勾玉の所有者:三上ヒカル
こうして生徒会長とオカルト研究部の体験入部を取り付けた俺と朱莉は教室に戻って話していた。
「いやーまさか体験入部とはね」
「でもなんで急にそんなこと考えたの?乗り気じゃなさそうだったじゃん」
「会長が“こんな馬鹿げたものがあるこの高校に平和を取り戻したい”って言ってただろ?あの言葉は真剣そのものだった。それに俺もこんな能力によってとんでもないことに巻き込まれている人間の一人だ。もしも今後こんなことが起きなくなるなら、それには協力してやってもいい。」
「それに一刻も早くこの学校に平和が戻れば、つまり能力者もそうでないものも安全に学校生活を送れるようになれば、俺もその後は勉強に集中できる」
「結局勉強のためなんじゃん」
朱莉は笑った。そして俺に尋ねる。
「3年間オカルト研究部として青春を謳歌する気はないの?」
「無い、というかオカルト研究部って怪しすぎるだろう。部員がこれ以上増えるとは思えない。そもそも会長も生徒会の外部組織にあたるって言ってたしな。普通の生徒が入部できるかどうかもわからんだろう」
「そっかー、まあでも楽しみだね、体験入部。能力者ってどんな人なんだろう」
「さあな」
それから数日間は何事もなく俺たちは過ごした。俺は勉強に集中することができたし、まあ朱莉も楽しくやっているだろう。会長からの呼び出しがあったのはそれから一週間後の昼休憩のことだった。
「1-A、秋原朱莉、1-B氷室翔太、生徒会室へ来なさい、繰り返します、1-A、秋原朱莉、1-B氷室翔太、生徒会室へ来なさい」
初めて呼び出されたあの日と同じアナウンスがかかる。俺は1-Aに朱莉を呼び出しに行く。
教室を覗くと相変わらず朱莉は友人たちと昼食をとっているところだった。
「あれ、彼氏君久しぶりじゃん」
朱莉の友人が俺に気付いて声をかけてくる。
「だから違うっての。ちょっとお昼食べ終わるまで待って」
「そんな時間ないだろ、多分。先行っとくぞ」
「えー、後おにぎり一個だから待ってよ」
「女の子を待てない男はモテないぞー」
「茶化さないでください。というか生徒会長からの呼び出しなんだから仕方ないでしょ」
「生徒会長直々に呼び出しってあんたらなんかしたん?」
「何もしてません」
「オカルト研究部っていう部活の体験入部のこと」
「え、朱莉オカ研なんか入るん?」
「いいでしょ別に、女バスと兼部だから」
「なるほどねー、まあ頑張ってー」
「うしっ、食べ終わった。行こ!」
こうして俺たちは生徒会室へと急いで向かうのだった。
「「失礼します」」
「呼び出したわりに遅いです、すぐに来なさい」
生徒会室に着くや否や、凪目副会長のお説教が飛んできた。
「だから言っただろ」
俺が小声で朱莉に耳打ちする。
「まあ今日呼び出したのは他でもない、体験入部の件だよ。君たちに調べてもらう調査対象の能力者について調べた。それを共有するから、放課後に接触してみてくれ。目的は能力について聞き出すこと、そして生徒会に協力的になってもらうことだ」
「あの、能力について調べることは分かるんですが、生徒会について協力的になってもらうことというのは具体的にどういうことですか」
「そうだね、君達には儀式について何度か喋っているよね。詳細は教えていないけれど、儀式が僕にとっての悲願であること、そして儀式をすればこの学校の恒久的な平和を実現させることができることは分かっているよね」
「ここで一つ情報を開示しよう。儀式にはね、能力者が複数人必要なんだ。君たちに協力してもらったとしてもまだ足りない。だからほかの能力者にも儀式に協力的になってもらう必要があるんだ。そのために能力者たちにはまず一旦生徒会自体に能力を開示、そしてむやみ能力を使わない契約をしてもらいたい。そして生徒会の傘下に入ってもらって来たるべき儀式のときには協力してもらう約束を取り付けてきてほしいんだ」
「まあ言ってしまえばオカルト研究部の部員としてスカウトしてきてよ」
「なんか今話飛躍しませんでした?」
