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後ろ指を指されても、別に  作者: チゴロ
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なんとなく、蹴りたくなった。なんとなく、

「ニシオ先生!!」

今日も貧乏小学三年生、出席番号12番。背の順は前から三番目で服は学校のバザーで買った50円の黄色いワンピース。頭はもちろん昭和のおかっぱ頭。そんな近衛が本人なりのでっかい声で前方20メートル先でスマホをいじりながら音楽を聴いてふらふら自転車を漕いでいる3年3組学級担任西尾に声をかける。


スマホで百科事典を見るのに一生懸命なニシオ先生は当然のように聞こえておらず、ふらふらと蛇行運転を続ける。


先生のくせに、自転車乗ってスマホいじるなし!

何回呼んでも聞いてくれなくてイライラした近衛は学年一速い快脚を活かし、ぐんぐん担任の自転車に近づいていく。


絶対今日こそ痛い目合わせる!

オンボロ錆びつき自転車に並走した近衛はニヤッと口元を歪めた後、ポンと右足を思い切り踏み込むと、ふわりた体を宙に浮かせ、体を素早くひねって頭に思い切り空手チョップ!


ふぬっと変な感触の後近衛はバランスを崩して、ドタンと転んだ。しかし、気分は満足満足。

左ひじが少し痛みはしたが、とりあえずニシオ先生は無事転んでいるだろうか。

近衛が顔を上げると芋虫のような形で倒れてるニシオ先生がいた。ジャージの間からはトランクスの柄が見える。ダサい。


ちょっと、大丈夫かな。

少し心配になって近衛が駆け寄る。

見事に横転した5,200円の自転車は後輪がカラカラと音を立てて回っている。

「大丈夫?」

未だ芋虫状態のニシオ先生を人差し指でつつきながら声をかける。


んあ

変な声を出した後、イヤホンが絡まったニシオ先生の顔だけ近衛のほうへぐるりと回った。

ひたいからは少し血が出ている。

「なんだ近衞か。何か用か。」

ノロノロ立ち上がり、顔に絡まったイヤホンをほどきながら西尾先生が言う。

「別に。どこか行くんですか。」

自転車なサドルが少し歪んでいても、担任の頭から血が出ていようとお構いなしに近衛が聞いた。

「昼飯買いに外出。」

自転車を立て直し、跨る。その後ろに近衛も跨る。

「ぼくも、行く。」

「お前金ねえだろ。」

「いいの。」

ニシオ先生の砂まみれの服の裾をぎゅっと掴み、頭を背中に預ける。


ふん

ニシオ先生が息を吐くとまた、イヤホンを耳につけ、スマホを眺めながら自転車を漕ぎ出した。


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