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第三幕 コスプレヘルス編

 少し話を聞いてくれ、俺は風俗に行くことにした。 風俗に行くことを一大決心したのだ。 だが、いつものようにストレス発散ではない。 今回は頑張った自分へのご褒美として風俗にいくのだ。 ただひとつ、風俗に行くに当たって決めていたことがある。 当然だが、俺はもうあの風俗店には行かない、と心に決めていた。

 この前と同じ鉄を二度と踏むわけには行かない。 だからちゃんと違う店に入った。      

コスプレヘルスだ。 コスプレをして学校や病院といった様々なシュチエーションでエッチなことをする店だ。 俺は期待に胸とアレを膨らませて入店した。 どんな可愛い子が相手をしてくれるのだろうと想像しながら。

 だがどうだろう? そこにはあの汚いおっさんが鎮座していた…… 俺はもっと注意深く店の名前に気を取られるべきだったのだ。

 まさかここが「クラブ下位部‘(カイヴン)」の姉妹店であることに気づいていれば……

 「コスコスでスコスコ」という店名が回文だということに気づきさえしていれば、俺はヘルプで来ていた汚ッサンに会うこともなかったのだ。 畜生、何がヘルプだ。 チェーン店舗の居酒屋じゃねぇんだから他店にヘルプとかするんじゃねぇよ。


「オッサンなんでここにいんの?」

「センセ…… と()べよと、センセ」

「いやだよ。 しかも何で先生に恋い焦がれる女子高生風に言わないといけないんだよ? それより進路相談に来たんだけど」


 俺は学校というシュチエーションでのプレイを選択していた。 俺は生徒役で学生服のコス、汚ッサンは先生のコスをしていた。

 コスプレヘルスでは最初に設定を決めて、軽くそれに沿った演技をしてからプレイにうつるのがお決まりだ。 俺の設定では「進路指導室の先生に自分の夢を相談しに行く」ところから演技が始まる。 

 俺の考えはこうだ。 とりあえず適当に演技をする、そしてエッチなことをしない方向へ持っていき、何事もなく無事に家へと帰還する。 この女教師モノAVのテンションで話しかけてくる汚ッサンに襲われないように、言葉の選択は慎重に選ばなくてはならない。



「んー相談(そうだん)だ? ウソーん」

「じゃあなんで居るんだよ… オッサン進路指導の先生じゃねぇのかよ?」

「おー! ()ってみてっ! いーお!」

「『いーお!』じゃねぇよ。 話し方さっきからムカつくな。 まぁいいや、俺アナウンサーになりたいんだけどどうすればいい?」


「ハハ…アナ? …ップ、ないな… プッ!な!アハハ!」

「失礼だな!人の夢を馬鹿にして笑うんじゃねぇよ!」

「ハハ! アメンボ知恵(ちえ)つけ、吐血(とけつ)、エチ(ぼん)め!  アハハ!」

「発声練習のテンプレで馬鹿にしてんじゃねぇよ!」

「プッ! い…いと(ゆめ)やめゆと、()い… ップ!」

「古文風に馬鹿にしてんじゃねぇよ! やってみないとわかんないだろうが!」

「だめだ」

「なんでだよ!」

「ダメす…… (かな)わないわなカスめ、だ」

「そこまで言うことないだろ…… オッサンに相談した俺がバカだったよ、じゃあな」


 俺は上手く言葉を選べたようだ。 あとはこのままカウンターに行って会計を済ますだけだ。 俺はドアノブに手を掛けた。 そしてドアを開けて通路に一歩を踏み出した。

 ところが何だがネットリとした感覚が背中に伝わってきた。 ベチャ! ベチャ!っと何かが俺の背中に投げつけられている。

 俺はそのまま背中を触った。 すると白い粘液のようなものが付着していた。 これ汚ッサンの分泌液じゃん…… 得体の知れないヤバいヤツじゃん……

 俺は後ろを振り返った。 すると、動物園のゴリラのように興奮して汚物を投げつけていた生物は、その動作をやめた。 そして、四つん這いになってこちらを見つめる、珍妙な生物と目が合った。


後背位(こうはいい)でいい? ()()


 いや、よくねぇし。 そして取るな! 女豹のポーズを取るな! やめろやめろ! ちょっと吐きそうになってしまっただろ!

