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騎士団へ行きましょう

 お嬢様視点です




~~良く晴れた暖かな午後~~




 わたくしは読んでいた本をパタンと閉じて横に控えているミリアへ声を掛けます。


「ミリア、お菓子をバスケット一杯に用意してくださるかしら」


「はいマーシャ様、かしこまりました。 お庭へ散策に出掛けるのですか?」


 わたくしの突然の指示にミリアが不思議がります。

 それでもすぐに対応して準備をしてくれている辺り、さすがですわ。

 チョコレートやビスケットなどの持ち運び易い物を中心に詰めていらっしゃいますね。


 その手際の良さに見惚れつつもわたくしはミリアの質問に答える為に扇を手に取り。


「いいえ、騎士団の慰問へ向かいますのよ」


 騎士団の方角を扇でビシっと指し示しながらミリアへ宣言いたします。


「マーシャ様、騎士団の方角はこちらですよ」


 ですがすぐにミリアがわたくしの指し示した方向とは別の方角を示しました。

 あらあら、騎士団はそちらにあるのですのね。


 まあ良いですわ。


 もう一つお願いをしましょう。


「それと、酒庫からお酒を適当に何本か持って来て下さいますかしら」


「はい、すぐに取って参ります」



 そう答えてミリアは退室していきました。

 余計な質問も一切無く、素晴らしい手際です。


 うん、これだけ準備して行けば大丈夫ですわね。

 ではミリアが帰ってきたら騎士団へ向かいましょう。




~~少し後~~




 わたくし達は騎士団の本部へ参りました。

 さて、どうしたものでしょうか……。

 騎士団へ来たのは初めてですので勝手が分かりませんわ。


 それにしても先ほどからずいぶんと目立ってしまっているようです。

 周囲よりこうも好奇の視線を向けられては気になりますわね……。

 まあ、普段なら殿方ばかりのこの場所に女性が二人も居たら目立つのは仕方無いのでしょうね。

 しかもわたくしはどう見ても使用人ではありませんし。


 でもあまり見られると恥ずかしいですから扇で顔を隠させて頂きますわ……。


「お嬢様、慰問と言うことでしたら休暇室へお行きになられますか? それとも先に団長様とお会いになりますでしょうか?」



 扇を広げてコソコソと隠れていたらミリアがそう質問して来ました。

 周りの目があるので普段とは口調を変えていらっしゃいますわね。


 でも、そうですわね……それでしたら団長さんとお会いしましょうか。


「そうね、団長とお会いするわ。 取り次ぎお願いしますわ」


「かしこまりました。 少々お待ち下さい」


 そう言ってミリアが早足で受け付けらしき窓口へ行き、声をかけて下さります。

 なんてお伝えしたのかわかりませんが、若い騎士の方がずいぶんと急いで走り去っていきましたわ。

 途中で棚や椅子にぶつかっていらっしゃったけれど大丈夫かしら……。



~~数分後~~



「お嬢様、団長様とお会いする準備が整った様で御座います」


「そう、では参りましょう」


 わたくしが返事をすると、ミリアは若い騎士の方へ案内するように声をかけました。

 それに『こちらへお願い致します!!』と凄く大きな声で騎士の方が応えます。

 あまりに大きな声にわたくし、驚いてしまいました。


 この場に居るのがわたくしの様な優しい者だったから良いようなものの、お父様の様に気難しい典型的な貴族の方でしたら問題になってしまうかもしれませんわね。

 そんな事になってしまったらこの方が可哀想です。

 今のうちに少し注意致してあげる事と致しましょう。



「貴方、騒がしいですわよ。 もう少し場に合った声量で話せないものなのかしら?」



 うん、大事になる前にご忠告出来ました。

 これで気づいて下さればこの騎士さんの将来も安心ですわね。



「さあミリア……あら? どうなさいましたの?」


 気がかりになった騎士さんの事も終わったので、あらためて団長さんの元へ参ろうかと思って声をかけたのですけれど……何故だかミリアが掌で目を覆ってフルフルと首を振ってらっしゃいます。

 どうしたのでしょうね?


