勾玉が突然能力開放して俺は能力者になったらしい
「ただいま」
「お帰りなさい、入学式、カッコよかったよ」
「ありがとう」
母の言葉に相槌を打ちつつ、部屋へと戻る。バッグを開き学校で渡されたプリント類とパンフレットを取り出して机の上に並べる。そしてあの勾玉付きの指輪も。
「嫌な物貰っちまったなぁ………。」
やはり妙な婆から物なんか貰うんじゃなかったと今更になって後悔する。強情な婆とさっさと話を終えたいという気持ちから受け取って帰ってきてしまったが失敗だったかもしれない。
「秘めた力を発揮する勾玉ねぇ………。」
俺は勾玉を持ったままベッドに仰向けに倒れこむ。電灯の光を勾玉に充てると勾玉は強烈に光を反射し、水色に輝きだす。綺麗ではあるが、こんなものをもらってどうしろというのだろう?正直に言って俺はアクセサリーなどに興味はない。私生活で身につけることもないだろう。
「どうしたもんかな………。明日学生課にでも持って行ってみるか………。」
呟いた後に俺は眠ってしまった。はやり入学初日ということもあり精神的に疲れていた部分もあったのだろう。
「ご飯よ………、って寝てるの?」
母の声で目が覚める。どうやら何度か夕飯に俺を呼んだが起きてこないので直接部屋に来たらしかった。
「ああ………ごめん、今行く」
「何その指輪?綺麗ね」
「ああ、コレ?なんか売店で………」
「売店?」
寝ぼけた頭でつい全部正直に話しそうになったが、ギリギリで口を噤む。こんなこと話していいものか?スピリチュアルな婆さんに100万円の勾玉をタダでもらったなんて。間違いなく騙されていると思われるだろう。入学初日から母親に学校のことを不安視させたくない。明日学生課に持っていくまでのことなのだから、黙っておいていいだろう。
「売店の前で拾ったんだ、明日、学校に落とし物として届けに行くよ」
「そうなの?女の子の物かしらね、そうしてあげなさい。あと夕飯出来てるわよ」
これでいいだろう。明日学校に持って行って届ければそれでこの件は終わりだ。そして今後一切あの婆のやっている売店の近くには行かないためにも弁当を忘れないようにしなければ。
「部活は決めたの?」
食卓で母親が聞いてくる。
「入る気ないから」
「そうなのか?文化部でも何でもやってみると案外いいもんだぞ?内申点にも影響があるだろう。」
父親が言う。
「いや、いいから、面倒だし。」
「まあ最終的にはお前の好きにするといいが」
「そう」
素っ気ない会話を交わし、食事を終える。
「ごちそうさま、風呂入ってくる」
夕飯を食べ、風呂に入り、部屋に戻る。明日の準備として教科書類と参考書類をチェックしてバッグに入れる。一つ残された机の上に置いた勾玉がこっちを見ているように感じられた。勾玉をバッグに入れる。明日でこんなことはきっぱり終わらせて勉強しよう。そう心に決めてベッドに入る。
電気を消すと薄っすらとバッグの中から水色の光が漏れ出しているような気がしたが、気のせいだろう………、というかもはや気にしないことにした。
次の日。
「いってきます。」
「行ってらっしゃい、忘れ物無い?」
「大丈夫」
学校へ向かう。
「ねえ、部活どうしよー」「隣のクラスにめっちゃカワイイ子いるらしいぜ?」「バイト始めよっかなー」
通学路は相変わらず喧噪であふれていた。
下駄箱へ着く。靴を履き替えまずは教室へ向かう。教室の真ん中付近の自分の席についてバッグから必要なものを取り出す。
カラン
教科書類と一緒に勾玉が転がり落ちた。急いで勾玉を拾う。こんなもの持っていることが周囲にバレたら必ず面倒なことになる。やはりさっさと学生課へ持って行こうと手に握りしめ席を立つ。
万が一のことを考え売店の前を避けて学生課を目指す。学生課の前にある落とし物ボックスに入れておけばいいだろう。売店を避けるとなると学校を一周しなければならない。クソっ、なんで学校の中心にあるんだよあの売店。
