表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

お手紙セット

メイドのミリアさん視点です




「やっと会えました! ハンスさん!」


 前回『ばーむくーへん』で騙された事、わたし忘れていません。

 あの後すぐに文句を言おうと思って仕入れの時間に来たのですけど、何故かなかなかハンスさんに会えなくて一ヶ月ほど経ってしまいました。


 でもわたし、まだ怒ってます! 


 さあ覚悟して下さい!


 と、声を掛けさせて頂いたのですが、わたしに気が付いたハンスさんが何故か笑顔で手を振ってきました。


「あ、これはアイアリス様ではありませんか。 これ、見て下さい。 絶対にアイアリス様のお気に召すはずですよ!」


 そう言いながら有無を言わせず色とりどりの封筒や便箋を取り出して並べはじめてしまいました。


 む~、わたし、怒ってるのに……。


「なんですか? わたし、こないだの事、わすれていない…………あら、可愛いですね」


 物で気を逸らそうったってそうは行きません!

 と思いつつもチラッと並べられた物を見たら……ぶたちゃんの描かれた封筒や便箋が並んでるじゃありませんか!


 表面上は冷静を取り繕っておきましたけど、これは素晴らしい物です。

 是非個人的に手に入れたいです。


「可愛いでしょう? 我が商会のお抱え絵師に描かせました最新の新商品ですよ。 真っ先にいつもご贔屓して頂いているアイアリス様へお見せにきました」


「最新……新商品……」


 って事はまだ他の人は持ってないのですね。

 う~ん、心惹かれます。


「しかも限定千個の貴重な品です! 今を逃すともう手に入らないかもしれませんよ?」


「限定!?」


 限定ですって!?

 欲しいなぁ……でも、お小遣いもうあんまり無いし……。


「こちらの封筒と便箋のセット、本来ならお値段五千ループの所、今なら特別にセットで四千ループでご提供します! 千ループもお得なこの機会に是非どうですか!?」


 な……なんですって!?

 お得です。

 これは買うしか無いですよね!


「……じゃ、じゃあ、このセットとこっちのセット、一つずつ買います」


「毎度ありがとう御座います!」


 わたしはハンスさんへ自分のお小遣いから八千ループをお渡ししました。


 やったぁ!


 ぶたちゃんお手紙セットを手に入れました。


 そうだ!


 せっかくですし、お嬢様の文通に使って頂きましょう!

 さっそくお勧めに行かねばなりませんね。



「では、わたしはそろそろ戻ります。 また何か良い物があったら見せて下さい」


「かしこまりました。 お探ししておきますね」



 では、とお辞儀してわたしはお嬢様の元へ戻ります。



 お嬢様、喜んでくれると良いなぁ。




~~その後~~




「マーシャ様、お手紙でしたらこちらへお書きになったらいかがでしょうか」


 お嬢様がお手紙を書く準備を始めたそのタイミングで、わたしは待ってましたと言わんばかりに意気揚々と上機嫌にお嬢様へ買ったばかりのお手紙セットをお渡しします。

 それをお嬢様も笑顔で受け取って、しかし凍り付いた様に固まってしまいました。


「ん……そう……ですわね。 …………えっと……あ、今日はもう準備してしまった事ですし、以前貰ったこちらに書きますわ」


 若干の間の後、お嬢様がぎこちない笑顔でそう仰いました。


 あれ、おかしいですね。

 ちょっとお出しするのが遅かったのですかね。



「かしこまりました。 ではまた後日お使い頂ける様にこちらへしまっておきますね」


「いいえ、まって! ミリア、これは是非貴方のご家族とのお手紙にお使いなさいな。 ミリアらしさを感じられてご家族も喜ぶ事でしょう」


 なんですって!?


 わたしが自分のお金で買った物だとは知らないはずなのにわたしに譲って下さるなんて、お嬢様、なんてお優しいのでしょう!


 メイドの事を気遣って下さる素晴らしいご主人様です。


 お手紙セットは使って頂けませんでしたけれど、仕方無いですね。

 次はもっと可愛いぶたちゃんのお手紙セットを買っておきましょう。



 わたし、これからも頑張りますね。




 またミリアさんはハンスさんの策略に嵌まっています。

 怒りに行ったことは完全に忘れちゃってますね。


 限定千個って、たぶん売り切れないから焦らなくても大丈夫なんですけどね……。


 ちなみに紙は高級品、しかもその中でも公爵家へ卸している便箋はさらに高級品ですのですごく高いのです。

 ぼったくられた訳では無いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

良ければこちらもお願いします♪

森のエルフは過保護さん
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