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中華人民共和国山東省曲阜市にて

初投稿となります。

春秋戦国時代しゅんじゅうせんごくじだいにタイムスリップした高校生のお話となります。


未熟ですので、読み難い点、誤字、単純に面白くないことなど、あると思います。

勉強させていただきたく所存ですので、よろしければ、ご指摘を頂ければ幸いです。


もちろん、感想、応援の言葉、ブックマークなどをいただけると、更に嬉しいです!


しばらくの間は、毎日17時頃に更新していこうと思っておりますので、

何卒、お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。


※2019.3.6 定時更新を18時に変更しました

 俺は今、BC(紀元前)707年の中国の大地に立っている。

 ギャルのパンティーを握りしめて……。

 おい! どうしてこうなった!?



 発端はそう、高校の修学旅行で中国に来たことに始まる。



 その日、俺は山東省(さんとんしょう)曲阜(きょくふ)市というところに来ていた。

 孔廟大成殿こうびょうたいせいでんっての観るためだ。


 孔廟というのは、儒教(じゅきょう)の開祖である孔子(こうし)サマを(まつ)ってる建物のことだ。

 孔廟大成殿は中国三大宮廷建築の一つに数えられていて、当然、世界遺産に登録されている……要するに、すげー建物で有名な観光地ってわけだ。


 ちなみに俺は、中国の歴史やら名所にそれほど造形が深くない。今紹介した薀蓄(うんちく)は、片手に握られている日本語のパンフレットに書かれていたから知っていただけだったりする。


 クラスの連中と孔廟(こうびょう)内をうろついてみる。

 正直あまり楽しくはなかった。

 大体、俺は孔子サマも儒教ってのも、よく知らないのだ。


 例えばそうだな。

 奈良の法隆寺(ほうりゅうじ)を観に行ったとしてだ。

 それが【世界最古の木造建築物】で【聖徳太子が建立(こんりゅう)した】のだと聞いたとしたら、そりゃすげーって思うし、多少なり心に湧くものがあると思うんだよ。

 でもさ、歴史も由来もピンと来ない観光地に来たとしたら……どうだろう?

 今の俺みたいに、つまらなそうな顔になるのも、無理からぬことだと思わないか?


 ボケーっと、それでも壮大だと感じる建物群を見上げていた時、視界の端に違和感を覚えて、目線をそちらに向けてみた。

 するとそこには、柱の影からこちらを覗いている、女のような【何か】がいた。


 ――これは人間じゃ、ないな


 なぜか直感にそう思えた。


 服装が可怪(おか)しいってのもある。

 女が着ていた衣服は、印象としては和服に近かったが、ちょっと違っていた。

 下衣(かい)は中国風の意匠(いしょう)が施された腰の上まであるロングスカート、って感じで、上衣(うわぎ)は単純に日本の着物に近い。そして、上布はスカートにINである。

 どちらも、とても華美ではあったのだけれど、派手と言うのはそぐわない気品に溢れていた。


 気品といえば、女から発せられる品格も異常だった。


 (つや)のある絹糸(きぬいと)のような黒髪が、後ろで一つにまとめられていて、足首ほどの長さがあるのにも関わらず、あるはずの【重さ】をまるで感じさせない異常が、そこにはあった。


 肌はあくまで白く、毛穴など一つも存在しないかの如く滑らかで、その異常は、女がおよそ人ではないことを示唆(しさ)していた。


 【女神】としか形容できない程に、(りん)として美しい顔。

 だけれどそこには、無邪気さが隠れているように感じたのだ。

 全てを救済し、全てを滅ぼすような……そんな異常な無邪気さが。


 俺はソレから目線を外すことができず、そして一歩も動けなくなっていた。

 クラスメイトたちの声が、徐々に遠ざかっていく……。

 どうやら、ソレの存在を認知しているのは、俺だけみたいであった。


 そして、石のように固まっている俺に、ソレは可愛らしく笑いかける。


(お前に決めたのじゃ!)


