表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12の奇跡はアニマが導くっ!!     ~拾った猫が美少女に変身する奇跡~  作者: Local
第ニ章~夏休み、それは恐怖の時間ですっ!!~
24/36

Episode-23.妹に溺れた姉の、ささやかな願い

 




「………あーあ、止められなかったなぁ………」



 ヒリヒリと痛む両頬を撫でながら、美兎みゅうは溜め息混じりに呟く。 


 ついさっきまでここ、二階の"達也の部屋"で横になっていた可愛い妹は。


 着ていた体操服を放り投げ、満足に動かない体で着替え、勢い良く飛び出して行ってしまった。



「考え直してくれると、思ったんだけどなぁ………」



 自らが綺麗に畳んだ体操服を抱き締めて、がっくりと肩を落とす美兎。


 さくらを治療した彼女だからこそ、その確証があった。


 "普通"であれば、あそこまで酷く甚振られた者は、誰だって、その苦行から逃げ出したくなる筈なのに。


 彼女は"普通"を捨て、"異常"と戦うことを選んだーーーーといったところだろうか。



「………あはは、獣神で在る時点で、普通じゃなかったんだっけ。でも桜ちゃん、若干"M"気質な所、あるからなぁ」



 いや、違う、絶対にそうではない。


 何せ、彼女が愛する桜は、暴力を自ら好んで受けるような、道を外した変態ではないから。


 ちなみに、自分はさくらから受ける暴力ならば、そこから快感を生み出すことが出来る………のだがーーーー





 それは兎も角。


 そんな無茶苦茶な解釈をこじつけて、精神状態を整えなくてはいけない程に、彼女を行かせた罪悪感が美兎を苦しめていた。





 ーーーー頭では分かっていても、心がそうさせてくれないーーーー





 出ていく前に、桜が残したこの言葉の意味が、落ち着いた今になって頭に響く。


 相変わらず、無茶をしてくれる。


 彼女にそこまでさせる達也が、羨ましく思えてくる程に。



「これも、愛有れば成せること、なんだよね………流石にこれで気づかない程、達也クンは鈍くはない………よね?」



 愛有れば、成せること。


 実際の所。


 制止を振り切った桜本人が、そんな事を言っていたような気がする。











 ーーーー美兎姉、それは違いますーーーー





 ーーーー私は確かに弱いです。佳祐さんの身に起こった事件を、絶対繰り返させないと誓ったのに、今ご主人は山の中、それに身の安全は保証できないときているのだから、矛盾もいいところですーーーー





 ーーーーでも、だからこそ、逃げるわけにはいかないーーーー





 ーーーーもう二度と、あの時のように逃げたりはしないーーーー





 ーーーーもう、『大好きだから』といって、ご主人に頼ってばかり、甘えてばかりでは駄目なんですーーーー




 ーーーー強さや弱さは関係ない、大事なのは"やるか"か"やらないか"、ですーーーー











 ………そんな事を、両頬を思い切りつねられながら、言われてしまった。


 彼女の頑固な性格と、達也への暴れ出る好意を顧みれば、こんな痛い思いはせずに済んだかも知れないというのに。



「………いつの間にか、大人になっちゃってたんだな」



 姉からすれば嬉しくもあり、寂しくもある、進歩。


 それは即ち、まだまだ彼女について知らないことは多いということ。二年という歳月は、桜を変える時間にしては少々長過ぎた。


 とすれば、昔数えた彼女の『全身の黒子ほくろの位置』も少なからず変動しているのかもしれない。


 妹を愛するものとして、改めて妹の存在を隅から隅から、表面上から内面上まで、知り直さなくてはいけないだろう。


 美兎は文字通りの"裸の付き合い"を、欲望のままに天に誓った。



「………頑張れ、桜ちゃん。ボクのささやかな願いの為に、絶対に、生きて帰ってくるんだよ………っ」



 一心不乱に天昇山の方向へ祈りを捧げていると、ふと階段を駆け昇る騒がしい足音が響いてくる。


 達也の部屋の戸を勢い良く開けたのは、玄関で番犬を頼んだ筈だった犬、弟の狗太こうただった。



「き、聞いてくれっス、美兎! 桜が二階から降りてきたから、美兎に言われた通り止めようとしたんスよ! そしたら桜、何してきたと思うっスか!?」


「な、何してきたの………?」


「あの娘ったら何も一つ語らずに、冷めた目をしながら鳩尾に頭突きかましてきたんスよ!? それもジャンプして反動を付けて! マジで死ぬかと思ったっスよぉ!」



 なるほど、胸の真ん中辺りを押さえながら入ってきたのは、それが原因という訳だったのか。


 鳩尾に頭突きを入れられた割には、割りと元気良く話しているように見えるが、それを深く追及するよりも『冷めた目で狗太に頭突きする桜の図』が頭から離れなくなってしまった美兎。


