォ。

マリエラが連れて来た、先頭の馬車の人は、マルニーさんだった。



「あの、何故こちらに?

しかも馬車まで分からないようにして」



「王妃様が確実に手に入れるようにと仰せでして、

馬車は王家の紋章が付いていると騒ぎになりますから」



あー、なる。

エリオットに言って下されば、普通にお渡しするのに。

律儀な方なのね、王妃様って。



「それはお気遣いありがとうございます。

王妃様のご希望は………〈ローズⅡ〉と〈ピオニーⅡ〉ですね。通常は3日後に取りに来て頂くのですが、エリオット様に預けますね(コソ)」



「おお!それは助かります。

王妃様も早く手に入って喜ぶ事でしょう(コソ)

お代の小銀貨6枚でございます」



「では、次の方――――」



50本の予約はあっという間に終わってしまった。 

ただ、馬車の列がまだ少し続いていたので、

次回分という事で予約を取って帰って頂いた。




3日後、化粧水を手に入れた貴婦人から、あっという間に広まり、『シルヴィー化粧品』の化粧水が一種のステータスとなったらしい。




――――――――――――

――――――

―――



「シルヴィーお嬢様、そろそろお時間です」



「分かってるわっ。ねぇ、変じゃないかしら?」



ワンピース型のスカートの裾を持って、くるりと回ってみせる。



「とてもお似合いでございます。

さっ、遅刻するのでいい加減行きますよ。

ほら、歩く」



「……最近ビルク()に似てきたわね。

ご主人に対して誠意が足りないんじゃない?」



「何を仰いますか、誠意の塊でしょう。

貴方のような令嬢に仕えられるのは、()くらいですよ?

もう置いてきますよー」



「ちょっと!1人だけ馬車に乗らないでよっ。

主人を歩かせるつもり⁈ 」



「やれやれ、天下の公爵令嬢様が入学式に遅刻ギリギリとは、嘆かわしい事です。

『シルヴィー化粧品』の名もついに傷が付きますね〜」



「その『シルヴィー化粧品』の売上から、

貴方のお給料が支払われてるんでしょ!

減給するわよ、リアム!」



「お嬢様ー、本当に時間ヤバイんで早くして下さい」



「分かってるってば‼︎ 」



*作中の化粧水ブレンドは危ないのでマネをしないようにお願い致します。羊


↓読まなくて大丈夫です↓

天然防腐剤についてですが、本来、蒸留水でその効果は得られません。(単純に蒸留水としてであれば他よりは長持ちだそう)

実際に、ローズマリーから抽出された「ローズマリーオイルエクストラクト」や、「ラディッシュエクストラクト」がありますが、抽出方法や成分、濃度が別物になります。


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