 突然頭の中に、美しい声が響いた……。



 気づくと俺は、不可思議な空間に立っていた。


 そこは俺の知る世界ではありえなくて、もちろん孔廟大成殿こうびょうたいせいでんでないことは明白だった。

 中華風幻想郷(ファンタジー)とでも言おうか……小さな無数の島々が空中に浮かんでいる空間。

 下を見れば雲が広がっているのだから、天空に存在する場所なのかもしれない。


 いくつかの島には建物があるのだけれど、そのどれもが荘厳(そうごん)で、目を見張る技巧(ぎこう)が凝らされていることが、一目に分かる。


 俺が立っている島にも建物があったのだけれど、他に比べて小さ目であるに関わらず、圧倒的な細工(さいく)が施されていて、これは恐らく宮殿かなにかなのだろうと、俺は思った。


「ようこそ我が住処(すみか)へ。なのじゃ!」


 気がつくと、目の前にソレが立っていた。


 さっきまで居なかったのに、どこから現れたのだろう? と疑問に思ったけれど、そもそも、こんな訳の分からない場所にいる事自体が、もう既に異常なのだ。

 ソレが目の前に突然現れたことなんて、別に大した問題じゃないかもしれない。


「ほほぅ。取り乱さぬところを見るに……中々、肝の座った男のようじゃのぉ」


 ソレは感心したように、大仰(おうぎょう)(うなず)く。

 上から目線なセリフに若干(いら)ついたのだけれど、ソレが【俺より上位の存在】であることは、悲しいが本能的に理解できてしまったので、とりあえず俺は、下手に出てみることにした。


「あの……。ここは一体どこなのでしょうか?」

「うむ。ここは私の住処(すみか)なのじゃ!」


 それ、さっきも聞いたし、なんの説明にもなってないからな!


「えっと、では貴女様(あなたさま)についてもお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「私か? 私は私なのじゃ!」


 クソか!!

 礼を払うべき相手に対する謙譲(けんじょう)の念を、苛立ちが一気に上回る。

 いや、いかんいかん。

 短気は損気ってもんだぞ。

 

 スーーーハーーー


 深呼吸だ深呼吸。落ち着くのだ、俺よ!


「あの……。無礼とは存じますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? あ、俺は風見 英人(かざみひでと)と申します」

「うむ。私は女媧(じょか)というのじゃ」


 ジョーカー? ジョカ? とにかく耳慣れない名前だ。


「私のことを知らぬのか? 結構有名なのじゃがのぉ……」

「も、申し訳ございません! 俺は学がないもので……」


 女媧(じょか)様が(わず)かばかりだが怒気を帯びた気がして、俺は深々と頭を下げる。

 やべぇ……選択を間違えたら、簡単に死ねる気がするな。


英人(ひでと)と申したか? 名前からしてお主、もしかして中華の者ではないのかの?」

「え? ああ、はい。中国人ではないですね。俺は日本人です」

「ほほぅ。()の国の者であったか。よく考えれば言葉が違うのぉ。私は言葉ではなく思念を用いて会話しておるから気付かなかったのじゃ。倭の者ならば、私のことを知らぬのも、無理からぬことかじゃろうて。まぁ有り体(ありてい)に言えば、私は【女神】なのじゃ!」


 女媧様が【どやぁ】とばかりに胸を張って言う。

 大人びた見かけによらず、少し子供っぽい性格をしているようだ。


 思念を用いて会話?

 そう言えば女媧様は、喋る時に口を動かしていなかった。

 なるほどね、そういうことか。


 しかし、やはり神の(たぐい)だったのかー。異常なわけだぜ。

 【触らぬ神に(たた)りなし】とか言うけれど、この状況……祟り寸前みたいなもんだろう?

