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おかいもの

メイドのミリアさん視点です。



作中に出てくる《ループ》はお金の単位です。


1ループ=1円です。



 今日は出入りの商人さんの所へとある商品を買いにやって来ました。


 本日来ていらっしゃる商人さんはこの間のハンスさんでは無くて、主に女性向けの品を卸に来て下さっているイリーナさんと仰る三十代後半位の女性の方です。

 月に一度か二度程の頻度で来て下さっています。


「こんにちは、すこしお聞きしたい事があるのですけどお時間頂けますか?」


 わたしは業者通用門の近くにある商談部屋でイリーナさんの手が空くのを待って声を掛けさせて頂きました。

 イリーナさんが来るのを心待ちにしているメイドが一杯いらっしゃるので結構待たなければなりません。


「あ、ミュリアナちゃんこんにちは。 時間ならいくらでも大丈夫だけど、今日はどうしたのかな?」


 イリーナさんは女性向けの商品を扱ってる関係もあって、わたしを含めメイド達とは非常に仲が良いので気さくに話しを聞いて下さいます。

 わたしもいつの間にか名前をちゃん付けで呼ばれてしまっていますし、なかなか人心掌握の上手い侮りがたい方です。


「はい、最近手荒れが気になり出しまして、何か良い物はないかなとご相談に来ました」


 そうなんです!

 わたし、最近まで洗い物しても洗濯しても全然手荒れなんてしなかったのに……ちょっと前からついに手荒れする様になってしまったんです!

 年なんでしょうか!?


「あらあら、それはいけないわね。 どれ位の荒れ方かわかるかな?」


「これぐらいです。 酷い時はもう少しだけ荒れてるかもしれないです」


 イリーナさんの質問にわたしは自分の手をお見せします。

 その手を取ってイリーナさんは少し考えていらっしゃいます。


「そうねぇ……これ位ならまだそこまで酷くは無いし……んー、この辺りの商品が良いと思うわよ」


 そう言いながら保湿クリームを二種類取り出して下さいました。


「えー……おほん、まずこちらの商品ですが、アロエと真珠を使ったクリームでして、ローヤンの森に自生している立派なアロエを厳選採取し、そのアロエの有効成分を余す事無く濃縮したクリームになっております。 しかもなんとそのクリームへ真珠を細かく砕いて粉末にした物を混ぜてあるのです。 こちらは手に塗り込めば嫌な手荒れもスッキリ治り、真珠のおかげで白く輝くお肌がたちまち蘇ります」


 と、イリーナさんが突然の営業トークを始めます。

 いつもの事なので慣れましたけど出会った当初は直前までの会話とのギャップにびっくりしました。


 んー、でも真珠って混ぜる必要あったのでしょうかね?


「そしてこちらの商品ですけど、こちらはサリエナ高原で採れる天然ハーブをふんだんに使った高級クリームになります。 こちらのクリームの方が先ほどの品よりも肌荒れを治す事に特化していまして、非常に高い効果を期待出来ます。 ただしハーブの匂いがどうしてもしてしまうのでお出かけ前やお食事前等は使用を控えた方が宜しいかと思います。 夜、就寝前にお使い頂ければ翌朝には滑らかなお肌をきっとご堪能頂ける筈です」


 へー、サリエナ高原って水も空気も澄んでいて凄く綺麗な場所だって聞いた事があります。

 そんな場所で採れるハーブなら良く効きそうですね。


 でもなんだかどちらも高そうなんですけど……。

 わたし、実家へ仕送りしてしまっているのであんまりお金持ってないんですよね。


 不安です。


「いかが? どっちもお勧めだよ。 もっと保湿効果が高い物も無い事も無いけど、まだそこまでの物は必要無さそうだし、この辺りで良いと思うわよ」


 そう言ってイリーナさんはずずいっと商品を押してきます。

 むー……とりあえずお値段聞いてみましょう。


「ところでおいくらなんですか?」


 わたし的にはもっと安そうなので良いのですけれどね。


「値段? お値段が気になるのですか?」


 あれ?

 イリーナさんが何故か不思議がります。


 何故でしょう?

 だって物を買うか決めるにはお値段って重要だと思うのですけど……。


「はい、おいくらか分らなければお支払いも出来ませんし」


「え?」


「え?」


 んん?

 なんだか話が通じていらっしゃらないような…………。




 あ、わかりました!


 イリーナさんは勘違いしていらっしゃるんですね。


「イリーナさん、クリームを買いたいのはお嬢様ではありません。 わたしが自分用に欲しいのです」


 たぶんこう言う勘違いをしていらっしゃるんじゃ無いでしょうか?


 お嬢様用の物でしたらお値段なんて気にせずに良いか悪いかだけを判断基準に商品を選びますからね。

 お支払いも経理が一括で手続きして下さいますから、お値段をわたしが聞く必要は無いんですよね。



「ああ! ごめんミュリアナちゃん! 私完全に勘違いしてたわ。 そうなると……その……凄く言い辛いんだけど、これじゃ無い方が良いと思うわ」


 言葉通りにイリーナさんがもの凄く申し訳無さそうな顔をします。

 たぶん、凄く高い物なんでしょうね……。

 でも気になるからお値段を聞いてみます!


「おいくらの物なのですか?」


「聞く? 聞いちゃうの? あ、もしかしてミュリアナちゃんは上級職だからお金に余裕があるのかな? それじゃあ言うけど驚かないでね。 えっとね、こっちのアロエのが《九万八千ループ》でこっちのハーブが《五万九千ループ》だよ」


 ぅぇえええ!?

 びっくりです!

 高いです!!

 これは驚きますよ!


 アロエのなんてわたしのお小遣い一年分以上です!


 ハーブのですら数ヶ月分……欲しかったのに……。



「…………」


 わたしはお財布を握りしめていた手を力無くたらして俯いてしまいます。

 それを見たイリーナさんがやっぱり申し訳無さそうな顔で一言言って下さいました。


「…………ごめん」









 その後、イリーナさんが取り出して下さった、洗い物係の子達にすっごく評判が良いって言う保湿クリームを売って頂きました。

 《二千ループ》でした。




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森のエルフは過保護さん
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