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12の奇跡はアニマが導くっ!!     ~拾った猫が美少女に変身する奇跡~  作者: Local
第一章 ~特訓です、地獄のGWっ!!~
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Episode-13.眩しい余韻に………

それでは、本編をどうぞ!

 


 覚醒………否、そんな聞こえの良いものではないのかもしれない。言うなれば、そう、"吹っ切れた"というべきなのだろうか。


 頭の中を覆っていたもやが文字通り吹き飛ばされたような、言葉では言い表せないほどの爽快感。


 それに加え、その切っ掛けが小気味の良い"爆発"。ありとあらゆる相乗効果が幸運にも達也たつやの方に働いたのである。



「はぁっ、はぁっ………ま、マジ、かよ………!」



 達也と対峙する獣神じゅうじん狗太こうたが肩で荒く息をついたのは、実に数年ぶりのこと。


 血の気が荒く戦闘好きの彼でさえも、そんな久しい感覚を楽しむ"余裕"なんてものは持ち合わせていなかった。



「なんだ、さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?」


「………それは、こっちのセリフっスよ………何が、何がアンタをここまで変えたんスか」


「んー………強いて言うならお前のおかげかもしれないな………さっきの爆発のおかげでバッチリ目が覚めた」



 顔色一つ変えず、ただただ無表情で淡々と言ってのける表情、振る舞い。驕りや慢心など微塵も感じさせないそれは、素人の二文字とは大きく掛け離れた、さながらーーーー歴戦の戦士と言えた。