 カミサマと(じか)に接触しているわけだしさ。


 うん。

 なるべく女媧様のご気分を害さないように対処しよう。


「女神様が、俺のような下等な人間に、何か御用でもございましたでしょうか?」

「おう! あるのだぞ。お主、縁者がほとんど滅んでおろう?」

「え? あぁ……はい。父母は既にありません。父も母も天涯孤独であったと聞いておりますので、親類縁者の(たぐい)は一人も知りません」

「じゃろ? そんな人間を探しておったのじゃ! 中華の者でなかったことは、まぁ当てが外れたがのう……。じゃが、それはさしたる問題ではないのじゃ」


 俺の父と母は、俺が中学2年のときに、交通事故で亡くなっていた。

 俺が通っていた中学校の校長先生が、父の中学当時の担任であり、父と継続的に付き合いがあった関係で、父母が死んでからは、校長に色々と世話になることになったのだ。

 いわゆる後見人(こうけんにん)ってやつだな。


 葬式をあげた時、俺には親戚がまるでいないことを再認識させられたけど、不思議と悲しくはなかったし、別段、困りもしなかった。

 校長は頼れる良い人だったからね。そんなに絶望はしなかったんだ。

 そりゃぁ、それなりにしんどくはあったけどさ。


「確かに俺は天涯孤独といってよい状況ですが、女媧(じょか)様は何故、そのような者をお探しだったのでしょうか?」

「ん? そういう境遇の子供(ガキ)なら、拉致(らち)っても、人間界にさしたる影響はなかろう? 玩具(おもちゃ)に丁度良いと思ったのじゃ!」


 理由が思ってたよりひでぇ!!


「俺は…お、玩具ですか?」

「うむ。玩具じゃ!」


「ぐ、具体的に……俺はこれからどうなるのでございましょうか?」

「うむ。お主を過去にの、飛ばそうと思っているのじゃ。【たいむすりっぷ】ってやつじゃな!」

「過去に……ですか……? それは何のためにでしょうか?」


 俺を過去に飛ばす? それに何の意味があるってんだ?


「現代の人間を過去に飛ばしてのぉ、その者がどんな人生を送るのかを観察して暇を潰すのじゃ!」


 あ、ああ、なるほどね。

 だから【玩具】か……。


 もう恐らく、俺が過去に飛ばされる未来(言っててややこしいな)は変わらないだろう。

 なにしろ、女神様はお暇で、俺は玩具程度の価値しか見出だせ無い木っ端(こっぱ)に過ぎないらしいからな。


 こうなってしまっては、なるべく有利な条件を引き出すことに専念するのが得策か……。


「わかりました。それで、どんな時代にタイムスリップするのでしょうか?」

「ふむ。やはりお主、肝が座っておるのぉ。気に入ったのじゃ! そうさの、お前ら人間の尺度(しゃくど)で言う、BC(紀元前)700年頃にしようかと思っておるぞ?」


 BC(紀元前)700年?

 2700年くらい前ってことだよな?

 ピンと来ねーーー!!


 弥生時代(やよいじだい)かそこら辺だろ?

 高床式住居たかゆかしきじゅうきょ? ねずみ返し??

 マズイ……なんの知識もねぇ!


「な、何故その年代に?」

「なんとなくなのじゃ!」


「た、たとえば、年代の変更などは……」

「ダメじゃ! もう決めたのじゃ!!」


 さっき適当に決めた雰囲気だったろーが!

 畜生! この女神、コントロールできる気がしねぇぞ……!!


「ば、場所は……!? 年代はともかく場所はどこになりますでしょうか?」

「場所は指定できないのだぞ?」


「は?」

「私はお主を違う時代に飛ばし、それを観察する能力はあるのじゃが、遠くの場所に飛ばすことはできないのじゃ」


「ってことは、中国山東省(さんとんしょう)曲阜市(きょくふし)にある孔子廟(こうしびょう)のままってことですか?」

「まぁその時代に孔子廟はないがの。孔子はまだ生まれておらんし」


 BC(紀元前)700年頃の中国にタイムスリップする。これは確定事項で、もう動かない。

 ならば……。


「せめて言語は……言葉が通じるようにしていただけませんでしょうか!」

「はぁ? なんで私がそんなことをせねばならんのじゃ!」


「か、考えてもみてください。俺は学がありませんし、現代の甘やかされた環境で育った阿呆(あほう)にございます。もちろん、中国語など話せやしません! 右も左も分からない、言葉も通じないでは、すぐ死んでしまいますよ? もう、秒で死にますね。確実に! そんな状況を観てもつまらないでしょう?」


 あ、言ってて悲しくなってきた。


「ふむ。確かに……の。分かったのじゃ。どんな言葉でも、意訳され理解できるようにしてやろう。そしてお主の言葉も意訳されて、相手の耳に届くように、の」


 よっしゃ! 言語能力ゲットだぜ!!

 ここは更に要求を畳み掛ける場面とみた。


「ついでに何か特殊能力とか、いただけませんかね?」

「ああん? 例えばどんな能力じゃ……?」


 マズったか?

