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オカルト研究部

「そう、オカルト研究部はね、この学校に代々あるんだ。けどオカルト研究っていうのはまあ建前なんだ。本当の正体はこの勾玉の力を管理する生徒会とは別の組織。生徒会は学校全体を見張ってオカルト研究部はこの勾玉関係で起こる校内の事件を調査して記録していくのが目的の組織なんだよ」


「さっき言ってた信頼に足る情報源っていうのは代々オカルト研究部が残してきた研究ノートのこと。その研究ノートには勾玉の能力や勾玉の所有者の特徴、勾玉で起きた事件の記録、そして勾玉で行える“儀式”についてまで細かく書いてあるんだよ」


「へぇ………すごい」


「そんなノートがあるんですか………。それで会長は勾玉の所有者ではないけれど勾玉について詳しかったと」


「そう、で頼み事ってのはオカルト研究部に入部して君たちにその役目を担ってもらいたいってことなんだよ」


 会長はソファの背もたれから少し起き上がって話を続ける。


「今現在能力者は君たち含めて5人いる。そのうち3人はこっちで一応把握はしてるんだけど能力がどういうものなのか、それがどんな人物か分かっていないんだ」


「なんでですか?それこそオカルト研究部の役目なんじゃ?」


「そうなんだけどね、オカルト研究部は随分前から廃部になっているんだ」


「廃部?そんなに重要な組織なのに?」


「そう、僕が把握している研究ノートの日付は7年も前のものになっている。7年前から入部希望者がいなかったんだろうね、廃部になっちゃったみたいでさ。それからその当時の部長が恐らくこの生徒会室に研究ノートを持ってきてから生徒会長が引継ぎを行っているわけ」


「だから今現在の能力者の情報も分かってないんだ。指輪をつけているから外見で誰が能力者かは把握できるけど、その能力までは不明なんだよね。でもさっき言ったように能力が暴走することもあるらしいからそのまま放置しておくには危険すぎるのは分かるよね?」


「だから僕としては能力者を把握したいし、そのために勾玉関連の専門組織としてオカルト研究部を復活させたいんだ。そういうわけで君たちにオカルト研究部に入部して欲しいっていうのが頼み事の正体ってわけ」


 会長の話はもっともだ。こんな危険な能力があと3つもある学校だと知っていたら俺は間違いなくここに入学することはなかっただろう。さっきの朱莉の炎なんか人間に当たればその人間は間違いなく命を落とす代物だ。俺の出した氷の欠片だって突き刺されば人間の命を奪えるようなものだ。だが………。


「引き受けてくれるかい?」


 と言われてしまうと二つ返事ではいというわけにはいかない。恐らくこんなことをしていては平穏な学校生活からは程遠い生活になるだろうことは想像に難くない。


 それに加えて相手が能力者となれば俺たちだって命を落としかねないのだ。それに現状はそんな能力があるなんてことは噂話にもなっていない。実際に俺も入学する前にこの学校について調べたがそんな噂は聞いたこともなかった。このまま静観を決め込む方が学校側としてもいいのではないだろうか?


 隣の方をちらっと見る。朱莉も思案顔だ。こんなことに首を突っ込みたくないのは誰だって同じだろう。


 朱莉が口を開いた。


「私女子バスケ部に入るつもりだったんですけど」


「は?」


 なにで悩んでいるんだこいつは。そんなことはどうでもいいだろう。どう考えても身の安全とかそっちの方が重要だろうが。


「兼部できるようにしてあげるよ。というかオカルト研究部はそんな大々的に活動してもらうこともない、あくまでも生徒会の外部組織が本業で表向きにオカルト研究部と名乗ってもらうだけだからね」


「だったら、まあ、私はやってもいいですよ?」


 おいおい、正気か?絶対何にも考えてないよな………こいつ。


「どう考えても危険すぎる、僕はそう思います。相手は能力者なんですよね。さっきの朱莉の炎………。あんなもん人が喰らったら死にますよ?そんな能力者たちを相手に活動するってことですよね。まさか学校の部活動中に命を落とすなんて、しかもファンタジーみたいな能力によって命を落とすなんて馬鹿馬鹿しい。そもそも俺は平穏な学校生活を歩むつもりだったんです。勉強漬けの生活をね。そのためにわざわざこの学校に入学したんですから」


「そもそも現状の時点で誰が能力者かは把握できているんですよね?それでも事件になってないんですよね?だったらそのままにしておいた方がいいんじゃないですか?下手に能力者たちを刺激して危険に巻き込まれるのはあなたじゃなくて調査することになる俺たちなんですよ?絶対にお断りします」


「あーなるほどそっかぁ。確かに危ないもんね。それにオカルト研究部ってそんなに楽しくなさそうだし………。私もやっぱやめときます」


「そうか………。だがね、それでは困るんだよ」


 会長はソファから立ち上がり中央の会長専用の椅子に腰掛ける。後ろの窓から西日が差し込んでいる。西日を背中に受けた会長は陰に包まれる。


「今君たちはこの学園の秘密を知ってしまった。そんな人間を野放しにするわけにはいかないんだよ。君たちは能力の存在のみならず使い方までここで知ってしまった。もしそんな人間がこの部屋から出ればどうなると思う?氷室君、君は秋原さんの炎を人を殺せる力だと言ったね?君の能力も僕から見れば十分殺傷能力のあるものに見えるよ。そんな君たち二人が共謀してこの部屋から出て一般生徒を殺害する可能性だってゼロではなくなったんだ。今ここで能力について知ってしまったことによってね」


