フェザーフットVSノーム
もう勘弁ならねぇ。貸した物を返さない。度し難い悪行!!
俺はノーム族のタッナカの家に朝一で怒鳴り込みに行った。
「おいっ、タッナカ! 2万ゼム返せよっ! あとミスリル鍋も返せ!! 今日彼女がうちに来るんだよっっ」
土壁の丸っこい、いかにもノームな家から小柄で丸っこい体型のタッナカがだるそうに出てきた。
「近所迷惑ですよ? スズッキーさん。お金はその内返しますから。ミスリル鍋に関しては彼女が来るから、という理由は解せませんね。今日、ポークジンジャーを焼く予定なので」
コイツっ、俺がフェザーフットでノームより小柄だからって『行ける』と思ってんなっ!
「彼女にパンケーキ焼くんだよ! 俺はパンケーキを美味しく焼く為にミスリル鍋が必要。そのミスリル鍋の持ち主は俺、スズッキー。お前、タッナカじゃない? 俺がその鍋をお前に貸したのは2ヶ月前、要約すると···いい加減にしろやぁっ!!」
閉口、て顔のタッナカ。
「1回落ち着きましょうか?」
「落ち着かねぇ! 中で話すぞっ?」
入ろうとするとめちゃドアを狭めて最大のパワーで阻止してきやがったっっ。
隙間に革靴を入れて閉じるのを防いでやる!
「入れろやっ!!」
「どうでしょう? いやどうかな? ほら、散らかってるし、今日はポークジンジャーを焼くので」
「ポークジンジャーとは豪勢じゃねーかっ! だったら2万ゼムくらい返せるよなっ!!」
金も鍋も返さない。このノーム!!
「食堂なんかで頼むより自炊すれば安くあがりますよ? 今日ポークジンジャーを食べるのに、ここ数日節制してたんです。昼食は連日豆スープと干し葡萄でした。わかります? 今日は特別なんです」
「あーん? なんで今日なんだよ?」
「いや、だから」
「どうしたの?」
「「?!」」
振り返ると酒場で働いてるハーフノームのボニータが家の前まで来ていた。
「ボニータ! すぐ済むからちょっと散歩しててくれないか?」
「えー? ここまで歩くので疲れちゃったよ〜」
コイツらぁ〜っっ。
「ボニータ! 残念だがポークジンジャーは安鍋で焦げるし、お前の彼氏は月末に2万無くしてすってんてんだ!! ざまぁっっ」
「な、なによこの人〜。ちょっとタッナカくーん。フェザーフットの人なんとかしてよ〜」
俺も常連だが名前覚えられてねーしっ。圧倒的フェザーフットへの軽視!! もうっっ、限界だ!
「どらぁっ!!」
「うわっ?!」
俺はドアを逆に引いてタッナカをすっ転ばせ、中に飛び込んだ。フェザーフットの身のこなしと素早さ! 甘く見んなよっ。
ぬぬっ、キッチン! 豚の一枚肉! スパイスセット! パター壺! 塩! ···ミスリル鍋ぇっ!!
「GETぉっ!!」
ミスリル鍋回収。
「ああ酷いっ。友達じゃないか?!」
「友達は借りたもん返すんだよっ。お前はただの『返さない方のノーム』だっ!!」
次は金金···コイツは雇われ左官屋だ。仕事用の···泥まみれ、ウェストポーチ!! が棚にONっ!
「おらぁっ」
「それだけは〜っっ」
タッナカののろまな突進を掻い潜り、ウェストポーチを引ったって開け、中の財布の厳重な内ポケットから年季の入った小銀貨を一枚発見!
「よっしゃっ、2万ゼム回収ー!!」
「酷いっ、月末どうすれば···」
「そんなん簡単だろ? 戸口に『お友達』がいるぜ?」
2人の視線が集まるとボニータは、
「っ! あれ? なんかお腹一杯かも? じゃ、タッナカくん、またお店でね? あはっ」
ボニータはすごい早足で遁走していった。
「そ、そんな〜」
ヘタり込むタッナカ。···ふん。確か、ここ数年彼女がいないとか言ってたな。
「おっと〜! こんなとこに美味そうな豚肉あるじゃん? 鉄貨2枚で買ってやらぁ」
テーブルに2枚鉄貨を置き、安もんの皿と合わせても大体鉄貨1枚くらいだろう美味そうな豚肉の皿を取る。
「スズッキー···」
「じゃ、あばよ」
颯爽で出てゆく俺。
「あのさ!」
「んだよ」
「できれば鉄貨をもう一枚貸し」
バタンっ! 俺はドアを後ろ手で閉めた。
あー清々した。
今日は肉焼いて、鍋洗って、デザートにパンケーキ! いい日になりそうだぜっ、ひゃほう。




