儀式について
生徒会室
生徒会室に向かうと既に三上先輩はソファに腰掛けて俺たちを待っていた。凪目副会長はいない。能力者である俺たち3人と会長1人の構図だ。最初に呼び出された時を思い出す。恐らくわざわざ会長が人払いをしたのだろう。
「やあやあ、3人も能力者が揃うと壮観だねえ。身震いしちゃうよ。僕はあまり好かれていないみたいだしね。いつ殺されちゃうのかな」
相変わらず口だけだ。身震いどころか優雅なコーヒーブレイクでも楽しむかのように会長は足を組んで椅子に座っている。
「さて、結論は急がないと君たちには言ったけど3人揃えてみれば何か化学反応が起きるんじゃないかと思って呼び出させてもらった。オカルト研究部に入るのか入らないのか。このまま退学を人質に取られたまま過ごすのか。」
やはり本題はそれか。結論は急がないと言っていたけれどさすがにずっと悠長にしているわけではないか。
「あ、そうそうヒカルちゃんには言ってなかったけど断ったらバレー部を辞めてもらう。」
「はあ!?絶対嫌です!」
「だったらオカルト研究部に入ってくれ。能力者探しと能力者調査、そんで儀式のためにね」
えげつないな。退学は本当かどうか現実味が分からないが、バレー部を退部させるくらいなら本当に容易くこの生徒会長なら行ってしまえるだろう。ハッタリではなく、これは脅しだ。
「そもそもあたしは能力使いたくないから、そんで能力が上手く使えないからバレー部に入ったんですよ。そのままバレーだけさせておけば能力なんか使いませんから。」
「そうだろうね、この前は君たち能力者を危険視しているから一か所に纏めて制御したいなんて言ったけど、あれも半分は建前で本当は儀式が目的なんだよ。儀式をするためには能力者が複数人必要って言っただろう。そのために君たちにはオカルト研究部に入ってほしいんだよ。」
「つまりは、儀式という会長の悲願のために俺たちを利用しようってわけですね」
「言い方は悪いけど、そうだ。でもこれが君たち能力者も含めた学校の恒久的な平和につながることだということは理解してくれたまえ」
「だったら儀式の詳細を教えてください。それがフェアな取引でしょう」
「フェアな取引なんてするつもりはないよ。君たちは退学を僕に握られているんだから実質的には首を縦に振るしかないということをお忘れかな」
「結論は急がないんじゃないんですか」
「まあ、そうなんだけどね。もうすぐ生徒会役員選挙が始まる。それまでには外部組織としてのオカルト研究部と連携を取っておきたいんだよ。いつまでも同じ話を繰り返したり、いつまでも体験入部なんかで時間をかけていられなくなったんだ。」
「気が変わったってことですか」
「まあ、そうだね。それに君たちに協力してもらいたい事案が起きているんだ。本当はそっちが急務かな。」
「事案って?」
「だから首を縦に振ってくれよ。そろそろ僕だって原割って話をしたいんだ。いつまでも秘密をうっかり喋らないように考えながら喋るのも苦労するんだよ」
会長は芝居がかった調子で大袈裟に困り眉をする。
「分かりました、私はオカルト研究部に入るからそれらの事案について教えてください」
「朱莉ちゃん、どうもありがとう!でもね残りの二人がねー。首を縦に振ってくれないと事案とか儀式とか喋れないんだよ」
「ヒカルちゃんはどうだい?別にデメリットはないだろう?オカルト研究部に入ることによって。バレー部も辞めてもらう必要はないし、なんならバレー部の活動費を増額してあげることもできる。これはあくまでも僕からのお願いだからね。聞いてくれるならできることは協力するよ。」
「……」
「君はあれだろ?僕のことがシンプルに嫌いなんだろう?そいつの手中に収まるのが嫌なんだろう?それとも何かほかに理由があるのかな?」
「オカルト研究部に入るってことは他の能力者とかと関わるってことですよね。それって危ないんじゃないですか?」
「氷室君もそれを心配していたけど、実際君たちは出会っても争いにはならなかったじゃないか。そりゃあ絶対安全かどうかは僕には約束できないけど君たちに絶対安全に過ごしてもらうために儀式を行いたいって僕は言っているんだよ?だったら協力してさっさと儀式を行って絶対安全な学校生活に戻って君の場合はバレーに打ち込むのが一番賢い選択なんじゃないのかな?」
「儀式を行えば、私たち能力者も含めて安全な学校になるんですね?」
「約束しよう。嘘は吐かないよ」
「断れば?」
「バレー部は退部だ、いや、なんならバレー部ごと廃部にしてやってもいい」
「チッ」
「冗談だよ。こういうところが君は嫌いなんだろうね。」
三上先輩と会長の相性はすこぶる悪そうだ。正直に物事を話さない会長のブラフに踊らされるのが腹立たしいんだろう。気持ちはよくわかる。
「あまりに下衆ですね。どうしたんですか?焦っているように見えますが」
「氷室君、正解だよ。さっき言った君たちに協力してもらいたい事案と生徒会役員選挙。どっちも僕にとって急務でね。焦っていないと言えば嘘になる。分かったらさっさと君もイエスと言ってくれないか?」
「俺はもう決めてきましたよ」
「ほう、意外だね。あんなに渋っていたのに。で、君の結論はどっちだ?」
「儀式について話してください。それを聞いてからならイエスと言いましょう。」
「断る、儀式についてはこの学校の最重要機密だ。」
「儀式が会長の悲願なんでしょう?そして儀式には複数人の能力者が必要と言っていますが恐らく全員必要なんじゃないですか。あの売店にあった勾玉の所有者全員が。つまり7人の勾玉の所有者が必要なんじゃないですか?でなければ僕らにこうして退学で脅したり、そもそも他の能力者について調査させる理由が不可解です。」
会長はこちらを見ながら黙っている。畳みかけるか。
「ずっと引っかかっていたんです。何故静観を決め込まないのか。これまで能力による事件らしい事件は発生していない。だったらこれ以上能力者に接触して刺激する方が危険と考えるのが普通、それなのに会長は儀式のために能力者が必要だと言って接触しようとしている。能力者が複数人必要なら俺や朱莉にこだわる必要が無い。生徒会側で調べがついている能力者に当たって退学でもちらつかせて協力させればいい。それでも俺たちに拘るのは俺たちが必要だから。でも俺の能力が特別だとは考えられない。ということは能力者全員の協力が必要。違いますか?」
「……。」
会長は口を噤んで下を向いている。
「それは図星ということでいいんですか?」
「……そうだ。儀式には能力者全員が必要だ。だから君も秋原さんも三上さんも欠けるわけにはいかない。だからこそ君たち全員にこうして無理にでも協力してもらおうとしている。当たりだよ。もうここまでバレているなら仕方ないね。氷室君、君は儀式について聞けば答えを出してくれるんだろう?」
会長の雰囲気が変わる。一気に場の空気が重苦しくなる。それとどうやら会長は真剣に話す時は人を名字で呼ぶようになるらしい。
「ええ、そこは約束します。イエスかノーかはまだ何とも言えませんが」
会長はじっと俺の目を見つめてから、呟くように言った。
「分かった、儀式について教えよう。」
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