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お財布令嬢〜愛の切れ目がお金の切れ目〜貴方にはもう貢ぎません!  作者: 迦陵れん


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元平民

「そんなこと言われても……私はザガロ様に言われたからアクセサリーを着けただけですし、今日二人で一緒に登園したのも、同じ家に住んでいれば当然ですよね? なのになんで『恥を知れ』とか言われないといけないんですか? 全然意味が分からないんですけど……」


 どうやら一年ほど前に平民から貴族になったばかりのジェニーさんには、令嬢に言われた言葉の意味が理解できなかったらしい。


 その証拠に、冗談でもなんでもなく、本気で『意味が分からない』といった表情をしていた。


 本来、貴族としての教育は幼少の頃から始められ、その内容は多岐にわたるため、たった数年で一朝一夕に覚えられるはずもない。


 しかもジェニーさんは身体が弱く、伏せっていることが多いとザガロが言っていたから、最低限の教育でさえも受けられていない可能性があるのだ。そんな彼女に貴族の常識を説いたところで、理解しろと言う方が無理だろう。


 けれど令嬢はそんな詳しい事情を知らないため、さらに言葉を重ねようとする。


「貴女ね、こんなことは貴族の常識であって──」

「貴族の常識なんて、私には分からないもの。だって私はほんの一年前まで平民だったのよ? 小難しい貴族の常識なんて、そう簡単に覚えられるわけがないわ」


 そんな令嬢にジェニーさんは平民丸出しの言葉遣いでピシャリと言い返し、黙らせた。


 同時に、教室内もシン──と静まりかえる。


 おそらく儚げに見えるジェニーさんが、強気な態度で言い返したことに度肝を抜かれたのだろう。最初のうちは彼女をうっとりとした瞳で見つめていた令息達が、呆然とした顔でジェニーさんを見つめていた。


「私は所詮お母様の“連れ子”なの。だから侯爵様やザガロ様の言うことには逆らえないし、反論だってできない。だから私に文句があるなら全てザガロ様に言ってくれる? 私はただ彼らの言いなりになってるだけの“お人形”でしかないんだから」


 そして彼女は私を一瞥すると、


「言ったところで素直に聞いてくれるかどうかは知らないけどね」


 と微笑いながら言った。


 多分だけれど、彼女はザガロとお揃いのアクセサリーのことについて言っているのだろう。


 どんなに私が口うるさく言ってもお願いを聞いてくれず、堂々とジェニーさんと二人で登園して来たザガロ。


 二人が耳に着けてきた高額な宝飾品は、陽の光を反射してキラキラと眩しく輝き、それがより一層周囲の人達の目を集めていた。


 彼ら──というより、ザガロは一体、何がしたいんだろう?


 私とお揃いで作ったブローチが出来上がるまで、ジェニーさんとの宝飾品は身に着けないよう、父に釘を刺されたはずなのに。


 どうしてそれを破るようなことをしたのか。


 もしかして、父のことを甘く見ている……?


 だとしたら、大変なことになるかもしれない。


 普段は温厚な父だけれども、一度(ひとたび)お金が絡むと、鬼や悪魔も逃げ出すんじゃないか──というほどに恐ろしくなる人だから。


 そんな人に高額な宝飾品の代金を払わせるだけ払わせておいて、交換条件として提示された約束事を破るだなんて……何が起きるかわかったものではない。


「どうなっても責任は取れないわよ……」


 小さな声で呟くと、それが聞こえたのか、ジェニーさんはこちらを向いて微笑んだ。

 

  

 






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