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封筒を選びましょう

お嬢様視点です






~~とある午後のひととき~~




 わたくしは『リンリーン』とメイド呼び出しベルを鳴らします。

 するとわたくしの専属メイドのミリアがいつでもすぐにやって来て――


「失礼します。 お待たせしましたマーシャ様、ご用でしょうか?」


 ――と、すぐ横まで来て声を掛けて下さるのです。


 専属侍女のミリアはこうしてわたくしが呼んだ時や寝ている時などは、ノックや返事を気にしないで主であるわたくしの部屋へ立ち入っても良いと言う権限が与えてあるのでわたくしが特に返事をしなくてもすぐ横まで来て下さるのです。


 それと、ミリアが若干不敬な言葉使いなのは、わたくしが無礼講なので気軽に話して欲しいと頼み込んだからなんですの。

 本来のミリアなら王家の筆頭メイドとしても通用する完璧な子ですのでお間違いなき様に!




「ミリア、ファーミナさんへこのお手紙を出しておいて下さるかしら」


 数少ないお友達であるファーミナさん宛の手紙をわたくしが最も信頼している相手であるミリアへ手渡します。


「はい、わかりました。 ですがマーシャ様、こちらのお手紙は私用と言う事で宜しいですよね?」


 ん、なんでしょう?

 いつもなら二つ返事ですぐに手配をしてくださるのにどうしたのかしらね。


「そうですわ。 いつもの文通ですわよ」


「ではマーシャ様、せっかくですから今回からは封筒をもっと素敵な物に変えましょう」


 わたくしの答えに一つ頷いてから、ミリアはいつも着ているエプロンの裏から色とりどりの封筒を取出してテーブルへ広げつつ言いました。



 さすが……さすがはわたくしのミリアですわ!


 たしかにわたくしは無地の白色の一般的な封筒で出そうとしていましわ。

 地味な封筒より綺麗な可愛い封筒の方が送られた方もうれしいですわよね!

 そんな所まで気が回りませんでしたわ。


 それにしてもわたくしのミリアは優秀過ぎですわね。

 今、ベルで呼び出して言いつけるまでわたくしの用件なんて知らなかった筈ですのに、予め封筒を用意しておいてわたくしに可愛い封筒へ変える様に提案するなんて、信じられない手際の良さですわ。

 


 ついつい緩みそうになる頬を引き締めて、ミリアがどのような封筒を用意して下さったのか確認しますの。


 赤い封筒、青い封筒、桃色やオレンジ色、さらには花や小動物などの絵が描かれた柄物もありますわ。

 これは迷いますわ。


 何を選べば良いのかわかりませんわね。




「マーシャ様、お悩みでしたらこちらの封筒など如何でしょうか? ただいま我が領(ルール地方)で大変人気の高い絵師がデザインした子ぶたが描かれた物で御座います」


 その封筒はピンク地の物で、確かに端の方にまんまるの子ぶたちゃんが二匹ほど小さく描かれております。


 可愛い……のですかね?

 う~ん、正直わたくしは子ぶたより子猫とか子犬とかのが可愛くて良いと思うのですけれど……。


「ミリア、他のお勧めはありませんの?」


 まあ、とりあえず保留にしておいて他のお勧めも聞いてみましょう。

 それから決めても遅くは無いですもの。


「他……ですか。 ではこちらは如何でしょうか? こちらも人気の絵師が手がけたデザインで御座います」


 次に出してきた封筒は若草色で大きくうりぼうが書かれた物でした。


 うりぼう……ぶたと大差無いですわね。


「ミリア、ぶた以外のお勧めはないのかしら?」


「っ!?」


 そう言ったわたくしに、いつでもどんな時でも沈着冷静で滅多に感情を乱さないミリアにしては珍しい事に、酷く驚いた顔をしてわたくしを見つめてきました。


 な……なんでしょうね。

 わたくしがそれ程おかしな事を言ったのかしら?



「そうですか。 (ぶたちゃん……可愛いのに……)それではマーシャ様、こちらの封筒が(無難で)良いかと思われます」 



 う、うぅん?

 所々に何か小声で言った気がしましたけれど聞き取れなかったですわ。

 でも、気にしたらいけないきがしますわ……。


 それはそれとして、今度のお勧めは良いですわね。

 ほんのり青みがかった封筒に小鳥が数羽飛んでいる絵が描かれた物で開放感と可愛らしさを両立していらっしゃるわ。

 これに致しましょう。


「素晴らしいですわ。 今日のお手紙はそちらの封筒で届けて下さるかしら?」


「かしこまりました。 ではさっそく手配してまいります」



 わたくしのミリアはそう答えると手早く広げてあった封筒を片付けて、一礼して退室していきました。



『次こそはぶたちゃんの封筒を……』



 と言う不吉な呟きを残して……。





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森のエルフは過保護さん
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