 危うく吐しゃ物を撒き散らすところだった。 だがそんな俺にエキセントリック・回文おじさんは、さらに追い打ちをかけてくる。 こちらにお尻を向けてフリフリと誘っているのだ。


()きに()け、ケツにキス」


 突かねぇよ…… それにケツにキスってなんだよ? お前は人気アメリカンバンドかよ? ファックとかケツにキスしな、とかそんな言葉を使ってキャーキャー言われて許されるのは、洋楽の人気バンドだけに認められた特権だろ。 さらに汚ッサンは女豹のポースのまま、胸を揉みしだきはじめる。 


「マザマザミルク(くる)み、(ざま)ざま」


 お前は男だからミルク出ねぇよ…… 色んな揉み方を試しても、根本的にダメなんだよ。 そして白目を剥き、恍惚の表情で回文モンスターは呪文を唱えはじめた。


「ぺれぺれぺれぺ、ぺれぺれぺ、ぺれぺれぺれぺ……」


 気持ち悪りぃ…… アクメ顔とかするな、おぞましい…… それに何の擬音だよ? 汚ッサンが唱える呪文には何やら音階がある。 そのメロディはなんとなく聞いたことのあるものだった。 もしかするとアレか? 俺の脳内プレーヤーで、ある洋楽が再生された。 この汚ッサンはもしかすると洋楽が好きなのかもしれない。

 母乳を前置きしたのは、アメリカの某ミクスチャーバンドのアルバム名を言いたかったのだろうか?


「オッサン洋楽すきなの?」

()き! (いま)()っさ! サック、マイ、キス!」


 レッ○リじゃねぇか! さっきのメロディは某○音デラックスの某○ッキーさんが買春でパクられて番組がポシャるまでの間、オープニングで使われていたサックマイキスのイントロじゃねぇか! 俺はレッ○リが好きだった。 ベースなんて世界中のキッズの憧れだ。 汚ッサンとは音楽の趣味が合いそうだ。

 悔しいが、俺はいつの間にか汚ッサンと意思疎通が取れるようになっていた。 すごく、すごく嫌なんだが……  でも少しだけ洋楽の話がしたい。 まだ時間は残っているし、もう少しここにいても大丈夫だ。 どうしたものか…… 


「な、まあまあ…… GUY(ガイ)な? 菓子(かし)しかないが甘々(あまあま)な」


 お菓子? お菓子を出すのか? 汚ッサンはベットの下からズルズルとテーブルを引出し、さらに座布団を敷いた。 まぁ少しくらい付き合ってやるか……

 俺は少しだけここにいることにした。 汚ッサンは部屋を出ると、1分もしないうちにカステラと空のグラスを持って帰ってきた。


「カステラか…… でも飲み物はどうしたんだ?」

「カステラ! スカトロ()かすラテすか?」


 え? 今なんて言った? カステラは分かったよ。 うん、理解できる。 そのあと何て言った? 俺の聞き間違いじゃなければ、それは糞尿のラテだ。

 この危険生物は今、空のグラスに何を注ぐ気でいるのだろうか? 人がカステラを食っている眼の前で、いったい何を絞り出そうとしているのだろうか?

 無理無理ムリムリ! 絶対に無理! 俺はたまらず部屋を飛び出した。 振り返ると危険生物はグラスをケツに当てて悶えていた。  あっぶねぇ! スカトロのラテはお前が飲み干せ、そう思いながら通路を走っていくとドン!と、黒服の店員と肩がぶつかった。


「オイオイ、ニィチャンどこ見て歩いてんだよぉ?」


 よく見ると、店員は黒の学ランを着ている。 店員までコスプレしてんのか……


「ちょいと待ちねぇ、おニイチャン」

「クリーニング代よこせや」 

「お会計一万円になります、おニイチャン?」


 俺は学ランを身にまとった店員三人に囲まれた。 なるほど、会計時も学校のシュチエーションが反映されるのか。  というかこの系列店の経営者は馬鹿なんだろうか? ボーイを多く雇わずに、ちゃんとした普通の嬢を雇えよ。

 嬢一人に対してボーイ三人て、どう考えても頭オカシイだろ…… ただでさえ嬢が嬢じゃない上に頭オカシイのに……


「おニイチャン、お会計済ませないと外には出られないぜ?」

「ゼニ持ってんだろ? あぁ?」

「ちょっとそこでジャンプしてもらっても、いーかい?」


 なるほど、カツアゲ風にやるのね。 それにしてもこのクソサービスに1万円は高けぇ……  もの凄い剣幕で三人の不良グループっぽい店員がガンを飛ばしてくる。 ハイハイ、わかりましたよ! 払いますよ、ちゃんと払いますとも!


「いーかい…? カツアゲ(あつか)いかーい!」


 おあとがよろしいようで


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