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能力発動!

 放課後。


 俺が朱莉を待つため部室棟へ向かおうとした時だった。


 ピンポンパンポーン


「1-A、秋原朱莉、1-B氷室翔太、生徒会室へ来なさい、繰り返します、1-A、秋原朱莉、1-B氷室翔太、生徒会室へ来なさい」


 放送がかかった。朱莉と俺だけの呼び出し。確実に勾玉の件であることは間違いなかった。


「やっぱあの二人デキてんの?」


 周囲の戯言が耳に入る。そんな場合ではないのだ、俺たちはとんでもないことに巻き込まれようとしているのだから。


 とりあえず黙って教室を出て生徒会室へ向かう。これ以上余計な噂を立てられないためにも生徒会室で合流した方がいいだろう。


 生徒会室は別校舎になる。俺たち1年のクラスからすると最も遠い別校舎の3階最奥の部屋だ。1階の図書室、2階の3年の教室を抜け3階の生徒会室へ向かう。


 生徒会室の前は巨大な扉で閉ざされており物々しい雰囲気を感じる。こんなに威厳高く作る必要があったのかと疑問に思いながら俺は生徒会室の扉をノックする。


「失礼します、放送を聞いてきました、1年の氷室です」


「どうぞ」


 中から声が聞こえる。


「失礼します」


 やや重たい生徒会室の扉を押す。ギギギと蝶番から歪みが聞こえる。


「やあ、もう一人の秋原さんはどこかな?」


 巨大な生徒会室の中心にある机に座っている男。首元には生徒会長である証のバッヂが付いている。3-A組、生徒会長の佐々木王元(ささきおうげん)だ。この広い生徒会室に一人だけ、中央に堂々と陣取っているこの男。やや細い吊り目と堂々とした佇まいが会長たるオーラを放っている。


 パンフレットを見た時から思っていたが相変わらずすごい名前だ。生徒会長になるために生れてきたような名前、王元って。


「分かりません、一人できました」


「そうかい、まあ座りなよ。来るまで待って居よう」


 会長は巨大な椅子から立ち上がり部屋の右側にあるソファへ移った。そして俺を手招きする。


「失礼します」


 言われるがままソファに腰掛ける。フカフカだ。金かかってんな。


 それにしてもなぜ会長ひとりなのだろう?パンフレットには初期や秘書含め大勢の生徒会委員がいたはずだが………。


 なんて思っていると、


 コンコン


 ノック音がする。


「1年の秋原朱莉です。放送を聞いてきたんですけど、入ってもよろしいでしょうか」


「どうぞ」


 俺の時と同じように会長が答える。


 ギギギ


 再び歪みを立てながら生徒会室の扉が開く。朱莉が入ってきた。


「まあこちらへ」


「はい、失礼します」


 先ほどと同様に会長の呼びかけに応じ朱莉がソファの隣に座ってくる。すこしだけ甘いシャンプーの香りがする。


「わっ、フカフカだ」


 声に出すなよ。


「だろう?無駄にお金がかかっているんだ、この生徒会室は」


 鼻高々に会長が答える。


「まあいいや。早速本題に移ろうか。ここに呼び出された理由はわかるね?」


「この指輪のことでしょうか?」


「その通り。二人がしているその指輪、まあ指輪はおまけで本体は上の勾玉の方なんだけどね。その勾玉のことで話があって、君たちを呼び出させてもらったんだ」


 会長は指輪をしていない、が指輪、というか勾玉について何か知っているのだろうか?わざわざ呼び出したからには何か理由があるんだろうし。俺たちは会長の次の言葉を待つ。


「そんなに緊張しなくてもいいんだよ?頼み事があるのはこっちの方でね。下手に出なければいけないのは本来私の方なんだ」


 頼み事?勾玉の件ではないのか?


「勾玉のことじゃないんですか?俺たちはいまこの指輪を外す方法を探して困ってるんですが………」


「え?外れるよ?それ」


「「え?」」


「いや外れませんでしたけど………」


「どんなに頑張っても外れなかったから困ってるんですが」


 俺と朱莉がそれぞれいう。


「成程………?君たちその勾玉についてどのくらい知っているのかな?」


「いや勾玉のことについては何も………。何やら秘められた力があるとかなんとか。実際に発光したり朱莉の場合は炎、俺の場合は氷がでたということは分かっているんですが………」


「あー、それで外し方が分からない………と。まだまだ君たちはその勾玉について全然知らないみたいだね。僕の口から出良ければ説明しようか」


「会長さんは勾玉のことについて何か知ってるんですか?見た感じ指輪はされてないようですけど」


 朱莉が聞く。


「知っているよ。というか歴代の生徒会長はみんな知っている。それはこの学校の重大な秘密だからね。ここから先の話は他言無用で頼めるかい?」


「「もちろんです」」


 俺たちは声を揃えて言った。


「じゃあ話そうか。まずね、その勾玉はこの学校に代々伝わるものなんだ。ずっとあの売店に置いてある。どうやらその勾玉は意思を持っていて主人を見定めるとその主人の手元に渡るんだそうだ。その勾玉と主人を繋ぐのがあの売店の婆さんってわけさ。だから解雇できないんだよ」