「オカルト研究部は能力者によって構成された能力者のための生徒会外部組織になってもらいたいんだ。だからまあ名目上オカルト研究部に勧誘するという約束を取り付けてきてほしいってこと」
「そもそも俺たち体験入部なんですが」
「だからこの後断られたら打つ手が無くなって退学させるしかないってこの前言ったでしょ?退学したくなかったら入部してくれよー、お願いだからさあ」
会長は椅子をくるくる回しながら情けない声を上げている。が、言っていることはえげつない。入学して一週間ちょっとの新入生に退学をちらつかせるとは。脅しと何が違うんだ。
「まあそういうことだから。あんまり断らないでほしいなっていうお願いね。それと接触してもらう能力者についても話さないとね」
「接触してもらうのは2-A、三上ヒカル、黄色の指輪を持った女の子。女子バレー部の副部長をしている。見た目は金髪のショートヘアにちょっと高身長なのが特徴かな。まあバレー部だからね。皆背は高いと思うけど」
「放課後会いに行ってよ。多分第2体育館にいるはずだ。女子バレー部がそこで練習しているはずだから。じゃあよろしくね」
そういって昼休憩終了のチャイムと共に俺たちは生徒会室から出てきた。
「どうする?オカルト研究部に誘えだって」
「まあオカルト研究部で能力者を集めていて、名目上参加してもらうだけでいいので……って言えば、参加してくれるんじゃないか?」
「そうかな、というか先輩なんだね。三上さん?だっけ。やっぱり先輩の中にも勾玉の所有者がいるんじゃないかっていう翔太の推理当たってたんだ」
「みたいだな、ま、放課後会いに行ってみよう」
そう言って俺たちは放課後に第2体育館前に集合する約束をして別れた。
放課後
俺は第2体育館前で朱莉を待っていた。
やはり緊張してきた。これまで事件らしい事件が起きてないとはいえそれはこれまで能力者同士が接触することが無かったからだろう。いざ会ってみて三上先輩が激しい人だったらどうしようか。戦闘になる可能性も危惧しないといけない。だが、黄色の勾玉……。
いったいどんな能力なのか想像もつかない。黄色だから光か何かに関係する能力だろうか?しかし黄色と一概に言っても色々あるしな……。なんとなく宝石のトパーズのようなものをイメージしているのだが違うのだろうか。
そしてもし戦闘になったとして、どうすればいいんだ?氷で氷漬けにする?だがあの日の疲労を思い出す限り人間を氷漬けにできるほどのエネルギーがあるとは思えない。朱莉の炎で燃やす?それは可能かもしれないが引火したり、下手すればそのまま三上先輩が死んでしまいかねない。やはり絶対に戦闘は避けねばならないな。
そう思っていると、
「お待たせ―、もう三上さんとは会った?」
朱莉がやって来た。
「いやまだだ。戦闘になったり、話をすることも考えて一人より二人の方がいいだろうと思って待っていた」
「ほんとはビビってるだけじゃないの?」
「……」
否定はできなかった。能力者との接触、まあ朱莉も能力者だから初めてではないのだが、あの時とは勝手が違う。俺たちはこの勾玉の秘められた力を知っているし、相手も2年だから恐らく能力については知っているだろう。危険性は段違いだ。
「まあそんなに心配しなくても大丈夫だって。案外何とかなるなる」
朱莉はそう言って第2体育館の扉を開けた。
「お邪魔しまーす」
慌てて俺もついていく。
「どうしたの?新入部員の子?体験入部かな?」
女子バレー部の先輩らしき人がこちらに駆け寄ってくる。
「あ、いいえ、私たち三上ヒカルさんを探していまして」
「ヒカル?いるよ?呼んでこようか?」
「助かります」
「ヒカルー、一年生が用事だってー」
その先輩は三上先輩を呼びながら体育館の奥へと消えていく。しばらく俺たちが待っていると会長に言われた通りの金髪のショートカットで高身長の人がさっきの先輩に連れられてやってきた。恐らくあの人が三上ヒカルだろう。右手を確認するが指輪は着けていない。
「はい、三上ですけど。あたしに何か用?」
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