魅惑の香り、その名もカレー。5
誤字報告有難うございます!
修正致しました。
誤:ご案内下さいませ。→正:ご安心下さいませ。
夕食タイム。
実はトマスにお願いして、夕食の量を少し少なめにしてもらったの。
「お父様。昨日お伝えした件ですが、お兄様のご学友のおかげで解決出来ました。
味の微調整はまだですが、試作品第1弾をぜひ味見して頂きたいのです」
「おお!もう揃ったのかい?
それで、いつ作るんだ?」
瞳を輝かせて聞くお父様は、なんだか可愛い。
大人の幼い表情ってギャップ萌えよね。
ただしイケメンに限るけど!
「ふふっ。シェフ!持ってきてちょうだい」
トマスがガラガラとワゴンを引いて登場する。
「まさか、完成してるのかっ!」
「はい。言いましたでしょ?
第一弾を味見して頂きたいと」
ニヤリ。さあ、堪能して下さいませ!
お皿が行き渡った事を確認して、給仕の者にアイコンタクトを送り、一斉にクローシュ(*ⅰ)をオープンさせる。
――――ふわぁ〜っ
立ち込める異国の香りに、皆んな目を閉じる。
給仕まで閉じちゃダメでしょ、危ないよ?
「一応シェフと料理人の皆さん、私も味見しているので、ご安心下さいませ。
さっ、どうぞ?」
お父様とお兄様はパクリと。
お母様は恐る恐るひと口食べた。
「「「美味しいっ‼︎ 」」」
でしょっ!
トマスとハイタッチして喜ぶ。
「なんて芳醇な香りなのかしら……」
そうでしょ、そうでしょ? お母様。
「そして奥行きがあって味わい深い!」
コレが日本の国民食 カレーですわ、お父様。
「シルヴィーは国1番の料理人になれるね!」
お兄様、ありがとうございます。
でも、おかわりはありませんの。
無言でお皿差し出さないで下さい。
「もちろん、まだ完成形ではありません。
明日からは、トマスと一緒に配合比、食材を考えて試作を重ねるつもりですわ。
3種類ほど完成したら、また今の様に試食して頂いて、エリオット様にお出しするのを決めます」
「食後だというのに、とても美味しかったわ。
これでまだ試作品だなんて……楽しみねっ」
「うむ、既に殿下、、いや陛下にお出ししても遜色ない一品だ!
殿下もさぞお喜びになるだろう」
それは言い過ぎですわ。親バカなんだから……
「これが殿下のためにだなんてっ!
妹の手作り料理だと思って考えないようにしていたのに――――いっそ毒を混ぜてやろうか(ボソッ)」
おっお兄様⁈
私、断罪される前に処刑されるのは嫌ですわ!
――――――――――――
――――――
―――
カレー作り2日目
朝6時。
起こされました。トマスに。
私、一応あなたの主人の娘よ。あと7歳。
ついでに何でシェフが起こしに来るのを誰も怒らないの?
私、一応 公爵令嬢よ。
「さっ、お嬢様 始めますよー。
オニョンの方はやっておきましたんで」
わあ。
10個の鍋、全部飴色オニョン。
もしかして朝から10種類作るの?カレー。
ねぇ、私一応 公爵れい………
「昨日味見して合いそうな肉も、何種類か用意したんですが、どうですか?――聞いてますか、お嬢様」
「あ、はい。聞いてます」
私ってもしかして偉くないのかも、、、
「ブフ(家畜牛肉)、ミノタウロス(魔物牛肉)、オーク(魔物豚肉)、あと野菜はポム(じゃがいも)、キャロトゥ(人参)ですね。どれからいきます?」
あ、今まで豚肉だと思ってたのはオーク肉なんだ……
うすうすそんな気はしていたけど知りたくなかった泣
「野菜は全部共通で入れて良いと思うけど、とりあえずオークとブフに入れてみましょう。
ミノタウロスはそれだけでいくわ。
臭みが強いお肉はどれ?」
「どれも新鮮なので臭みはないですが、ブフとプレは他より癖がありますよ」
まさかの家畜の方が癖があるっていうね。うん、いいのよ。別に。
「じゃあ、その2つはコリアンダーとクミン、ジャンジャンブルを多めに入れてみようかな?
オークはアイユとトマトピューレ多め。
ミノタウロスは辛さ3種類。
さっきのプレとは別に、コリアンダー多めのままプール(バター)入れたものを、辛さ2種類。
お肉なしで野菜だけ、香辛料控えめ。
野菜とポワ シッシュ(ひよこ豆)、辛め。
この10種を作りましょう!」
「「「かしこまりました!お嬢様っ‼︎ 」」」
えっ、全員やるの?
朝食の準備は?
「トマス……朝食の準備間に合う?」
「何言ってんですか、お嬢様。
とっくに終わってますよー。このオニョンは同時進行でやったんです」
「あの、今朝は何時に起きた……いえ、何時から調理始めたの?」
「?? 4時ですけど?」
oh〜 my god!
「勤務時間とか大丈夫なの?
労働基準法には引っかからないのかしら」
訴えられたらどうしよう。
「ろうどうきじゅ?
いや本当は俺だけのはずだったんですが、やらせろってうるさくて。
それに、昨日はメイドにも文句を」
「まぁ、何て?」
「自分達は味見したくせに、私達には知らせもしなかったって。すごい恐かったんですよ?まったく。
それにスチュワートのおっさんまで、夜残ってないか見に来ましたよ」
食べ物の恨みってすごい。
カレーって充満するから、こっそり食べれないのが欠点よね。夜食候補から外すか。
というか、スチュワートをおっさんだなんて。
怖いもの知らずだわ。
「だから、こんなに作ってるの?」
飴色オニョンを指して言う。
「試作兼まかないですよ(苦笑)」
「ご苦労様です」
良く見たら、トマスのくまが酷い。
ごめん。明日も6時に起こしてくれて良いから。
*ⅰ;クローシュ(クロッシュ)、料理にかぶせる丸い銀色の蓋。
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初投稿から1週間経ちました。
仕事が忙しくならないうちに、頑張って書きたいと思います。
宜しくお願い致します。羊