第1話 太陽の歩み
本作は恋愛要素を含んでいるため、念を押してR15タグを付けています。R15に該当する描写が無い場合もありますが、そういった話の場合もR15タグを付けていますので、御了解をお願いします。
「ふあぁっ……なんだ、もう朝かー。」
太陽が昇り、今日も朝がやって来た。
そして太陽と共に、今日も俺は歩き出す……
俺の名はサザロス。長い赤髪と額のアホ毛が特徴の15歳だ。
何より、太陽の国と呼ばれる国『アポロンズフィールド』の王子でもあるんだ。
アポロンズフィールドの王子だ。
大事な事なので二度言ったぞ?覚えておいてくれよな。
そんな俺は今、国を離れて修行の旅をしている。
何故かって、父さんに「次期国王に相応しい」と認めて貰うためだ。
父さんは国の国王で、俺や国を大切にしてくれた男前だ。
そんな父さんは、俺がまだ12歳だった3年前にこう言った。
「サザロス、お前なら立派な王になれる。
王に相応しい力をお前が付けた時、お前を一人前と認めよう」と。
それを聞いて、俺はじっとしていられなかった。
己の父親に与えられる、『一人前』の称号……
それこそは、その立派な生き様を褒め称える証と成るのだ。
……という事で、俺は父さんに認めて貰うために旅に出た。
決まった行き先の無い、気ままな修行の旅。
その旅で、剣術や体力、勇気……色んな力を付けていった。
そして、3年の時が経った今でも旅をしているのだ。
……帰り道が分からないのも一里ある。旅が楽しいから良いけど。
「さぁてと、まずは食料になる木の実を取るか……」
今日もいつも通りに、まっ平らな草原の一本道の真ん中を歩く。
見上げれば、そこには木の実いっぱいの木々がある。
思わず見とれてしまう……でも届かないんだよ、畜生。
「……ねぇ、君。」
と、上ばかり見ていた俺に前から呼び声が聞こえる。
……変だなぁ、さっきまで前に人なんて居なかったのに。
まぁ、久しぶりに他の人を見たわけなので、ちょっと嬉しい気持ちで前を向く。
そこに居たのは、ローブとフードで素顔を隠した男だった。
人は、こういう格好をした奴の事を総じて不審者と呼ぶ。
「その服装だと、アポロンズフィールドに住む上級の人みたいだね。」
何なんだこの人、俺の服を見ただけでそこまで分かるとは……
やっぱり不審者だろうか。
「スゴいね、アポロンズフィールドから来たって事は……この星の裏側まで歩いて来たって事になるよ」
「何だってぇーーーーーッ!!!?」
もう駄目だ、帰る気が起きない。あと3年間歩かないと帰れないって……
いっそこの草原に住もうか、食料もある事だし。
そんな野宿人生について考えていると、相手は優しげに言った。
「悩まなくてもいいよ、僕に良い案があるんだ。」
そう言うと、相手はローブの中から地図を出した。
「この近くに、科学と自然が調和した街……ヘブンシティがある。
此処に行ってみたらどうかな?どうせ帰れないんだからさ。」
彼は、この一本道の向こうを指さして教えてくれた。最後の言葉が痛かったけど。
その説明を聞くには、どうやら快適な暮らし具合らしい。
所謂『魔法』が使える俺の国では、科学力ではなく魔力を軸に生活していたから、この街では新たな発見もあるだろう。
しかも自然まである、と来ると……
『行かない』なんて選択は勿論無い。
「じゃあ行ってみるよ。提案ありがとな、誰だか知らない人!」
「うん、存分に楽しんでおいでよ……サザロス。」
「ああ……って!どうして名前知っ……」
別方向に歩いていく際に、彼は俺の名前を呼んだ。
教えていない筈の、俺の名前を。
どうして知っているんだと聞きたかったけれど、振り返った時には彼は居なかった。
何だか怪しい人だったけど……何だったのだろうか?
しかし、そんな事を気にしている暇なんて無い。
この先には、ヘブンシティが……憩いの場所があるのだから!