 しかし、それに対峙する者もまた、ただの"獣"ではない。



「………はっはは、あんたホントおもしれぇスっね。我慢して待った甲斐があったってもんっスよ」



 狗太はその体に纏っていた黒ジャンパーを脱いで背後に投げ捨てると、両手に銃を持ち直し、口の端も持ち上げ直した。


 黄金色の目に輝きと闘志をたぎらせ、姿勢を低くしながら獲物たつやの隙を狙う"獣の神"。


 仮に、達也が本当に歴戦の戦士だったとしても、彼は一筋縄では倒せないだろう。



「ここからが本番なんだろ?………神城達也の本気、見せてくれ」



 刹那、狗太は目にも止まらぬ速さで距離を詰め、達也の顔目掛けて脚を振り上げ始める。


 この動作は恐らく上段蹴り。


 ここまで銃に頼りきった遠距離戦を主としていた彼が、『接近戦』を織り交ぜてきたのだ。



「………っ!ぐっ!!」



 不意を突かれたが、達也の反射は健在。避ける余裕は無かったものの、腕で防御し辛うじてダメージを防ぐことが出来た。


 しかし、それだけで終わらぬ狗太は、こちらが持つ刀を気にも留めずにロー、ミドル、ハイ、三つ全ての高さを巧みに操り、そのすらりと長い足使った脚術を、存分に披露する。


 まだお世辞にも慣れたとは言えない、刀を持つ右腕を中心に、"右半身"ばかりを狙われてしまった。



「………っつぅ、銃持つ奴が接近戦かよ?………腕が痺れるっつーのっ!」



 腕を伝う鈍い衝撃に顔をしかめながら、刀を振り払い追撃を牽制する。


 何が起きても不思議ではない、この状況下での初歩的な油断。


 達也はその意表を見事なまでに突かれてしまった。これから先は数倍、気を引き締めなければならないだろう。


 相手は獣神、用心し過ぎて困ることはない筈だ。



「………その手に持った武器は飾りかよ。びっくりするから止めてくれ」


「あんたが驚こうが驚かまいが、そんなんオレの知ったことじゃないっス。大体、そこを突いて敵を倒すのがオレのやり方なんでね」



 戦いを前にして、我を忘れるような相手ではなかったらしい。あわよくば、それを利用しようとしていた達也は心の内で溜め息を漏らした。



「………ていうか、蹴りじゃなくて銃撃っとけば仕留められたんじゃ………」



 ふと溢れた疑問に、狗太は体を揺らし、目を見開いて確かな反応を見せる。


 数秒後、達也をビシッと指差し、素直かつ率直な感情を込めた、純粋な一言を口にした。



「それだっ!!」


「………」



 皮肉と冷やかしの塊とも言える狗太が、心のそこから放った一言。心なしか、森に吹く風が冷たくなったような気がする。


「その手があったんスねー」と一人で納得し、うんうんと頷く彼を冷ややかに見詰めていた達也は、以前桜が言っていた"狗太という人物像"について思い返していた。





 ーーーー






 彼………狗太兄は、ぱっと見るとチャラチャラしていますが、獣神のきょうだいの中でも群を抜いて好戦的、むしろ好み過ぎているような、そんな傾向があります。


 いわゆる………"戦闘狂"、というものなのでしょうか、「三度の飯より戦いが好きっスよ!」と豪語していた時も多々ありました。


 そんな狗太兄ですから、戦闘に没頭し過ぎて常識外れな行動を取ることもしばしば………なのでご主人、狗太兄との戦いは油断せぬよう、充分に気を付けてください。






 ーーーー






 "常識外れ"、というワードについては今更ツッコむところではないが、一つだけ、一つだけ今だからこそ言えることがある。


 狗太は"戦闘狂"などではなくーーーー



「………ただの『戦闘バカ』じゃねぇか………」


「なぁにぃっ! バカっていう方がバカなんスよっ!!」



 達也の呟きに、使い古された"バカテンプレ"で返す狗太。この返しといい、叫び方といい、とことんさくらと似通る姿を見ると、やはり心に渦巻く"何か"を感じずにはいられない。


 仲が良いことへの嫉妬、なのか………仮にそうだったとしても、この疎ましい濃霧のような感情が沸く、その理由が分からない。





 知りたいのに、分からない。





 ここまで考え、苦虫を噛み潰したかのように顔を歪ませ、首を激しく横に振る達也。ようやく思い出せた自分のアイデンティティーをまた失うところだった。



「くそっ………あの三年間で変な癖ついちまったな」


「………なるほど、オレを罵倒したあげくに、独り言やらなんやらで更にからかうつもりなんスか………随分と偉いんスねぇ、あんた………」



 思い込みに思い込みを重ねた狗太が、自分勝手に怒りを沸々と沸き上がらせる。


 何故そうなる、と問いかけたくなるものの、額に青筋を立てつつ目が全く笑っていない笑顔を向ける彼を見る限り、これ以上の余計な言葉はこちらを不利にしかねないだろう。


 理性を保った"怒り"ほど怖いものはない。これは昔、二人の講師おさななじみから体を張って学んだ教訓である。



 ーーーーが、どうやら時すでに遅し。その教訓が活かされることなく、狗太の怒りは最高潮に達してしまったようである。



「………なら、もう遊びは終わりっスよ。オレを馬鹿にしたこと、冥土で悔いるがいいっスっ!!」



 恐ろしく鋭利な殺気と共に、数百、数千もの銃弾を打ち出す狗太。


 直接達也に向かい突き進む物もあれば、回避行動を制するばら蒔き目的の物もある、完全に考え尽くされた銃弾の配置。


 完全に理性が保たれたまま、加えて相手は予想以上の策士だった。



 "吹っ切れた"事への代償と言わんばかりの状況に、達也の視界はスローモーション映像のように、ゆっくりと、ゆっくりと減速し始めた。









 彼の少年期、もとい、達也の本来の姿は『直線的思考』、言わば『頭より先に体が動く直感派』。





 一般的には、中途半端や浅はか、甘い考え等々、マイナスイメージに偏よりがちの性格。





 しかし、潜在的に存在する彼の驚異的な"勘"と"身体能力"、一度決めたら曲げない不撓不屈の"精神力"を持ってすれば………





 ーーーーそれは、計り知れない『奇跡』へと化す。






「………右に二歩、そして、凪ぎ払う」



 一瞬の硬直を経て動き出す体。


 寸分の狂いも許されない、死と隣り合わせの銃弾パレードを直感で切り抜けていく。



「屈んで左に緊急回避」



 銃弾が達也の髪を、頬を、脇腹を、脚を掠める。その度に鋭い痛みが体を襲う、が、彼の脚を止めるまでには至らなかった。



「な、何で、何で倒れないんスかっ!?」


「………倒れるかよ」



 刀を自在に操りながらまた一歩、また一歩と距離を縮めていく達也。



「お前らが滅ぼそうとしてるもの………こっちは全部背負ってんだよ、そう簡単に倒れてたまるか」


「………っ………弾倉強化、装填『ビリオン・マシンガン』!!!」



 撃ち出される銃弾が密度、勢いを更に増して達也に襲い掛かる。


 人間でありながら人間離れした能力を持つ彼でも、千、万単位では済まない銃弾を防ぎ切ることは出来なかった。



「………ふざけるなよ、その守ろうとしてるもんが、俺達から『佳祐けいすけ』を奪ったっ!! 助け合わないと生きられないお前らが、数でしか俺らと渡り合えないお前らがっ、俺達から希望をーーーー佳祐を、裏切ったんじゃねぇかよっ!!!」


