44.5:ここまでの設定
※フヴィシュナ
王国。元は豊かな自然と気候に恵まれた山と緑の国だったが、三百年前に起きた大災害で気候が狂い、今は台風や川の氾濫、鉄砲水他諸々の災害が増加している。
丁度この大災害の時期に当時の王室による権力争いが重なったため、上層部から有能な人材の大半が消えた。その悪影響が尾を引き、実は近年まで割とゴタゴタしていたらしい。
そのうち元に戻ると思っていた災害の多発が三百年経っても収まらず、お陰で対策がいまいち進んでいない。
主な産業は木材、山で採掘できる石から作った細工物と、家畜のコトンから採れるミルクとバター。国に魔術師の数は少ないがその分貴重とされており、時折生まれてくる強い魔力を持った子供は、幼いうちから王宮の魔術師団にスカウトされることもある。
山中に延びる道々や国の外れに複数ある小さな港が貿易を担い、周辺諸国ともそこそこ交流がある。
※オーリリア・フォン・ブランジュード
〔装備〕
・オリーブ色のフード付き上着(量産品)
・革の鞄(量産品)
・黒石の首飾り(高位魔術具。幻術特化)
〔付加〕
・神性:微
主人公。濃茶の髪に青みがかった灰色の瞳を持つ少女。王国フヴィシュナ、シェパの街在住の侯爵家息女。十二月(シゥスの月)生まれの八歳。現代日本からの転生者。
領地振興計画のため、日々街や農村でボランティアに勤しむが、そこでは素顔も本名も知られておらず、「天通鳥」の二つ名で通っている。
呑気で快活、マイペースだが、児童虐待関連でブチ切れると鬼のように怖い。敢えて言おう、クズであると!
身体能力がやたらと高く、頑張れば熊と格闘ができる。また薬師の教えと独学で、薬草学の勉強中。自作の薬を片っ端から我が身で試した結果、薬物には多少の耐性ができつつあるらしい。
恒久発動型の魔術で日々無意識に身体強化をしているため、常に微量の魔力を全身に纏っている。が、基本スペックはあくまで「チートになりたい凡人」。
転生前の日本では、「鷺原桜璃」という名で普通の家族と普通に生きていた一般人。厳密には日本人だったのは「前世」ではなく「前々世」なのだが、その辺の記憶は当人にはない。
番外編連載、『かつて見た果て』参照。
※ラトニ・キリエリル
〔装備〕
・フードの千切れたダークブラウンの上着(量産品)
・布の鞄(量産品)
・大きな紺色の帽子(低位魔術具。軽度の認識阻害効果付き)
〔付加〕
・神性:???
オーリの相方にして主人公その2。シェパの街唯一の公営孤児院である「イグリット孤児院」の所属。一月(ムキツの月)生まれの、もうすぐ七歳。
琥珀色の瞳に、ショートの深い群青色の髪。髪は茶色みがかった黒に染めている。強い魔術を使うと染め粉が落ち、また瞳が金色に光る。
氷の精霊が間違って人に生まれてきたかのような凄まじい美少年だが、普段は顔の上半分を前髪や帽子で隠している。
今から三百年前のフヴィシュナで、現代日本から転生してきたオーリ(当時の名前は『オウリ』)と出会い、共に十代半ばで死亡。その後正真正銘のチートと化して、記憶を保持したまま今の時代に生まれ変わった。
前世のトラウマから、赤色、特に黒みがかった濁った赤をオーリが身に着けているのが嫌い。現代日本云々の事情は知らない。
単体では極めて大人しい無関心系穏便派だが、オーリを絡ませると途端に富士の樹海よりうっそり怖くなる。
敬語で無表情、ツンの強いクールツンデレ、こっそりヤンデレ。オーリに対する執着心はとことん強いが、一方それ以外の存在にはどうにも情が薄いドライな子。
三百年前、血を吐くような思いで己の幸せを願ってくれたオウリのことが忘れられないし、忘れたくない。また、その記憶が彼の精神的支柱ともなっている。番外編連載、『かつて見た果て』参照。
前世では遠慮もあって距離を詰められなかった結果ああいうことになったので、その反動もあって今世はもう離れる気がない。早く僕のこと思い出してください、オーリさん。
水の魔術適性が異常に高く、既に自己流で幾つかの魔術を扱える。
ただし、魔力量と魔術素養は物凄く高いものの、現時点でのスキル自体は上級の魔術師には負けるレベル。意図的に力を大暴走させることなら出来るが、まともな師も教本もないため高度なコントロールは未修得。
体温が低い。
※クチバシ
オーリが王都を訪れていた時傍にいた、水色の小鳥。実はラトニの操る術人形で、一時的に術者の意識を移すことも出来る素敵仕様。ハイスペックストーカーですね分かります。
エネルギー源が魔力なので通常の食事は必要ないが、摂取した飲食物を魔力に変換して使うことも可能。言うなれば全身が魔力の塊であり、それ単体に生き物としての自我や生命はない。オーリがシェパに帰ると同時に姿を消した。
※オルドゥル・フォン・ブランジュード
オーリの生父。ふっさりした茶髪とちょび髭の四十代。
一見小太りで気の良いおじさん侯爵だが、目が笑ってない笑顔でさらりと人を陥れられる狂気があるので怖い。オーリのことはそれなりに可愛がっているようだが、家族としての情は意外と薄い。裏でイロイロやってる隠れ下衆な人。
昔は浮気相手を屋敷に連れ込むこともあったようだが、妻に二、三回遭遇してからはそもそも帰らないようになったらしい。使用人に対する扱いは、別に悪くもないけど情もない。使用人? 別にどうとでも出来るから、何見られても良いんじゃないかね?