やっと学生課の前に着いた。朝のホームルームまでにはまだ時間がある。良かった。そう思って落とし物ボックスの前に立った時だった。
「冷たっ」
カラン
右手に異常にに冷ややかな感触と痛みを感じて手を放す。右手からは握っていた勾玉に加え歪な形の氷が落ちた。
「氷?」
氷なんて当然握りしめていない。さっきまで冷たくもなんともなかった。なのにどうして?疑問と不安を感じながらとにかく勾玉を拾いあげようと手を差し出した瞬間、
「うわっ」
今度は勾玉が水色に発光し始める。なんだこれ、どうなってる。その勾玉から発せられた光はどんどん強烈になっていく。まずい、こんなとこ見られたら何か変なもの持ち込んでると勘違いされかねない。
「ちょっ………これ………どうやったら止まるんだよ!」
手で隠すようにして勾玉を包み込むが勾玉の発光は止まらず手から光が漏れ出ている。そして手の中が異常に冷たい。間違いなく勾玉がまた氷か何かを作り出そうとしている。
「クソっ………、ってかなにこれマジでっ………、意味分かんねえ!あーもう!」
咄嗟に俺は勾玉を左手で掴んだ。そして右手の人差し指を指輪の部分に通す。何故そうしたかは俺も分からない、本当に追い込まれた時人間は謎の判断をしてしまうらしい。だが、結果的にこれは正解だった。指輪に指を通した瞬間勾玉の発光は止まり冷気も止まった。
「ハア………、ハア………、何なんだよこれマジで………」
勾玉は何事もなかったかのように俺の人差し指の上で輝いている。辺りには静寂と氷が解けた水たまりだけが残った。
キーンコーンカーンコーン
「あれ?もうホームルームですよ?」
学生課から出てきた男性教師が言う。腕時計を確認すると時刻は既に午前8時半を過ぎていた。
「あ………、すいません、すぐ戻ります………」
今度は再び教室へと向かう。売店を避けるために学校中を走り回ることになった。
「遅れてすいません………」
肩で息をしながら教室へ入ると
「まあまだ2日目ですから許しましょう、気を付けてくださいね、それと………その指輪は何ですか?」
怪訝な目で教師が俺の人差し指を見つめる。
「あ………いやすいません、すぐに外します」
とりあえず席について指輪を外そうとする。が、なぜか指輪はびくともしない。何なんだマジで。周囲はヒソヒソと「指輪?」「売店のアレ?」「100万の?」などと言っている。最悪だ、悪目立ちした。しかも指輪外れないし。これまさかずっとこのままなのか………?
「以上でホームルームを終わります」
ホームルーム中ずっと格闘してみたが一切指輪は外れる気配はなかった。本格的にまずい。なんでこんな完璧にフィットしてるんだ。あの婆が選ばれたって言ってたのってこういうことなのか?
「それってあの売店の指輪だよね?買ったの?」
前の奴が振り返って聞いてくる。
「違う、貰ったんだ、いや渡されたんだけど。」
「渡された?」
「いや、まあ………、あんまり詮索しないでくれ」
「ふーん………、まあそろそろ卒業しなよ」
どうやら俺は厨二病だと思われたらしく冷ややかな目で見られた。まあ友達は必要としていないので厨二病だと思われるのはこの際構わないが………。
「本日の授業を終わります、号令を」
「起立、礼」
「ありがとうございました。」
結局その後一日中指輪と格闘しても指輪が外れることはなかった。石鹸で滑らせて取るとか、力づくで引き抜くなどありとあらゆる方法を試したが指が痛くなっただけで成果は上がらなかった。
俺は意を決して売店へ向かうことにした。俺をこんなことを巻き込んだ諸悪の根源の婆に聞けば何かわかるかもしれない。最期の一縷の望みを託し俺は売店へ向かった。
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