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  ―― いつも 一緒 許さ ない 私 が 本当は ――


 桾さんが写真部に顔を出さなかった。これまでそんなことはなかった。

「おかしいな……どうしたんだろう?」

 こういう場合、連絡を取った方がいいのかな? 僕も桾さんも携帯電話は持っているから、互いのメイルアドレスは知っている。電話番号も知っている。だけど、これまでに連絡を取ったことがない。休む連絡も、そもそも休まないんだからしたことがない。

 まさか、昨日の雨で風邪でも引いていたりしたのかな? それを無理して学校来て、やっぱり無理だって帰ったのかな?

 時計を見ると、もう五時近い。そういえば、今週は部活監査週間と言っていたはずなのに、なぜか佐田さんが来ない。佐田さんはホームルームが終わってすぐ、僕に「ちょっと用があるから、部活監査に行くの遅くなるかもしれない」とわざわざ言っていった。だけど、もはや来ないじゃないか。

 なんだか、桾さんといい佐田さんといい、ちょっと寂しかったりする。

 窓から街を見下ろした。夕暮れが頭にくるぐらい怖くて、きちがいなほどうっとうしい。

 結局五時になった時点で桾さんも佐田さんも現れず、僕は一人、誰もいない部室の電気を消して学校をあとにした。

 帰る途中の信号機で捕まり、その間を使って携帯電話を開いた。桾さんから連絡が入っていたりしないかな、と妙な期待を持っていた。だが、連絡なんて入っていなかった。かなり寂しい。

 ――帰ったら、メイルしてみようかな。

 やっぱり風邪とか引いてたら心配だし、そうでないにしても休んだ理由が気になる。

 そう決めたとき、ちょうど信号がかわった。


『今晩は、桾さん。メイルしてすいません。で、どうしたんですか? 桾さんが休むなんてめずらしいね。』

 だから何? 桾さんでなければそんなリアクションを返されそうな文面を見ながら、送ろうか送るまいか一時間ほど悩んでいた。いい加減にしないと夜遅くなってしまう。今は八時だ。

「でもなぁ……」

 桾さんが心配で不安は募ってるけど、佐田さんの言ってたことが、今更気になる。気になるとどうしようもなくて、さあ、どうしよう?

 ――明日になれば、普通に来るかもしれないし……。

 うん、そうだ。でも、なんだか不安。やっぱり、送ろうかな。でもなぁ。

 ――悩んでてもしょうがないかな。

 勢いでいけぃ、ということで送信ボタンを押した。しばしの通信時間を経て、通信完了。後悔。よくわかんないけど、後悔。

 ――返事来なかったらどうしよう。


 返事は来なかった。

 送信してから四時間。今は深夜零時。だけど、これまでに僕の携帯電話は沈黙こそ全てという状態。

 でしゃばりだったのかな?

 なんだか、恥ずかしい。

「もう、寝よう……」

 電気を消してベッドに横になった。携帯電話は机の上に置いておいた。


 ぴりりり……ぴりりり……ぴりりり――

 暗い世界で電子音が響いた。突然のことに目が微かに覚めた。音はまだする。

 顔の向きをかえると、机の上で何かが光っていることに気がついた。もそもそ起き上がってみると、携帯電話が着信を報せるランプとメロディ作動させていた。

「こんな時間に……迷惑メイルかな?」

 とにかくうるさい。

 携帯電話を手に取り、煌々とするバックライトの表示を見た。そこには普段時刻と曜日だけが表示されているのだが、今はAM1:27に加えて高須桾とも表示されていた。メイルのときはメイル着信と表示されるはずだが、そうでないということは――

「電話?」

 僕はそこでやっと携帯電話を開いた。やっぱり電話の着信であった。すぐさま通話ボタンを押し、受話口を耳元に押しあてた。

「もしもし」

「…………」

 答えは帰ってこなかった。

「桾さん?」

 とりあえず名前を呼んでみた。だが、それにもやっぱり無反応だった。

「もしもーし。桾さん?」

「…………」

「おーい! 聞こえてる? 聞こえてるなら返事して!」

「…………」

「…………」

「……怖いよ」

 ――……えっ?

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