事実確認
父に呼び出され、執務室にやってきた。
「失礼します」
何を言われるのだろうと内心ビクビクしながら入室した私は、怖くて顔を上げることができずにいる。
先ほどのザガロの様子からして、宝飾品店での出来事が、彼から父へと伝えられたことは確かだ。ただ問題は、彼がどう伝えたかということ。
ザガロは妙に口が上手いし、父からの信頼もある。
それに比べて私は実の娘であるし、信頼されていないなどと思ったことはないけれど、利害関係といった面を考えると、こちらの方が圧倒的に立場は弱い。
なにしろ相手は、親子の情よりお金が大事というお父様だ。もしザガロが自分にとって都合の良いように話をでっち上げていたとしても、それを信じる方が利になると判断したなら、迷わずそちらを信じるだろう。
「……ミディア」
静かな、けれどもハッキリとした声で、父がおもむろに私の名を呼ぶ。
「は、はい」
返事をすると同時に、私の心臓は口から飛び出そうになるほど跳ね上がり、大きな音で脈打ち始めた。
怖い……。
一体何を言われるのだろう?
自分としては、間違った対応をしてはいないと思うけれど。
緊張に身体を強ばらせつつ、父からの言葉を待つ。
あの口から出る次の言葉は、叱責か、それとも──。
「今日、お前はザガロ君に頼まれた宝飾品の支払いを断ったそうだな? それは何故だ?」
まずは事実確認からするようだ。
取りあえず、叱責から始まらなかったことに内心で安堵する。
これなら自分にも挽回の余地はあるかもしれないと、私は宝飾品店での出来事を、分かりやすく事細かに説明した。
デートの待ち合わせに現れたザガロが、何も言わずにいきなり私の腕をつかんで宝飾品店に連れて行ったことや、そこで見せられた品物のこと。それは明らかに自分用の物ではなく、ザガロとジェニーさんがペアで着ける目的を持って作製された物であり、とんでもなく高い金額を請求されたこと──などなど。
「ふむ……」
一通り話を聞き終わった父が、考え込むように腕を組む。
それを見て、畳みかけるなら今だと思い、そこで私は更に言葉を重ねた。
「これまでのデートで、私はずっとザガロのために全ての費用を負担して来ました。彼の義妹であるジェニーさんに対してもそうです。デートのたびに彼女へのお土産を買い、家に届け、彼女の体調を気遣い、たとえザガロが彼女の看病のためにデートを何度もすっぽかそうと、黙ってそれに耐えてきたのです。なのに……」
「なのに学園でも婚約者よりも義妹を優先して、揃いのアクセサリーを身に着けようとしている……と? だからお前は支払いを拒否して帰って来たと言うのか?」
「は、はい。そうです……」
父は私の言いたいことを的確に理解してくれたようだったけれど、その割に表情が険しいのはどうしてだろう?
今の話のどこかに、父が引っ掛かりを覚えるような何かがあったということだろうか。
でも、どこに……?
考えていると、次の瞬間──父は私が予想もしていなかった衝撃的な一言を口にした。




