prologue
「僕には憧れていた子がいた」
その子との出会いは僕達が高校生だった頃のお話。
とある夏の日差しに溢れた日、僕の友人である啓人の所属する、うちの高校の演劇部の最後の舞台を見に行ったときだった。
彼女は物語の主役だった。もちろん、事前にパンフレットを貰っていたから、あらすじと配役くらいは知っていたし、彼女の名前くらいは知っていた。啓人がいた事もあって、何度か演劇部に遊びに行ったこともあった。だから顔も何となく覚えていた。とはいえ、ほとんど面識はない。たぶん向こうは僕のことを、「友人A」くらいにしか認識していなかったと思う。現代の高校生特有のSNSでの繋がりが少しはあったから名前くらいは知られてたかもしれないが。
高校の演劇部における、1番重要な最後の大会である夏の総文。僕は自分の所属していた部活の兼ね合いもあって、1、2年生の時は見に行けてなかった。だからこそ、3年生の夏は絶対に見に行くと決めていた。中学時代からの友人である啓人の集大成を、しっかりこの目に焼き付けるために。
総文県大会当日、彼らにとって最後の日。
はじめて"彼女"をしっかりと見た
舞台の上でキラキラと輝く彼女を。
それは僕では届かなかった、僕が踏み込むことが出来なかった領域で光り輝くひとりの少女の姿。まさしくそのものだった。
その日、僕は彼女の虜になったのだ。