「そんな………、私人殺しなんてしませんよ!?」


「当然俺もそんなつもりはないですが」


「でもゼロとは言えない。君たちが能力を使わないという保証はできないからね。つまり僕は君たちをこの部屋から能力を使う可能性がゼロになるまで出すわけにはいかなくなったわけだ。ただしそんな証明はできないからね。人間は自分の潔白を自分では証明し得ない」


「だからこそ、僕が君たちを信用する条件としてオカルト研究部への入部という条件を出しているんだよ。これに乗らない限りキミたちをここから出すことはできない。せめても能力を使わず、そしてその能力を学校への奉仕として役立ててくれることを誓う建前として、この条件は君たちに吞んでもらわなくちゃいけないんだ」


 嵌められた。おちゃらけて能力を使って見せさせたのも、べらべらと秘密を喋ったのもこの条件を呑ませるのが目的か。


「つまり、身の潔白を証明するためにオカルト研究部に入れってことですよね?いいですよ、私は。兼部もできるなら別に断る理由もないし。というかそうしないとこの部屋から出す気ないんですよね?」


 朱莉は会長の提案に前向きなようだ。待ってくれよ。


「いや、だから、身の安全は?そこが一番の問題なんだろ。それとそのままにしておけばいいのにわざわざ調査させる理由も謎だ。この部屋から出られないって言ったっていつかは下校時刻になるんだから」


「身の安全て言うけど、相手が能力者なら私たちも能力者じゃん。条件はイーブンでしょ。危険はあるかもしれないけど、私たち自身が危険な存在であることも否定できない。だったら言うこと聞いてオカルト研究部に入って生徒会に与するほうがマシじゃない」


 朱莉の言うことは間違ってはいない。間違ってはいないが、あまりに軽率な判断すぎる。確かに俺たちも能力者だが、相手も能力者。こんな力を持つ者同士が戦うことになったときのリスクは無視できないほど大きい。


「秋原さんは理解が早くて助かるよ。まあ氷室君の言うことも一理あることは分かっている。君たちを使って他の能力者と対峙させるのは僕が自分の手を使ってないようで卑怯だし、身の危険が君たちに降りかかることも十分承知だ」


「でしょうね。そもそも把握してるなら会長自らが出向くなりこうやってここに呼び出すなりして懐柔すればいいんじゃないですか?今の俺たちみたいに」


 俺は会長の方を向いて強く言う。会長は意に介していない様子だ。さすがこの学校の会長になっただけはある。佐々木王元、強かな男だ。


「まあまあ、落ち着いてくれ。そうやって睨まないでくれ。君たちを危険視しているのは事実だし、いい気はしないだろうが僕は生徒会長だからね。全生徒の身の安全にも多少責任を負うところもあるわけだよ。だからこそ君たちを野放しにしておくわけにはいかないんだ。君も今や立派な能力者なんだから。さっきも言ったけどこれは君たちに自分の安全性を示してもらうための最低条件なんだ」


「それとね、僕にはオカルト研究部を復活させてやらなければならないことがある。それは生徒会長である僕が責任を負わなければならないことなんだよ。それがさっき言った“儀式”ってやつさ」


「「儀式?」」


「それ以上のことが知りたいんなら、まずはオカルト研究部に入部するのを認めることだ。この儀式については本当に学校の最大機密になるからね。僕しか知らない、とてつもない情報さ」


「じゃあ、私は入るから。教えてください」


「ちょっと待ってくれ、いいのか?本当に。絶対に危ないぞ」


「だから危ないのは私らも同じだって」


 どうしようか。朱莉は入部する気みたいだし。入部するしかないのか?儀式なんてもんの情報は知ってしまえばより平穏な学校生活が遠のきそうだからそこはどうでもいいのだが、朱莉と対立するのがまずい。


 もしも朱莉がオカルト研究部に入部して能力者と接触することになったらまず間違いなく俺もその接触対象になるだろう。そして万が一対峙するようなことがあったら身に危険が及ぶのは俺だ。氷対炎では勝敗はまさしく火を見るよりも明らかだ。勝ち目がない。火だるまにされる可能性だってある。


 まずい。どっちに転んでも身に危険が及ぶのが確定している。なんでこんなことになってしまったんだ。やはりあの婆の言うことを無視しておけば。いや、今恨み言を言っても仕方がない。どうするべきかを考えるんだ。


 能力者であることを自覚してオカルト研究部に入部して朱莉と共に他の能力者と接触を図る道か、能力者として朱莉と対峙する道か。


 いやそもそも俺は能力者として生きて行くつもりはないのだ。ここから解放しないと会長が言っているだけで俺は能力を使うつもりはない。ここで断り続けて会長を根負けさせて解放されれば………。

 

 ってまてよ?いい方法があるじゃないか。

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