「………っ………ぁ」



『アニマの籠った銃弾』を全身に受け、激しい痛みに達也は声にならない悲鳴をあげた。


 今にも絶たれそうになる意識の中、何とか弾を弾こうともがくも、吹き飛ばされぬように踏ん張るのが精一杯。刀どころか、指一本さえ動かすのもままならなかった。



「もうお前ら相手にこそこそ隠れんのは終わりだ、オレがこの手で皆殺しにしてやる!!」



 この状況は………不味い、桜が以前言っていたことが正しければ………








『アニマは命の源と言っても過言ではありません。先程挙げた例を実行し過ぎたり、敵の攻撃等でアニマが体内から完全に消えてしまったら………』








 ーーーー『死』





「………緋桜流"神速"の型」



 達也の脚が勢い良く地を蹴る。


 襲い掛かる銃弾の嵐に屈することなく、自らの身の守りを捨て、最後の攻撃、特攻を試みた。



「ぐっ………何故だっ、何故だっ!?」



 達也の突進に、明らかに狼狽の色を見せたじろぐ狗太。


 ーーーーやはり、狗太は『一筋縄ではいかない』相手。


 これぐらいの奇行、余裕でこなせるようにならないと、獣神と渡り合うことは不可能なのだろう。



「止まってられねぇんだよ、こんなとこで………」



 空いていた距離を瞬く間に詰め、刀を握り締める。対象は目の前、簡単に手の届く必中距離だ。


 恐らく、今の狗太は無数の銃弾を放ち、体内のアニマを多く消費している。


 チャンスはこの一度きり、これを逃してしまえば次は無い。





 だから、ここで決める。人類の一撃を、獣神に叩き込むっ!!





「佳祐叔父さんを取り戻すまではっ!!」





 横凪ぎにして振った愛刀、龍聖りゅうせいが見事、狗太の腹部を捉えた。



「………っ………ぐがっ、ぁああぁっ!!!」



 右手に伝わる、刀が肉に食い込む感覚。狗太のアニマを減らしているとは思えない、余りにも生々しい感覚に達也は刀を落としそうになる。




 これは"人殺し"の行為に相違無い、例えそれが、"相手を殺せなかったとしても"………




 しかし、達也は歯を食い縛り、右手に力を込める。彼は、刀を振り切る事を選んだ。


 ここで退いては、変われない、強くなれない。全人類を守ることなど………出来やしない。



「ぐっ………らあああぁぁああっ!!!」



 自分を奮い立たせる雄叫びと共に、刀を全力で振り切る。


 狗太の腹部に残る刀の軌跡から、金色の粒子………彼の『アニマ』が、さながら流血のように、勢い良く飛び出した。



「そ、んな………これ、俺………の、アニマ、っスか………?」



 力無く呟いた後、背中から地面に倒れ込む狗太。


 倒れ込む彼を見届けた後、例にもれず限界を迎えた達也の体も、地の上に伏した。



「あ、ぶねぇ………一撃で、仕留めてなかったら………」



 もう達也の体には雀の涙程のアニマしか残っていない、まさに首の皮一枚といったところだった。


 激痛が走る体で寝返りを打ち、狗太と同じように仰向けで空を見上げる。


 見えるのは、夕暮れ時の紅い空を覆い隠すほど、深く生い茂った木々達だけ。


 そんな木々から漏れる木漏れ日が、倒れる達也の戦いを称え、祝福するように光輝いていた。





 ーーーー眩しい。


 日の光は、青空は、木々はーーーー世界は、こんなにも美しかったのか。





「………これが………」



 この戦いが文字通りの『死戦』であったからか、全力で手に入れた初めての『勝利らしい勝利』だったからか、あるいはその両方か、いずれも定かではない。


 いや、そんなこと、今はどうでもよかった。ただ今はこの余韻に浸っていたいだけだった。





 これが、死戦の果てのーーーー





「ーーーー勝利、か………」





 佳祐が産み出した奇跡に打ち勝った奇跡………純粋な、勝利の余韻を味わう為に、達也はその瞳を閉じた。




次回予告

奇跡に打ち勝ったばかり勇者にも、『現実世界』という悪魔は容赦なく襲い掛かる。


これは逃れられぬ運命、勇者は抗うことなく、今日も戦いに身を投じていく………




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