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お財布令嬢〜愛の切れ目がお金の切れ目〜貴方にはもう貢ぎません!  作者: 迦陵れん


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ザガロの作戦

 どうして、なんでこんなことになっているんだ?

 

 婚約者であるノスタリス子爵家の応接室で、僕はまるで蛇に睨まれた蛙のように、怯えて肩をすくませていた。


 蛇というのは無論──ミディアの父であるノスタリス子爵のことだ。


 彼は子爵という立場であるにも関わらず、多くの貴族達から畏敬の念を抱かれている。


 そんな人物とこうして対峙する羽目になったのは──我が家に届いた一通の手紙のせいだった。




※※※※




 待ちに待った貴族学園での入学式を滞りなく終えた僕は、上機嫌でジェニーと共に我が家へと帰宅した。


 出迎えた使用人に鞄を渡し、ガゼボに茶の用意をするように言い付ける。


 登園時はジェニーとお揃いのアクセサリーを見せびらかしたことで僕達のただならぬ関係を周囲にアピールすることができたが、残念ながら僕とジェニーは別クラスになり、もっと最悪なことに彼女はミディアと同じクラスになってしまった。


 ノスタリス子爵との約束を破り、僕達がお揃いのアクセサリーを着けて登園したことで、ジェニーがミディアにいじめられないといいのだが──。


 帰りの馬車内でそのことを聞こうと思っていたのに、学園から屋敷まではあっという間で、ろくな会話もすることができなかった。


 大体、我が家から学園までの距離が近すぎるのが問題なんだ。ミディアの邸からなら、もう少しゆっくり話すだけの時間があるのに。


 行き帰りの馬車内に使用人は乗車せず、ジェニーと僕は完全に二人っきりだ。


 しかし我が家から学園までは馬車でおよそ五分ほどの距離しかないため、せっかくのその状況を十分に堪能することができない。


 もっと多くの時間があれば、あんなことやこんなこともできるのに……。


 家ではいつでも使用人達の目があるため、表立ってジェニーを口説くことなどできるはずもなく、僕は意識して“いい義兄”を演じている。だが本音としては、ジェニーこそを次期侯爵である僕の妻にしたいと密かに思っていたのだ。


 お金しか取り柄のないミディアなんかより、見た目も性格も美しいジェニーこそ、僕の妻に相応しい……。


 そうは思うものの、今のままでは“義兄”と“義妹”の関係から抜け出すのは不可能に近く、


 それで思いついたのが、お揃いのアクセサリーを使って強制的に自分とジェニーを婚約者だと学園のみんなに思い込ませる作戦だった。


 そのためにまずはジェニーを有名な宝飾店へと連れて行き、彼女が思う通りの品を製作するよう注文し、「支払いはノスタリス子爵家の令嬢がする」と宣言して、前払金の要求を突っぱねた。


 普通の貴族であれば、家名を出すだけで前払金を免除するなど到底できることではないが、そこはさすがのノスタリス家と言うべきか。店員は最初こそ僕の言葉に戸惑いを見せたが、幸いにもオーナーが僕の顔を見知っていたため、全ての支払いを後日にするとのことで了承を得ることができた。


 まさにノスタリス家様様だ。


 でなければ、ほとんど小遣いらしい小遣いも貰えていない僕が、こんな高級な店で買い物なんてできるはずがないからな。


 ミディアが婚約者で、本当に良かった。













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