揃いの宝飾品2
私の顔に、何かついてるのかしら?
恭しく挨拶をした後、驚愕したように大きく目を見開き、瞬きを繰り返す店員を、怪訝に見返す。
私がザガロの婚約者なのが、そんなにもおかしかった? それとも、顔に何か変な物でもついていたりするのかしら?
ペタペタと自分の顔に触れ、おかしな所はないはずだけど──と、今度は隣に立つザガロへと視線を向ける。
「ねえザガロ、私の顔……何かついてる?」
そう尋ねると、目を見開いていた店員はハッとなって、慌てて私に頭を下げてきた。
「も、申し訳ございません! つい驚いてしまい……す、すぐに品物をお持ち致します!」
一体何に驚いたのか分からないけれど、店員は慌てたように早足で奥へと向かい、姿を消してしまう。
その隙にザガロは勧められてもいないのにソファへ座ったかと思ったら、私にも隣へ座るよう促してきた。
「でも、勝手に座るのは……」
幾らなんでも失礼じゃないかと躊躇っていると、「向こうは平民、こちらは貴族だぞ。何を躊躇う必要がある」と偉そうに言われ、強い力で腕を引かれて、無理やり隣に座らされてしまった。
「この店の支払いは、君にしてもらう必要があるんだ。そのためには複数の書類にサインしなければならない。立ったままではサインなどできないだろう?」
「それは、そうだけど……」
だからと言って、勝手に座るのは違うのでは?
と思うも、せっかく会えたのに喧嘩をしたくないというのと、お揃いの宝飾品をこっそり注文してくれていたという喜びにより、私はそれ以上の口ごたえをやめる。
ここでザガロの機嫌を損ねたら、宝飾品をプレゼントしてもらえなくなってしまうかもしれないし、学園入学前に喧嘩などしたくない。それに今はそんなことより、ザガロがどんな物を買ったのかが気になったから。
「お待たせいたしました」
戻ってきた店員が向かい側へと腰を下ろし、手に持っていたトレイをそっと机の上に置く。
「ご注文の品はこちらになります。どうぞお確かめください」
「うむ」
店員の前だからか、普段より偉そうに返事をし、宝飾品の乗ったトレイをそっと持ち上げるザガロ。
それを横から覗き込んだ私は、そこに並べられた宝飾品を見た瞬間、口から思わず感嘆の声を漏らした。
「わぁ……すごい! どれも素敵ね……」
精巧な細工のエメラルドのネックレスに、ブレスレット。お揃いのイヤリングはエメラルドの上に、ちょこんと可愛らしく小さなダイヤまでついている。
我が家に来る商会の人達はこんなデザインの宝石なんて一つも持ってきたことがないから、見たことのない可愛さに、うっとりとしたため息が出てしまう。
こんなにも可愛い三点セットを学園につけていったら、きっとみんなに羨ましがられるわね──「あなたの婚約者って、センスがいいのね」なんて。
学園で他家の令嬢達に囲まれた時の様子を思い浮かべ、つい頬が緩んだ。
そんな時──。
「それから、こちらも」
次に店員が置いたトレイに乗せられた宝飾品は、見るからに男性用のもので──先に見せられた品と対になるように作られたのだと、一目見て分かるそれ。けれど、その宝飾品に使われている宝石を見た刹那、私の脳は思考を止めた。