「それでね、勾玉は主人の元に渡ると特別な力を発揮するようになる。それが君たちの言っていた炎の力とか氷の力とかだね。ファンタジーみたいだけど現実にその勾玉に力を込めると勾玉の所有者は勾玉に応じた能力が使えるんだってさ。良かったら試してみなよ」


「いや、いいんですか………?ここでそんなことしちゃまずいですよね?何か凍ったりまあ凍ればとかせばいいと思いますが、朱莉の能力で火事にでもなったら………」


「ちょっと、私だけ駄目ってこと?翔太の能力も大概ダメでしょ」


「それがね、この部屋だけはいいんだよ。この部屋がわざわざ学校の最奥にある意味が分かるかい?やたら頑丈に作られている意味も。僕は勾玉の能力が使えるわけじゃないから感覚は分からないけどこの部屋はどうやらその能力とかに耐性があるようにできているらしいんだ。能力を使っても焼けないし、凍らない………らしいよ?」


「らしいよって………」


「まあまあ物は試しだよ、実際に僕はこの部屋で能力を使われることを見たことはないけど、まあ信用に足る情報源があるから大丈夫だって」


 案外ノリが軽いな、この人。朱莉との方が話が合うかもしれない。


「え………じゃあ試しますよ?」


 朱莉が言う。


「ちょ、ほんとに?大丈夫なのか?」


「会長が言ってるんなら大丈夫なんじゃないの?」


「そうそう、大丈夫だよ。僕も見てみたいし」


「じゃあ………、いきますね?」


「うん、頑張ってー」


 朱莉が目を閉じる。左手で右手を持って指先をピンと伸ばす。指先に力を込めているようだ。するとその瞬間勾玉は赤く輝きだす。


「うわっ」


「へえー、こんな感じに光るんだね」


 会長は能天気に見ている。ほんとに大丈夫だろうか?


「えいやっ」


 朱莉が目を開いて声を上げるとボッと赤い炎が勾玉の周囲に広がる。


「ほんとに出た!!」


「ちょっと、これ本当に大丈夫なんですか!?」


「燃え移るような規模じゃないし、大丈夫でしょ。朱莉ちゃんもっと力込めてみて」


「はい」


 フーッと大きく息を吐く朱莉。


「うりゃー!!」


 叫んだ途端強烈な光と共に炎の柱が勾玉から発せられる。


「熱っ!!」


 思わず仰け反ってしまうような強力な炎。俺の髪の毛は少し焦げた。こんなことができるのか………。


「すごいね、でも机もソファも燃えてない。ほら、言ったとおりでしょ?」


 会長は自慢に微笑む。確かに生徒会室はまるで何事もなかったかのようだ。ソファも机もそして炎の柱が直撃したであろう天井にも焦げたような跡は一切なかった。


「さ、次は氷室君の番だよ、やってごらん。ここが大丈夫な事は今ので伝わったでしょ?」


「ええ………、まあ。でも俺もやるんですか?」


「そりゃそうだよ、暫くはその勾玉と付き合っていかなきゃならないんだから」


「さっき外れるって言ってませんでした?」


「外れるはずだけど、完全にその勾玉と縁を切ってもらうには困る事情がこっちにもあるんだよ。さっき言ってた頼み事ってのはそれのこと。まあでもその前に一回くらい体験しといたほうがいいよ。暴走する可能性なんてのもあるらしいしね」


 暴走する可能性なんてのもあるのか………。それは考えたことなかったな。確かにまたあんなことになっても困るし制御できるなら制御するやり方を学んでおくべきか?


「結構すごいよこれ、やってみなよ、めっちゃ疲れるけど」


 朱莉も言う。


「はあ、じゃあまあ………、一回だけ」


 俺も朱莉がしていたように目を閉じて指先に力を込める。目を開くと勾玉は落とし物ボックスに届けに行ったあの時のように強烈に発光している。


「そのまま一気に力を込める感じ!」


 朱莉に言われるがまま俺はさらに力を込める。すると勾玉から氷の欠片のようなものが生成され始める。それは時間をかけてくっついていき段々と巨大化していく。


「おおー、こりゃすごいね」


「ううー、寒っ」


 集中している限り氷はどんどん巨大化していく。巨大化した氷はまるで花のような形になった。


「ハァッ………、もう無理」


 集中が途切れた瞬間氷はピキッという音共にヒビが入りその後すぐにばらばらに砕け散った。こんな力が使えるようになるのか。いよいよ現実離れしてきたこの勾玉について俺は畏怖の念を覚える。


 暫く朱莉と俺の二人とも息をあげてソファに深く体を預けた。


「二人ともお疲れー、でもこれで能力の使い方と使い道は分かったでしょ?それとここが安全なのも」


 会長は言う。


「まあ能力が本当だってのは分かりましたけど………、こんな危ない能力が跋扈してていいんですか?」


「いいこと聞いてくれたね、まさしくそこなんだよ僕が危惧してるのは。この生徒会室は能力を使うには安全だけど、他の場所はそうじゃない。学校のいたるところでそんな能力使われたらたまったもんじゃないし、他の生徒にも危険が及ぶ」


「だからこそその勾玉の力を管理する必要があるんだ。そのためにこの学校の生徒会長はその能力について詳しく知って、新しく能力者が見つかったらきちんと目の届く範囲に置いておく必要があるんだよ」


「そこで僕からの頼み事なんだけどね。君たちにはオカルト研究部に入部して欲しいんだ」


「「オカルト研究部?」」

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