 的確に狗太の"鳩尾"を狙い打った桜は、図らずも美兎の"笑いのツボ"まで的確に狙い打ったようで。


 彼女は話を聞くなり、腹を抱えて震えながら踞ってしまった。



「ちょっ、何で笑うんスか!? こちとらまだ痛みが消えてないんスよ!」


「は、あははっ、ご、ごめんな、さい………くふふっ、つ、つい、想像して、可笑しくなっちゃって………」



 酷いっス、と口を尖らせ不貞腐れる狗太。


 こんな時、彼の頭を美兎が宥めるようにして撫でてやると、むくれながらも尻尾をぱたぱた動かす、"ツンデレ狗太"を拝めることができる。


 こればっかりは何年経ったとしても、止めることは出来ないだろう。



「………さあ、これからボク達に出来ることは祈ることだけ。次いでに勝利の祝杯の準備も、ね?」


「………そうなるスっかね。何だかんだ言って、あの頑固者二人が負けるとは思えないっスからねぇ~………まぁ、生きて帰ってきたとしたら、その時は労ってやらんでもないっス」


「あれれ、狗太にしてはいつになく素直だね。どうしよう、これから雪が降っちゃうかも!」


「夏に雪!? どんだけ珍しいんスか俺の労いは!?」



 希望の意を桜に託し、兎と犬は一階へのキッチンへと向かう。


 二人が階段から降り立つと、突如として玄関の扉が開かれる。


 思わず身構えた狗太と美兎の前に現れたのはーーーー











「………今さっき、桜ちゃんが思い詰めた顔で、勢い良く出てったんだけど」


「一体何が起こったのか、話してくれるかしら?」



 達也が時に頼り、時に恐れる幼なじみのかえで麗奈れな


 その顔はやけに真剣で、心なしか怒っているようにも見える。


 幼なじみ達には内緒にするように、と達也から凄まじい口止めをされている手前、このでの登場は厄介極まりない。



「え、えぇと………」


「どうしたの? もしかして、私達に言えないようなことなのかな?」


「いや、そうじゃあなくて………あ、あれっス! 出掛けた達也の忘れ物をですね………」


「ねぇ」



 焦る狗太の言葉を遮り、その胸ぐらをーーーー思い切り掴み上げた。



「っ!? ちょっ!!」


「私は………私達は、あなた達より遥かに長い時間を達也と過ごしてる。そんな私達にそんな嘘、通じると思った? だとしたら随分とナメられたものね」



 感情が汲み取れない、冷たい無表情のまま言い寄る麗奈。


 弟が締め上げられる光景を見てガタガタと震える美兎の頬を、もう片方の幼なじみ、楓が優しく撫で上げた。



「大丈夫、正直に言ってくれれば痛くはしないから………教えてくれるよねっ」



 にっこりと笑う、楓。


 氷のように冷たい無表情もさながらのこと、この状況でこの暖かすぎる笑顔も、より一層恐怖を引き立てられた。



「お、お話します………」



 震える声での降参宣言。


 今、この瞬間に、狗太と美兎の教訓に、また新たなものが追加された。











 ーーーー達也の幼なじみ、怒らせるべからず。











 ーーーーーーーーーーーー





 こんな結果を、誰が予想しただろう。


 獣神きょうだい達の中でも指折りの遠距離術士スナイパー、マミとココが相手。本来ならば刺し違いの覚悟も固めておかなければならない、そんな相手であるのに。



「っ………はぁ、はぁ………ふ、ふふっ、うふふふっ! これは予想以上ですわ。まさかここまでとは………っ!」


「かっ………っかっか、これが『窮鼠猫を噛む』ってやつか………参ったぜ、畜生………」



 彼女が怒りに染まった深紅の瞳で睨み付けるその先には、片膝を付き肩を上下させる狸と狐の姿。


 服は所々破け落ち、余裕を讃えていた顔や腕には幾つもの若い痣を携えている。





 桜は、ずる賢い策士の姉達を屈伏させるほどまでに、追い詰めていた。






次回予告

マミとココを圧倒、膝をつかせるほどまでに追い込んだ桜。


狸と狐、『化かし上手』の二匹を、どうやって追い込むことができたのかーーーー





次回も閲覧、宜しくお願い致します



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