仕事はやる気になれば割と優秀だが、領民の役に立つことはあまりしてくれない困ったさん。
※レクサーヌ
オレンジがかった金髪。オーリの生母。
二十歳間際で侯爵家に嫁いだ後オーリを生んだ、無口無表情の長身美女。ぎりぎり二十代。夫と同じく、屋敷にはほとんど帰らない。
オーリのおねだりは大体ノータイムで聞いてくれるが、正直家にもオーリにもあまり興味がない。
夫のやっている何やかやには直接関与していないが、目の前で起きていてもさらりと無視する無関心の人。あら、使用人に顔なんかありましたこと?
ブランジュードに嫁いできたのは、実家の指示に従った結果。
実は他に好きな人がいたらしいが、結局想いを告げられないまま婚姻に至る。そこそこ複雑な青春時代を持つ人。
※アーシャ・マクネイア
薄い紫色の髪を後頭部で団子にした、オーリの傍付き侍女。非常に有能だが、オーリの猫被りの最たる詐欺被害者でもある。
十八歳の時、当時0歳のオーリと出会い、以降彼女を子犬のように溺愛している。うちのお嬢様、超アホ可愛い。
※イレーナ・ジネ
シェパのストリートチルドレン最大勢力のリーダー。十代半ば。サイドで纏めた豪奢な金髪と鳶色の目を持つ美少女だが、中身はサバサバした姉御。
オーリに関しては、実家が貴族級の金持ちであることと「オーリ」という呼び名のみ知っており、相互協力関係にある。オーリを薬師と呼び、また共犯者と呼ばれる。
オーリのことは好きだが、多分必要があればあっさり見捨てる。あくまで仲間が第一の現実主義者。
※イアン・ヴィーガッツァ
シェパ警備隊の総副隊長。灰色がかった銀髪を短く整えた、二十代後半の男。
オーリの素顔も本名も知らないながら、その柔軟性によりひっそり相互協力関係を築く。
下級貴族出身で、上級貴族の上司と不真面目な同僚たちに悩まされている苦労人。
※ジョルジオ・ブルーローズ
並木通り近くの小さな診療所の薬師。やたらごっつい元気なじいさん。
弟子未満であるオーリとラトニを不器用に可愛がってくれるが、口も悪いしよく手が出る偏屈ジジイ。掃除をサボるとお舅様化する。
二人の弟子未満に関しては「オーリ」「ラトニ」という呼び名のみ知っているが、実際の呼び方は「子雀その1」「その2」。美麗な姓がコンプレックスの六十代独身。巨乳好き。
元は旅の行商人をやっていた。代々孤児を弟子に取り、希少な薬草である「ミツツムリ」の印章を受け継がせてきた薬師の系譜。
実はその系譜の最初の一人が、オーリが二度目の人生で親しくしていた某薬師だったりする。番外編連載、『かつて見た果て』参照。
※ルシア
ブランジュード家と何らかの縁がある、古い精霊。年初めの一日しか会えないものと推測される。金髪青メッシュに露草色の目、肌に埋め込まれた青い石の飾りを持つ美少女だが、口調はとことん年寄り臭い。
※ゼファカ・サイニーズ
シェパの街のガキ大将。オーリに片思い中のヘタレ。しばしばラトニにボコられている。
※ジル
正体不明の、多分他国人。肩まで伸びた薄い金髪とピーコックグリーンの垂れ目、間延びした口調の美青年。以前シェパで起きた連続誘拐事件の関係者。
※エイルゼシア・ロウ・ファルムルカ(エルゼ・マックルーア)
フヴィシュナの公爵家長子で、子爵位持ち。現王の降嫁した妹の子で、現王の甥。王位継承権持ち。
紫銀の髪と青い目の、水仙のような美貌の青年。大人びて見える十六歳。オーリとは「エルゼ」という名の冒険者として王都で出会った。笑顔は爽やかだが、敵に回すと怖い人。
※リーゼロッテ
エルゼの妹。十三歳。磨き上げられた紅玉のような、赤毛に赤い瞳の美少女。もしも将来兄が王位に就いたら、公爵家は婿に任せず、自分で実権を握りたいと思っている。
※ヴィアレンフィル・ロア・フヴィシュナ(レン)
現王(五十歳)の腹違いの弟(八歳)。白皙の美貌に黒髪の少年。前髪で左目を隠しているが、右目は髪と同じく漆黒をしている。今一番興味がある相手はエルゼとオーリ。
※魔石、素材
魔獣の体や地中から採取できる魔力の結晶体。
※封珠
魔石に魔力を込めることで、キーワード一つで炎や雷、光等々の魔術を発現できるようにしたアイテム。使うだけならほとんど魔力を持たずとも発動させられるため、少し裕福な家では明かりの封珠をランプ代わりにしたり、発熱の封珠を懐炉に使うこともある。
※魔術具
封珠よりも高度な魔術を生み出せるが、操作にも相応の技術が要求される。腕輪型、帽子型、時計型など、様々なタイプが存在する。高価。封珠と魔術具を総合して「魔術道具」と呼ぶこともある。




