予想外
それから十日ほどして──注文していた宝飾品が出来上がったとの連絡を受けた。
しかも週末の前日という、なんともおあつらえ向きのタイミングで──。
僕一人で受け取りに行ければ一番良いのだが、今回は流石に支払い金額が大きすぎて、“ツケ”で支払うことはできない。
もっと少額であれば、『ノスタリス家の令嬢の婚約者』という立場を使い、いくらでもツケ払いが許されるというのに……。
とはいえ、最近は学園に必要なものだとか、ジェニーが髪に着けるリボンだとか、そういったものを頻繁に買いすぎている気がするから、そろそろ自重したほうがいいかもしれない。
学園入学後も必要なものは都度出てくるだろうし、その時のためにも、今ミディアにツケ払いの件をバレるわけにはいかないからな。
週末だとミディアに見つかる可能性があるからと、平日にジェニーと街をまわって買い物してるなんて知られたら面倒だ。
取り敢えず今回は宝飾品の代金を払ってもらって、その後はしばらく大人しくしておこう。
そう思い、次の日僕は学園入学前の最後の付き合いに出かけたのだが──。
「この金額は、お支払いできません!」
注文していた宝飾品を受け取り、機嫌よく帰ろうとした僕の背後で、なんとミディアが信じられない一言を発したのだ!
「ミディアお前、どういうことだよ……」
狼狽える僕を一瞥もせず、ミディアは言いたいことだけを言って店を出ていってしまう。
まさか彼女が出来上がった宝飾品を一目見て、ジェニーが着けるものだと見抜くとは思わなかった。
あわよくばミディアのものだと誤解させて、後日渡すということで支払いだけ済ませてもらおうと思っていたのに、完全に当てが外れた。
「ど、どうしましょう……」
「こちら前払金もいただいておりませんし、このままというわけには……」
店員達が答えを求めて、縋るような目で僕のことを見つめてくる。
そんな目で僕を見るな! 困っているのは僕だって同じだ!
と怒鳴りつけてやりたいが、僕は次期侯爵だ。こんなところで無様に騒ぎ立てるわけにはいかない。
しかも、金がなくて宝飾品の支払いができないせいで──なんて知られた日には、外を歩けなくなってしまう。
悩みに悩んだ末、僕は「二、三日待ってくれ。必ず金は払うから」と言って足早に店を出た。
そして、そのまますぐに馬車へと乗り込み、真っ直ぐにノスタリス子爵家へと向かう。
全速力で馬車を走らせながら、僕は車内でギリギリと歯を噛み締めながらずっと「ミディア……ミディア……」と呪いのように彼女の名前を呟いていた。




