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公爵家のお姫様〜とあるメイドの観察日記〜2



「………まぁっ、本当!不思議なお茶のような味だわ。素敵な魔法をお持ちね!」




そんなわけないのに。

彼女は私とクラリス様を守るため、並々注がれた魔女のくすり(センブリ茶)を眉もしかめず飲み干したのだ!


つられたように他の令嬢達も私を褒める。

違うわ、私は何もしていない。

たった6歳の女の子に庇ってもらったのよ。


そのまま何も起こる事なく、お茶会はお開きになった。



―――かと思えたが、


どうしてこんな事にっ。



応接室に、旦那様、奥様、クラリス様、私。

そしてシルヴィア様とお付きのメイド。



「これはこれは、シルヴィア様。

クラリスのお茶会は楽しんで頂けましたかな?」


「ええ、とても。クラリス様が面白いよきょうを見せて下さいましたの。魔女のくすり(センブリ茶)が飲めるようになる魔法ですわ」


「……は?魔女のくすり(センブリ茶)ですか?」


「おっ、お父様っ。これは……その」


「クラリス?どうしたんだ?」


「そうだわっ、もう一度やって下さらない?

子爵様にも飲んでいただけばいいのよ」


「ふむ、クラリスやってみなさい。私も気になる」


テーブルにはさっき見たばかりのグラス。

もちろん魔法なんてありはしない。


ただ用意されただけのソレを見て、

旦那様も気付いたのだろう。

事の重大さに、クラリス様以上に真っ青だ。


「あら、お召し上がりになりませんの?

()()()()な、お味で面白かったですわよ」


「クラリスっ‼︎‼︎

自分が何をやったか分かっているのか‼︎

シルヴィア様に謝りなさい!

シルヴィア様、娘が大変申し訳ありません!

なんとお詫びすれば良いのやら……私に出来る事は何でも致します!ですからどうか娘を許して頂けないでしょうかっ⁇ 」


状況が飲み込めていないクラリス様の頭を無理矢理下げさせ、必死で謝る旦那様。


「も、申し訳ありません‼︎ 」


私も当然 謝罪した。私の謝罪など価値はないかもしれないけど、生まれて初めて土下座した。


「皆さん、頭を上げて下さい。

私は別におこってなどいません。

ごあんしん下さい。気になると言うなら、お願いを聞いて下さりますか?」


誰よりも幼く、舌足らずな言葉は―――

けれど、その場の誰よりも力を持っていた。


「は、はい!なんなりとっ!」


「では、クラリス様にはそのグラスを飲み切って頂きましょう。

それから、()()()()()()()使()()()メイドを私に下さい」


えっ、私、、、、っ?


「はあ、それは構いませんが。あとは何をすれば……」


「それでけっこうです。何も望みませんし、この事は()()()伝えません。

私が気に入ったメイドを子爵様がゆずって下さったのです」


「おおっ!なんとっ‼︎

シルヴィア様、誠に有難うございます‼︎

しかし、それだけでは私の気が……」


「……それなら、お庭のガーベラを分けて下さいますか?

私、お花に目がないんですのっ!」


そう言って笑った彼女は、まるで物語のお姫様の様だった。




「あ、あの…シルヴィア様っ。私はどうすれば?」


「そうね。たいへんだと思うけど、とりあえず荷物まとめて。15分で!」


「15分!かっかしこまりましたー‼︎ 」


それから慌てて荷造りしたから先輩達には挨拶も何も出来なかったけど、少し気が楽だった。


「旦那様、奥様。短い間でしたがお世話になりました」


こうして、私は子爵家を後にした。




「さあ、着いたわ。今日からココで働いてちょうだい。えっと、、たしかニーナだったかしら?」


「は、はい!」


「じゃあさっそく仕事を言い渡すわ。

まずは里帰りして、我が家で働くきょかをとってきて。

きょかがとれたら、2週間後に迎えをやるから戻ってきてちょうだい。

ウチでは毎回かんげい会を開くの。だから事前に準備が必要だから、どうするかお手紙ちょうだい?」


「っぁ゛、ありがとうございます。ありがとうございますっ‼︎ 」



そのまま家に帰ってすぐお手紙を出した。

両親は子爵家の事を聞いて、大丈夫なのかと少し不安そうだったが、問題ない。

だってシルヴィア様がいらっしゃるんだもの!

私を地獄から救い出して下さった女神様!


その日の夜は、4ヶ月ぶりの楽しい食卓に笑い、ぐっすり眠る事が出来た。

明日がくる事があんなにイヤだったのに、2週間後が待ち遠しい。






「ニーナ・アルデビです!宜しくお願い致します!」







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