2 落ちこぼれ
「おい、能無しが来たぞ」
「落ちこぼれのくせにハーレム気取りかよ。うぜぇ」
「今日も無様な姿をさらすんだろうな」
朝食を食べた後、リク達は実技テストが行われる会場に向かっていた。
リク達に聞こえるように言っているこれらの悪口は、全てリクに向けられたものだ。
この光景も、もはや当たり前だ。最初は言い返していたユイ達も、今では何を言っても無駄、とあきらめて無視している。
そして。当のリクはといえば……
「…………」
何も言わず、ユイ達の少し後ろを歩いている。時折話しかけられると普通に返すのだが、自分からは話してこない。寮にいる時と比べると、不自然なほど黙っている。
別に悪口や侮蔑の視線が怖いわけでは無い。そもそも、「落ちこぼれ」と言われる前から、学園内ではこんな様子だ。
リクの変な様子には、実は理由があるのだ。
具体的に言うと、『ある事件』のことをずっと気にしている。
ユイ達もその事は知っていて、そんなことしなくていいと、ずっと言っているのだが、リクは断固としてそれを聞かない。
そうしていつの間にかリクの、学園での不気味なほど静かな態度が定着したのだ。
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そうこうしているうちに、テストを行う体育館についた。
ルキウス学園には、魔術だけじゃなく剣術や医術など、様々なクラスがある。生徒は、そのなかのどれをどれだけやっても良いのだ。
だが、どのクラスの授業を受けても、必ずやらないといけないことが、今からやる魔術の実技テストだ。名目上ルキウス学園は、魔術がメインの学園だから、やっているらしい。
2ヶ月に1回行われるこれは、実はテストと言うほど難しいものではなく、2、3回本気で魔術を使えば終わる様なものだ。
ちなみに、結果は最悪のEから、最高のSSまでの7段階で表される。
リク達は、中で野球が出来そうなほど広く、でかい体育館の決められた場所についた。
テストは寮ごとに行われる。今日は、早く終わらせたかったリクから始めた。
リクは基本、左手で魔造を使う。
今日もいつも通り、足を肩幅に広げ、左手を前に出すという格好で、テストを受けた。
まず、雷を起こす。次に炎。次に風。
魔力を編むこと自体が能力なので、何でも出来るが、やはりそれらは極々小規模なものだ。
「はい、いいですよ」
担当の先生に、結果が書かれた紙を渡された。リクは、下から2番目のDだった。とはいえ、リクの尋常じゃない魔力量や魔術の珍しさも加味しているだろうから、実際の実力はEぐらいだろう。
それを興味無さげに見ると、他の5人に目をやった。
テスト自体はこれで終わりで、後はユイ達が終わるのを待つだけだ。
「じゃあ次、ウチがやるっ」
と出ていったのは、ホノだ。
途端に、あちこちから歓喜の声が聞こえてくる。
もともと彼女達の容姿は、方向性こそ違えど、みんなとても良い部類に入るのだ。ファンなんて人もたくさんいる。(もっとも、それがリクへの妬みになったりするのだが)
さらに、ホノが魔術を使うと、そのあまりの規模に歓喜は驚愕に変わる。リクにとっては最早当たり前だが、ユイ達レベルの魔術を使える人は少ないのだ。
ちなみに、ユイ達の魔術は次のとおりだ。
ラキ→「衝撃烈波」自分の魔力を爆裂させたり、衝撃波を出したりする。単純だが、魔力量が多いため、大規模な爆烈を起こしたり出来る。
サキカ→「究極再生」唯一の回復系。普通の回復と違って、皮膚や血管を再生させて傷を直す。そのため、極めれば、臓器などを作り出せるが、(サキカはそこまで出来ない)傷の無い痛みは治せない。
イル→「爆燃猛火」火を操る。さらに爆発させたり、もともと燃えている物の、燃焼の勢いを強くしたり出来る。
ホノ→「樹力激花」樹や花など、ホノの知っているあらゆる植物を発生させる。植えてある植物の成長を早めたり、遅くしたり出来る。
ユイ→「滅龍氷·零」氷や冷気を使う。もともとユイのゼロリアスの家系自体が、代々氷能力を使う一族なのだが、そのなかでもユイは特別強い。おそらく、5人の中では最強。
ホノ以外の4人でも、見ている人の反応は同じ様なものだ。まずその容姿に喜び、次にその能力に驚く。
が、最後のサキカにだけは、ファンのものでは無い、ねばつくような、気味の悪い視線が複数混ざっていた。
リクだけはそれに気づいたみたいで、そっちをサッと見たが、その時にはもう、その視線は消えていた。
不気味に思い、ユイ達に聞こうとして、やめた。
誰も気づいていないようだし、何より、不要な心配をかけたく無かったのだ。
こうして、全員のテストが終わると、ラキの作った弁当を食べに、テラスに向かった。(当然のように、ユイ達はSSだった)
午後からの授業は無い。5000人の生徒全員を1日でテストするため、そもそも授業など出来ないのだ。
「ラキ姉のご飯、今日も美味いよ」
「そうか?ありがとう、リク」
「ラキの作るご飯も美味しいけど、ウチはユイのご飯の方が好きだな」
「そう?あたしはラキの方が美味しいと思うけどなー」
なんてなごやかに会話しながら、昼食を食べる。
そして、話が午後から何をするか、になった時珍しく全員の意見が分かれた。
そこで、いつもは一緒に過ごすのだが、今日は別行動し、夕食時に各自で寮に帰る、という流れになった。
「じゃあ、また後で」
というリクの言葉で、みんな思い思いの方向へ、足を向けた。
この選択が、後に悲劇を生み出すとは、欠片も思わないで。




