地獄の9週間
登場人物紹介
城下裕也
23歳
日本 転移から2か月後 国防軍某駐屯地 新兵訓練キャンプ
全くもって自分のしたことに後悔しなかったことは無い 特にこれからの9週間は特にそうだ
地獄の新兵訓練キャンプ 参加したのはタフ気取りの燃える若者か、はたまた職にあぶれた者 そして優先配給に釣られたものなど様々・・・出なければ相当な変わり者だ。
まあ俺もそんな感じの一人だ 大学卒業後特にやりたいことなど見つけられずとりあえずプラプラして自堕落な生活を送っていた。そんな時だった こんなくそったれな事態が起きなのは
まあでも捉えようによっては幸運かもしれないな これで優先配給があれば家族にも恩を売れるからな・・・しかしそんな浅はかな考えなど3日も持たずに消し飛んだのだが
志願兵たちは簡単な身体検査を受けそこで問題なければ採用となる(一応簡単な面接自体は存在したがよっぽどでなければ落ちたのは身体的な問題のある者が多いらしい)
そして晴れて採用となった二等兵 そんな彼ら地獄行き一番乗りの幸運な者たちが今まさに数十人集められ整列させられている。
しばらくするといかにもな顔つきの訓練教官が部屋に入ってきた 新兵たちの間でザワつきが起こる・・・無理もない その教官は皆の予想とは違い日本人ではなかったのだから。しかしそのザワつきもその外国人の一言でピタッと収まることになった。
「客員で招かれた訓練教官のベルクマン先任軍曹である これから9週間貴様ら糞猿どもの面倒見ることになる。貴様らにその間自由はない 話しかけられた時以外口は開くな 口でクソ垂れる前と後にサーをつけろ 分かったかウジ虫ども」
部屋中に新兵たちのSir, yes, sir.の叫び声が響く
しかし先任軍曹殿はその声のボリュームをお気に召さなかったらしく更なる檄が飛ぶ
「ふざけるな!ママの腹の中にタマ置き忘れてきたのか!?大声出せ!」
再び部屋中に新兵の叫びが響き渡る
「貴様らウジ虫たちが俺の訓練に生き残れたら各々がキルマシーンとなる 戦争の道具となるのだ だがしかしその日までは貴様らはこの地球 いやこの世界で最下等のウジ虫 生命体だ だが喜べウジ虫ども このクソッタレな世界にも一つだけいいことがある それはこの俺の言葉が貴様らウジ虫どもにも理解できることだ 俺の言葉がわかるなウジ虫ども!」
「「「「Sir, yes, sir!」」」」
「よろしい 貴様らは厳しい俺を嫌うだろうが憎めば憎むほどそれだけ学ぶことになる 俺の使命は役立たずを刈り取ることだ もし俺の訓練に耐えられないようなら直ぐにでも負け犬の門を潜ってここから出ていけ 分かったなウジ虫ども!」
「「「「Sir, yes, sir!」」」」
並べられた新兵の顔を見渡しながらあたりを巡回するその軍曹の顔はとても恐ろしく感じたのだ 当初誰もが当然のことながらアメリカ人の教官が来るとは思ってもみなかった 皆が度肝を抜かれて当然と言えるだろう。だが考えてみれば外国人の教官が来てもおかしくないのかもしれない。
この世界において会話することだけに限るなら言葉の壁は存在しなくなってしまった(理由は不明 臨時政府はこの世界に存在する魔法と呼ばれる存在が関係していると考えているようだがまだよくわかっていないのが現状である)なぜか突然として英語やその他の言語を話す人間と話せない人間が意思疎通できるようになったことは困惑したが少し経てば皆それが当然と思うようになってしまった。最も本件に関してはメリットしかない現象だったからというのもあるが・・・
すると何やら軍曹が一人の新兵の前に立ち罵声を投げかける
「そこの芋顔 名前は?」
「Sir,新山二等兵であります!Sir!!」
「見るからに田舎者の顔だ 俺はアメリカ人だが日本人の顔の見分けがつく!違うか?」
「Sir」
「アホ相手に質問するのが俺の役目だ どこの出身かと聞いている!どこの穴の出だ?」
「Sir埼玉であります!Sir!」
「埼玉?そうかやはりな 貴様はそういう顔付だ 聞いて驚くな埼玉県民 うちの食堂では埼玉県民に出す食事はない グラウンドの草でも食っておけ 分かったな!」
「Sir, yes, sir!」
その後も教官のターゲットにされた新兵たちは海兵隊式の罵声を浴び続けた 俺はただ目立たぬように突っ立っているだけだった。
埼玉の人ごめんなさい
今回のは映画の有名なパロディーです