連行された先
「──ア、ミディア!」
「あ、は、はい!」
考え事をしていたら、いつの間にかザガロに呼ばれていたらしい。
気づけば不機嫌そうな顔をした彼が、目の前に立っていた。
「ザガロ……来てくれたんだ」
今日は貴族学園入学前の最後の週末となるため、できれば顔を見ておきたいと思っていたけれど──願い通り姿を現してくれたザガロに、ホッと安堵の息が漏れる。
入学準備の買い物は既に終わっているはずだし、もしかしたら彼も入学前に私と会っておきたいと思ってくれたのかもしれない。
だとしたら嬉しいな……と、キラキラした瞳──過去の自分比──でザガロを見つめていると、「行くぞ」という短い言葉と共に、いきなり彼に腕を掴まれ、いささか乱暴に引っ張られた。
「きゃっ……!ち、ちょっとザガロ……!」
何も言わずに──いや、「行くぞ」とは言ったけど──歩き出した彼に合わせてとっさに足を踏み出すことができず、転びそうになってしまう。けれど、ザガロはそんな私に構ってはくれなかった。
「グズグズするな」
短く言葉を吐いて、強い力で私の腕を引きながら、足早に街中を歩いて行く。
いつもだったら手を引くことなく一人でさっさと歩いてお店に向かってしまうのに、どうして今日は私の腕を引っ張るのだろう?
どこか、私を一緒に連れて行きたい場所でもあるのだろうか?
だとしても、もっと違うやり方があると思う。
手を繋ぐならまだしも、今みたいに腕を引っ張られて無理やり連れて行かれる様は連行されているとしか思えず、デートと言うより、まるで憲兵と犯罪者のようだ。私達は婚約者同士なのに、どうしてこんな歩き方しかできないのだろうと悲しくなってくる。
もしも相手がジェニーさんだったら、絶対こんな扱いはしないんだろう。
それが分かってしまうだけに、掴まれた腕が鈍く痛んだ。
「……着いたぞ」
落ち込み、歩く速度がゆっくりな私を引きずるようにして歩き続けたザガロがようやく足を止めた場所は……一目見ただけで高級だと分かる、煌びやかな宝飾店の前だった。
「入るぞ」
呟くように言い、彼は私の腕を引いたまま、躊躇うことなく店内へと入っていく。
さすが侯爵家の御令息。我が家ではこういったお店の人を家に呼んで取り引きしたことはあっても、直接店舗に訪れたことはない。けれど侯爵家ともなると、わざわざ自分達で足を運ぶこともあるのね……。
そんな風に感心しながら、中に入って見回した店内は──。
「……わっ、す、すご~い……」
どこもかしこもキラキラと輝いていて、目が潰れそうなほどに光り輝いていた。