 女媧様は、少しおイラつきなさっているようだ。


「ええと、万夫不当(ばんぷふとう)一騎当千(いっきとうせん)の強さとか……ですかね?」

「は? そんな能力を与えてしまっては、それこそ、お主の観察がつまらなくなるではないかの?」


 あ、この女神、人の不幸も楽しむタイプっぽいぞ。

 だが、ここは引けない。素寒貧(すかんぴん)の俺が、2700年前の中国で生きていくイメージが、まるで湧かないからだ。


「能力じゃなくてもよいのです! せめて道具とかお金とか……なんらかのアドバンテージを何卒(なにとぞ)ぉぉぉ!!」

「お主、楽をしようと思っていないか? 玩具のくせに……のぉ」

「いえ。決してそんなことは……」

「あー嫌じゃ嫌じゃ。平和な現代の倭の国に生を受けるという幸運に恵まれた上に、過去においても楽をしようとする、その甘えた気構え……恥を知るのだ!!」


 いや、理不尽だろうが、それは。

 だが、これ以上女媧様の機嫌を(そこ)ねるのもマズイ気もする。

 しかし、その理不尽さに、流石の俺もムカついてしまっていたのだ。


「いや、おかしいでしょう!? 俺は女媧様の暇つぶしで一方的に拉致されて過去に飛ばされるんですよ? ですが、もうそれは受け入れようと思います。俺は過去に飛び、女媧様の暇つぶしに貢献いたしましょう。ならばせめてと、何らかの【有利】を欲することの、どこが恥なのでしょうか?」

「ぐ……ぬぬ」


 女媧様は、語気を強めた俺に怯んだかのようにして、唸っていた。

 大丈夫か?

 この場で消し炭にされたりしないよな?


「ふむ。確かに理不尽であったかもしれぬのぉ……。す、すまんのじゃ」


 よっしゃ!

 女神の謝罪ゲット!

 だが、ここで調子に乗ってはいけない。丁度良い落とし所を探らねば……。

 さっきはそれで失敗したからな。


「いえ。こちらこそ無礼な物言いをしてしまいまして、大変申し訳ございませんでした」


 俺は深々と頭を下げてみせる。


「構わぬのだ。そうさの、詫びとして1つだけ、お主の望みを叶えて進ぜよう」


 ふむ。願ってもない展開だぞ。

 特殊なチート能力ってのはヤメた方が良さそうだな。

 チートで無双しても、女神様は楽しんではくれないだろう(まぁいたずらに苦労するっても御免ではあるのだが)


 ならば道具はどうだろう?

 なんでも斬れる刀……人斬りは嫌ざんすね。

 無尽蔵に金が出てくる袋……ちょっと都合が良すぎるか?

 考えてみると、丁度良い落とし所が見つからないな。


「ほれ。早く決めるのじゃ!」

「すんません! 今しばらくお待ちを……!」

「むー」


 ヤバイ。

 女媧様が分かりやすく(イラ)ついていらっしゃる。腕を組んでの貧乏揺すり……残された時間は少ないようだ。


 どこでも一瞬で行くことができるピンク色の扉?

 大きくなったり小さくなったりできるライト的なやつ?

 頭に装着して空中飛行できる謎アイテム?

 あかん……丁度良いアイテムが、全然思いつかない!!


「もう【ぎゃるのぱんてー】でええじゃろ?」

「は、はい?」

「確か、願いを1つ叶える場面では【ぎゃるのぱんてーを願う】というのが、倭の国の伝統ではなかったかの?」


 何その謎知識。

 ギャルのパンティー? なんでそんなこと知ってんの?

 いいやいや、それ別に伝統とかじゃないし!


「決めたのじゃ! お主には【ぎゃるのぱんてー】を進呈しよう。それでは過去へ飛ぶのじゃーーー」


 のじゃーーー……のじゃーー……のじゃー……

 女媧様の声が頭の中で反響し、体を気持ちの悪い浮遊感が襲う。

 胃の中が逆流したような吐き気を感じた時、俺はプツンと意識を手放した。 

第一話、いかがでしたでしょうか?

批判、批評を含め、感想を頂ければ幸いにございます!


筆者は余り歴史に造詣が深くありません。

舞台として春秋戦国時代を選んだのは、単純にこの時代が好きだからになります。


それゆえ、史実との整合性は、あまり気にしないでおこう、と思っております。

そもそも神仙とか登場させてますし…。


ですが、正しいに越したことは無いですので、

設定におかしな箇所がございましたら、ご指摘頂ければ幸いです。


よろしくお願い申し上げます。

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