「いいえ、お嬢様……わたしには通じておりますから大丈夫で御座います……」


 ん~……やっぱり何の事か良く分りませんわね。

 まあ良いわ。


 それよりも、騎士さんが真っ青な顔でプルプル小刻みに震えてらっしゃる事が気になります……ご体調がすぐれないのでしょうか?

 これはいけませんね。


「案内出来ませんか? それでしたら下がって頂いて結構ですわよ」


 可哀相ですし、お部屋で休んでも良いのですよ、と声をかけてあげます。

 大の大人の殿方が涙目になってらっしゃるもの……きっと相当お辛いのですわ。


「お嬢様! もう……もうそのあたりでおやめになって下さい。 彼は大丈夫で御座います」


 そうなのでしょうか?

 わたくしには平気そうには見えないのですけれど、ミリアが言うならそうなのでしょう。

 なんにせよ、手早く案内して頂いて解放して差し上げるのが一番ですわね。



 そして団長さんの部屋へ案内して頂きました。


 若い騎士さんがコンコンと控えめにノックして『お客様をご案内致しました……』と弱々しいお声で報告しました。

 ん~、今度は小さすぎる気もしますが……極端な方ですわね。


 お部屋から『お通ししろ』とお返事がありましたのでミリアが手早くドアを開けて下さいました。

 さすがです。



「ご機嫌よう。 お忙しい所失礼致しますわ」


 お部屋の前で優雅に一礼して入室致します。


「これはこれはマーシリア様、お久しぶりで御座います。 ようこそおいで下さいました。 して、本日はどのようなご用件で?」


 団長さんがわたくしを見るなり畏まった挨拶を仰ります。

 何度かパーティーなどでお会いした事があるのですが、毎回こんな感じなんですのよ。

 それにいつもすぐに用件を聞いてきてしまいますのでお話する暇もありませんのよね。

 せっかちなお方で面白くありませんわ。


「相変わらず貴方はせっかちね……まあ良いわ。 先日わたくしが街へ行った際の護衛の方はいらっしゃるかしら? 居るのならお会いしたいのですけれど」


 聞けばあの方々はわたくしの為に休暇中の所を急遽呼び出されてしまったそうじゃないですか。

 申し訳無い事を致しましたわ。


「申し訳ありません。 あの者達は先日から領内警備の任で出払っております」


「あら、そうなのね。 それでは仕方無いですわね」


 残念ですわ。

 出来れば直接お会いしてお礼とお詫びをしたかったのですけれど、やはり騎士の方はお忙しいですのね。

 しかたありませんからお詫びの品だけでも団長さんへ預けておきましょう。


「ミリア、持って来た物を団長へお渡しして」


「はいお嬢様、かしこまりました」


 ミリアはバスケットとお酒を団長さんへお渡しします。


「これは?」


 受け取りつつ団長さんが疑問を呈します。


「わたくしを護衛した騎士達への特別手当よ。 用件はそれだけでお終いですのでもう失礼するわね。 あ、そうそう、また護衛が必要になったらお願いするわね。 ではご機嫌よう」


 団長さんの疑問へそのように一気にお答えして、それに対して団長さんが返事をして来るよりも前にわたくしはミリアに先導して頂いて退室致します。


 

 だって、これ以上詳しく説明を求められてしまったらお詫びの事とかお礼の事とか説明しなければなりませんし……それはすごく恥ずかしいんですもの!






~~その後~~





 自室に戻り一息つくとミリアが仰りました。


「マーシャ様、あのお酒……一本でわたしの月収程の値段の物でしたけど、宜しかったのでしょうか……」




 ミリアが何故だか酷く悩んだ顔でそう言いますが、わたくし、お金の事は良く分りませんの。

 本当に全く分りませんけど、まあ大丈夫なんじゃないのかしら。



「問題ありませんわ。 わたくし達を守り切った報酬としては妥当なのではなくって?」


 なのでこう言っておきます。




 さて、今日はもう疲れましたのでゆっくりお茶でも飲む事に致しましょう。



 後日、お礼の品を受け取った騎士達が、食べた事も無い様な高級なお菓子とあまりの高価なお酒に驚き、そしてこんな良い物が貰えるなら『次もマーシャ様の護衛依頼があったら是非自分を行かせて下さい!』と言ったとか言わないとか……。



※ ミリアの月収>護衛騎士の月収


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